院長 加藤雄一郎
【所属学会】日本皮膚科学会 会員/日本美容皮膚科学会 会員/日本皮膚悪性腫瘍学会 会員/日本美容外科学会(JSAS)会員
【診療外実績】アラガン・ジャパン株式会社 ボトックスビスタ® 認定医
東京医科大学病院 皮膚科勤務を経て、大手美容外科の院長となる。
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- 1 1.医師に聞くシリーズ「イソトレチノインを用いた難治性ニキビの自由診療による治療」
- 2 2.難治性のニキビの治療について加藤雄一郎先生に聞いた
- 2.1 Q1.ニキビとは何か、また特徴を教えていただけますでしょうか?
- 2.2 Q2.ニキビの原因は何でしょうか?
- 2.3 Q3.ニキビ治療には保険診療が適応されるガイドラインがあると聞いていますが、ポイントを簡単に教えていただけますでしょうか。
- 2.4 Q4.保険診療では十分に改善しないケースもあるのでしょうか?
- 2.5 Q5.そんな場合、自由診療で行える治療にはどんなものがあるのでしょうか?
- 2.6 Q6.イソトレチノイン療法とはどんな治療法ですか?
- 2.7 Q7.どれくらいの期間でニキビは改善するのですか?
- 2.8 Q8.薬を飲み始めてからある程度日数が経過して、ニキビができにくくなってきたら、内服をやめても大丈夫でしょうか?
- 2.9 Q9.ほかの治療と組わせることはありますか?
- 2.10 Q10.副作用が気になりますが、いかがですか?
- 2.11 Q11.イソトレチノインを使えない場合はありますか?
- 2.12 Q12.このほか、治療中に注意する点はありますか?
- 3 3.まとめ
1.医師に聞くシリーズ「イソトレチノインを用いた難治性ニキビの自由診療による治療」
ナールス美容医療アカデミーでは、美容医療に携わる現役の医師に、肌老化や肌悩みを改善するためのさまざまな施術や医療機器についてお話を伺った内容を、動画や記事としてお届けしています。
今回は、東中野皮フ科クリニック院長の加藤雄一郎先生に、保険診療では改善しない難治性ニキビの自由診療による治療についてお話を伺いました。
9割以上の方に効果があるといわれる治療法ですが、その治療リスクや費用、副作用や注意点などについて教えていただきました。
皮膚科に通っていても、なかなか治らないニキビにお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
本記事については、動画でもお届けしていますので、ぜひ、そちらもご覧くださいね。
<加藤雄一郎先生出演の皮膚科で治らないニキビ!切り札はこれ!>
<加藤雄一郎先生からのメッセージ>
どんな方でも一度は、ニキビを経験したことがあるのではないでしょうか?二キビは医学的には、尋常性挫創(じんじょうせいざそう)という病気です。
症状がある場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
皮膚科では、それぞれの患者さんの症状に合わせて、内服薬や治療薬を処方できます。
今では、日本皮膚科学会による「尋常性痤瘡治療ガイドライン 2017」も策定されているので、エビデンスに基づく治療を保険診療の範囲で受けることが可能です。
ひどくならないうちに、早く治療を開始しましょう。
もし、慢性化した場合は、3ヶ月くらいは通院して、コメド治療を行う必要があります。
コメドとは、ニキビのはじまりである、毛穴がつまった状態です。
コメドを治すことをコメド治療と呼びますが、これを行うことでニキビの再発のリスクを小さくすることができます。先ほどのガイドラインでもコメド治療を続けることが強く推奨されています。
このように、ニキビは早めの治療を行うことが大切です。
しかし、ニキビの患者さんの中には、ガイドラインに則った治療を行ってもどうしても改善しない方が一定数います。
そんな場合は、美容皮膚科などで自由診療による治療を受けないと改善しない場合があります。
美容皮膚科で受ける自由診療には、ケミカルピーリングやイオン導入などがありますが、難治性のニキビにはイソトレチノインという内服薬で治療を行います。
今回は、そんな難治性のニキビに対するイソトレチノイン療法のポイントをご紹介します。
2.難治性のニキビの治療について加藤雄一郎先生に聞いた
Q1.ニキビとは何か、また特徴を教えていただけますでしょうか?
ニキビは、医学用語では「尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)」と呼びます。
主に思春期の男女に発症し、顔面、前胸部、上背部などに生じる毛包脂腺系の慢性炎症性疾患です。
また、尋常性痤瘡(ニキビ)は、わが国では約90%の人が経験するといわれていて、平均の発症年齢は13.3歳と思春期を中心に発症し、男女差はありません。
最近は、日本の痤瘡患者の薬剤耐性菌検出率が増加傾向にあるので、治らないケースも増えています。
<ニキビの発症メカニズム>
ニキビは、脂腺性毛包において男性ホルモン(アンドロゲン)の作用により脂腺からの皮脂の分泌が亢進し、さらに毛包漏斗部の角化亢進により、皮脂が毛包内に貯留する状態の面皰(コメド)から始まります。
面皰は、毛孔が閉鎖した閉鎖面皰(白色面皰)と、毛孔が開大した開放面皰(黒色面皰)に分けられます。
面皰の初期段階のもので、肉眼的には観察できないが病理組織学的な変化がみられる微小面皰は、痤瘡の皮疹の周囲に存在しています。
それが進むと、面皰内で嫌気性菌であるアクネ菌が増菌し、炎症誘発物質を産生することで紅色丘疹や膿疱(炎症性皮疹)を生じ、さらにきわめて重症例では嚢腫、硬結となります。
毛包組織が破壊され周囲の真皮組織に炎症が波及すると、組織の欠損や修復過程による過剰な結合組織の産生も加わり瘢痕、つまりニキビ痕を生じることがあります。
Q2.ニキビの原因は何でしょうか?
ニキビの原因は主に次の3つです。
- 皮脂の分泌の増加
思春期を迎えると、性ホルモンの分泌が思春期に活性化します。これは誰もが経験する成長の過程ですが、ストレスなどが原因で性ホルモンが過剰になることがあります。その結果、毛穴の奥にある皮脂腺から皮脂が過剰に分泌されてしまいします。
それがニキビの原因の1つ目です。
女性でも男性ホルモンが分泌されますが、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れると、皮脂が過剰に分泌されることがあります。 - 毛穴の詰まり
肌の乾燥や摩擦などの刺激で肌の代謝であるターンオーバーが乱れると、毛穴の出口にある皮脂が角質から剥がれずとどまってしまいます。
それが毛穴に詰まってしまうこともニキビの原因となります。 - アクネ菌の増殖
アクネ菌は、皮膚常在菌の1つで肌に大切なものです。
アクネ菌は、酸素がない環境だと増える性質をもつ「嫌気性菌」です。
毛穴が詰まると、アクネ菌がどんどん増えてしまいます。
アクネ菌は、「キャンプファクター」という菌体外毒素を産生しますが、それが引き金となって炎症を引き起こし、赤ニキビができます。
Q3.ニキビ治療には保険診療が適応されるガイドラインがあると聞いていますが、ポイントを簡単に教えていただけますでしょうか。
日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡治療ガイドライン」は、アダパレンがニキビ治療の塗り薬として承認された2008年に策定され、過酸化ベンゾイル(BPO)などの承認を受けて2016年、2017年に改訂されています。
ニキビ治療に効果がある医薬品の開発とガイドラインの制定が相まって、日本のニキビ治療は大きな躍進を遂げています。
2017年のガイドラインでは、ニキビ治療の基本は、ニキビ治療を「急性炎症期」と「維持期」の2つに分けています。
急性炎症期には抗菌薬、アダパレン、BPOとこれらの配合薬や併用療法によって早期の改善を図り、瘢痕(ニキビ跡)形成を避けることが大切です。
治療が功を奏して、炎症が軽くなった後は、薬剤耐性菌の出現を阻止するために、抗菌薬を中止します。
最近では、日本でも薬剤耐性のアクネ菌が増えているので、医師はガイドラインをベースに、抗菌薬を適正に用いたニキビ治療を行うことが求められます。特に、抗菌薬は、同じ系統の内服薬と外用薬を同時に使わないことも重要です。
維持期は、アダパレンやBPOを用いた維持療法に移行して炎症の再発を予防します。
<出典>
林伸和ほか,尋常性痤瘡治療ガイドライン2017.日皮会誌 127(6): 1261-1302, 2017
<参考記事>
Q4.保険診療では十分に改善しないケースもあるのでしょうか?
はい。基本的にはガイドラインに則り、しっかり治療を行うことで、多くの方の場合、ニキビが改善します。
しかし、残念ながら、一定数の方は保険診療だけでは改善しないことがあります。
実際に、そんな患者さんを経験することがあります。
どうしてもガイドラインに則った保険診療だけでは改善しない場合は、患者さんの希望を聞いた上で自由診療を行うことがあります。
Q5.そんな場合、自由診療で行える治療にはどんなものがあるのでしょうか?
自由診療で行うニキビ治療には、次のようなものがあります。
- ケミカルピーリング
- イオン導入
- ダーマペン
- ポテンツァ
- フォトフェイシャル(IPL)
また、難治性のニキビの場合は、ビタミンA(イソトレチノイン)を使います。
今回は、難治性のニキビについてのお話なので、イソトレチノイン療法にフォーカスしてお話を進めます。
<参考記事>
ケミカルピーリングの効果はいつから?ニキビ跡や毛穴にも効果ある?
イオン導入の効果まとめ!シミやたるみに効果が出るまでの期間はどのくらい?
ポテンツァとは?効果やダウンタイム期間、部位ごとの値段を解説
IPLの効果は何日後に表れる?治療にかかる期間や回数について解説
Q6.イソトレチノイン療法とはどんな治療法ですか?
イソトレチノインは、ビタミンA誘導体の1種です。
皮脂の分泌を抑える作用、アクネ菌に対する抗菌作用、抗炎症作用に優れているため、重症の炎症性ニキビに対して効果を発揮します。
ニキビ治療の先進国であるアメリカやカナダなどでは、治療に必要不可欠な基本薬として認知されています。
たとえば、グローバルアライアンス(Global Alliance)は、2001年以来定期的に会合しているニキビの研究と教育に関心を持つ皮膚科医の国際的なグループですが、このグローバルアライアンスが2003年に発表した「ざ瘡治療アルゴリズム」は、国際的なニキビ治療のガイドラインとして用いられています。
そして、このガイドラインは、重症のニキビの治療でイソトレチノインの内服は第一選択肢となっています。
その後、グローバルアライアンスは2018年に改訂されていますが、イソトレチノインの位置づけは変わらず、重症のニキビの治療の第一選択肢です。
一方、残念ながら、日本ではまだ厚生労働省の認可がおりてないため、自由診療となり保険が使えません。
なお、イソトレチノインの商品名はアキュテイン、ロアキュタンなど複数ありますが、いずれも同じイソトレチノインを主成分とする薬です。
<イソトレチノインに関する国際的なコンセンサス>
① イソトレチノイン内服は、非常に重度のニキビ(嚢腫性ニキビや集簇性ニキビ)の第一選択治療である ② イソトレチノインの内服は、通常0.5〜1.0mg/kgの用量が推奨される ③ イソトレチノインによる治療期間は4−6ヶ月間とする ④ ニキビの再燃や再発を防ぎ寛解状態を保つための累積投与量は120−150mg/kgである ⑤ イソトレチノイン療法は、ニキビが完全に消失するまで続ける必要がある |
Q7.どれくらいの期間でニキビは改善するのですか?
1日1回 食後に内服します。
それを1クール最長20週間(約5ヶ月)続けます。
もちろん、これは目安なので、軽症の方や副作用が強い場合は、期間を短くしたり、内服量を減らします。
また、難治性や重症の場合、治療期間を延長することがあります。
治療期間中には、内服前と服用中2ヶ月ごとに血液検査を実施します。
私の経験では、イソトレチノインの内服の治療で90%以上の方でニキビが改善します。
Q8.薬を飲み始めてからある程度日数が経過して、ニキビができにくくなってきたら、内服をやめても大丈夫でしょうか?
先ほども話しましたが、症状によって期間を減らすことはありますが、内服治療は20週間の継続治療です。
医師に相談せず、自己判断で内服を止めると、治療前の状態に戻ってしまうこともあります。
一旦、この治療を開始したら、治療の継続や中止は自己判断せず、必ず医師とご相談ください。
Q9.ほかの治療と組わせることはありますか?
通常、ほかのニキビ治療薬は内服しません。
一方、外用薬や保湿剤などと併用したり、ケミカルピーリングを併用する場合があります。
これも自己判断せずに、家庭でのスキンケアも含めて医師に相談しましょう。
Q10.副作用が気になりますが、いかがですか?
残念ながら、多くの場合、副作用が発生します。
イソトレチノインの重大な副作用としては、流産や胎児の奇形を引き起こすことです。
ほかには、唇の乾燥、ドライアイなど粘膜の乾燥や肌の乾燥が見られることがあります。多くの場合は、市販のリップクリームや点眼薬、保湿剤で対処できる程度です。
もちろん、副作用が強い場合は、休薬するなどの対処をします。
<そのほかの副作用>
- 鬱、精神病(幻覚、幻聴)、自傷行為、自殺企図などの重大な精神疾患
- 皮膚や粘膜の乾燥症状
- 鼻の粘膜が乾燥した場合に生じる軽度の鼻血
- 頭痛
- 発疹、軽度の痒み、落屑
- 眼瞼炎、結膜炎
- 筋肉痛や関節痛
- 肝機能低下
- 血液中のコレステロール値の上昇
- 脱毛(一時的なもので、内服終了後に回復します)
- めまい、吐き気
- うつ傾向
Q11.イソトレチノインを使えない場合はありますか?
うつ病などで治療中の方、肝臓疾患で治療中の方など、ビタミンA誘導体の適応ではないと医師が判断した場合は、処方できません。
次のような方も使えません。
- 15歳未満の方や成長期で身長が伸びている方
- イソトレチノイン製剤、トレチノイン製剤、ビタミンAでアレルギーを起こしたことのある方
- テトラサイクリン系の薬剤を内服されている方
- 中性脂肪、コレステロール値の高い方
- ビタミンA過剰症の方
- 大豆アレルギーの方(アクネトレントには、大豆油が含まれているため)
また、イソトレチノインはニキビ跡には効果がないので、その場合も使えません。
<参考記事>
Q12.このほか、治療中に注意する点はありますか?
治療中は、ビタミンA含有のサプリメントを摂ることができません。
また、治療には注意事項があり、専用の同意書が必要になります。
未成年の方の治療は、必ず保護者の方のサインが必要なので、保護者の方に同伴いただく必要があります。
ほかでは、ビタミンA誘導体の内服治療中の20週間と、前後6ヶ月の期間には、妊娠や授乳は絶対に避ける必要があります。
だから、妊娠を考えていたり、授乳中などはこの治療はできません。
もちろん、治療期間が終了してから6ヶ月以上内服しない期間を設けると、それ以降に妊娠した場合に関しては胎児への薬の影響は心配ありません。
だから、妊娠を考えておられる場合は、しっかりと計画を立てる必要があります。
3.まとめ
東中野皮フ科クリニック院長の加藤雄一郎先生をお迎えして、保険診療では改善しない難治性のニキビの自由治療についてお話をお伺いました。
ニキビは通常、日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡治療ガイドライン 2017」を基本として保険診療で治療を行います。
しかし、一部にはこれに沿った治療を行っても改善しない難治性ニキビの患者さんがいます。
そんな場合の切り札的な治療がイソトレチノイン療法です。
残念ながら、日本では未承認薬であるため自由診療となります。
また、副作用もあるため、医師の指導の下で正しく使うことが必要です。
それでも、どうしてもニキビが治らない方にとってもこの薬剤は福音となりえます。
この記事が、難治性のニキビに悩んでいる方のお役に立てば幸いです。
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