自毛植毛は、薄毛や抜け毛に悩む人にとって、自然な仕上がりが期待できる有効な治療法です。しかし、メリットがある一方で、デメリットや注意すべき点も存在します。本記事では、以下の点を中心に詳しく解説します。
- 自毛植毛のデメリットと副作用
- 自毛植毛のメリットと効果
- 施術時の注意点や施術方法
自毛植毛について理解を深め、後悔しない選択をするためにも、ぜひ最後までお読みください。
1.自毛植毛のデメリット
自毛植毛は自然な仕上がりが期待できる優れた施術ですが、いくつかのデメリットもあります。ここでは、施術を検討する際に知っておくべきポイントを解説します。
1)効果が出るまでに時間がかかる
自毛植毛は、施術直後からすぐに効果が出るわけではありません。移植した毛髪は一度抜け落ちた後に再生するため、定着して生えそろうまでには6カ月から1年ほどの期間が必要です。そのため、即効性を求める方には向いていない施術といえます。
また、個人差はありますが、初期脱毛と呼ばれる現象が起こることもあります。これは移植した毛が一時的に抜け落ちる現象で、通常は数ヶ月で新たな髪が生えてきますが、一時的に薄毛が進行したように見えるため、不安に感じる方もいます。
2)ほかの施術と比較して費用が高め
自毛植毛は、AGA治療薬やメソセラピーなどのほかの薄毛治療に比べて、費用が高額になる傾向があります。一般的な施術では、移植するグラフト(株数:毛髪を含む皮膚の小さな組織)の数に応じて価格が決まり、施術費用は数十万円から数百万円に及ぶこともあります。
また、一度の施術で十分な密度が得られない場合、追加施術が必要になるケースもあります。その場合、さらに費用がかかるため、事前に予算をしっかり考慮することが大切です。
<参考記事>
自毛植毛にかかる費用は?自毛植毛の費用を安く抑える方法も紹介!
3)仕上がりが施術者の技術によって左右される
自毛植毛の仕上がりは、担当する医師の技術や経験に大きく依存します。毛髪の生え方や植毛のデザイン、密度の調整など、細かい技術が求められるため、施術を受けるクリニック選びは非常に重要です。
医師の経験が浅い場合、不自然な生え際になったり、密度が均一でなかったりするリスクがあります。そのため、実績のあるクリニックを選び、事前にカウンセリングで施術方針をしっかり確認することが大切です。
4)傷や痛みが残る場合がある
自毛植毛は外科的な施術であるため、一定の傷や痛みをともなうことがあります。特にFUT法(ストリップ法)では、後頭部のドナー採取部分に縫合が必要となるため、傷跡が残る可能性があります。一方で、FUE法(ダイレクト法)は比較的傷が小さく済みますが、それでも細かな傷ができることは避けられません。
術後の痛みは数日から1週間ほどで落ち着くことが多いですが、体質によっては痛みや違和感が長引くこともあります。クリニックで適切なアフターケアを受けることが重要です。
5)髪の毛すべてが生着するとは限らない
移植した髪の毛がすべて定着するわけではなく、個人差があるものの、約10〜20%程度は定着せずに抜け落ちるといわれています。そのため、十分な密度を得るためには、あらかじめ多めに移植するケースもあります。
また、血流が悪い頭皮や傷ができやすい体質の方の場合、生着率が低くなることがあります。施術前の頭皮ケアや生活習慣の見直しも、成功率を高めるために重要なポイントとなります。
6)薄毛の進行が進んでいると効果が得にくい
薄毛が進行すると、時間の経過とともにその範囲は拡大していきます。薄毛の範囲が拡大すると、効果が得にくい場合があります。なぜなら、移植できる毛髪が少なくなって、移植密度が薄くなってしまうからです
つまり、治療を始めるのが遅いと、薄毛になった部分に自分の毛髪が十分に再生しなくなる点がデメリットとなります。また、改善のために治療に必要な費用が膨らんでしまう点もデメリットです。
7)後頭部の髪を刈り上げる必要があることも
自毛植毛は、施術前にドナーとなる後頭部の毛髪を採取するため、髪を刈り上げる必要がある場合が多いのです。
人前にでる機会が多い方やもともとのヘアスタイルが刈り上げでない方は、避けたいのではないでしょうか?
刈り上げが気になる方にとっては、その点もデメリットです。
2.自毛植毛の注意点
自毛植毛は多くのメリットを持つ一方で、施術後のケアやリスクについても知っておく必要があります。ここでは、施術を受ける際に注意すべきポイントを詳しく解説します。
1)手術後の頭皮の扱い方
自毛植毛後の頭皮は非常にデリケートな状態となるため、適切なケアが必要です。施術直後は、移植部分を強くこすったり、刺激を与えたりしないよう注意しなければなりません。特に、洗髪は施術後すぐに行うことは避け、医師の指示に従いながら慎重に行いましょう。
また、術後しばらくは激しい運動や飲酒を控えることも大切です。これらの行為は血流を促進し、移植部分の腫れや出血を引き起こす可能性があるため、一定期間は生活習慣に気を配る必要があります。
2)施術後の傷や痛み
自毛植毛は外科的な施術であるため、術後に軽度の痛みや腫れが生じることがあります。特にFUT法では後頭部に縫合の跡が残るため、傷が目立つ可能性があります。一方、FUE法は比較的傷が小さく済みますが、それでも一定のダウンタイムが必要です。
痛みは通常、処方される鎮痛剤で抑えることができますが、痛みが長引く場合は医師に相談することが重要です。また、かさぶたができることもあり、その場合は無理に剥がさず自然に取れるのを待ちましょう。
3)施術後の感染症リスク
自毛植毛は手術後、細菌が術部に侵入することで感染症を起こすケースがあります。
そのため、頭皮を清潔に保ち、縫合部や移植部からの感染を防ぐことが大切です。院内では十分ケアされていますが、術後、自宅での洗髪が可能となった際には、頭皮や毛髪を清潔に保つように気をつけましょう。
感染した場合は、すぐに施術を受けたクリニックへ相談しましょう。通常、軽度であれば抗生物質や内服治療で改善します。もし、感染症が重度になれば、稀ながら外科手術が必要になることもあります。
4)ショックロスが起こる可能性がある
ショックロスとは、施術後に一時的に既存の髪の毛が抜け落ちる現象です。これは、植毛による影響で頭皮が一時的にストレスを受けることによって発生します。
ショックロスは通常、一時的なものであり、数ヶ月後には再び髪が生えてくるため、過度に心配する必要はありません。ただし、すべての毛髪が元通りになるわけではないため、事前にこのリスクを理解しておくことが大切です。
5)自毛植毛は保険適用外
自毛植毛は美容目的の施術とみなされるため、健康保険の適用外となります。そのため、すべて自己負担となり、治療費が高額になる点に注意が必要です。
施術費用はクリニックによって異なり、移植する毛髪の量によっても大きく変動します。費用を抑えるために安価なクリニックを選ぶと、仕上がりに満足できない場合があるため、価格だけでなく実績や医師の技術力を考慮することが重要です。
6)1回の施術で移植できる範囲が限られる
自毛植毛では、1回の施術で移植できる範囲が限られています。特に広範囲の薄毛をカバーしたい場合、1回の施術では十分な密度を確保できない可能性があります。その場合、複数回の施術が必要になるため、時間と費用の両面で計画を立てることが求められます。
また、後頭部のドナー部分にも限りがあるため、何度も移植を繰り返すことができるわけではありません。施術を受ける前に、自分の薄毛の状態と希望する仕上がりを考慮し、医師としっかり相談することが大切です。
3.自毛植毛のメリット
自毛植毛はデメリットもある一方で、多くのメリットもあります。ここでは、自毛植毛が持つ利点について詳しく解説します。
1)副作用のリスクが低い
自毛植毛は、自分自身の毛髪を使用するため、拒絶反応やアレルギーのリスクがほとんどありません。ほかの薄毛治療のように薬剤を使用するわけではないため、副作用が少なく、体への負担も比較的軽いのが特徴です。
また、人工毛植毛とは異なり、体が異物として認識することがないため、定着後は通常の髪の毛と同じように扱えます。これにより、長期的に安定した結果を得ることができます。
2)仕上がりが自然
自毛植毛は、自分の髪の毛を移植するため、仕上がりが非常に自然です。髪の流れや生え際の形状を考慮して植毛が行われるため、見た目に違和感がなく、周囲に気づかれにくいのも大きなメリットです。
さらに、移植した髪の毛は通常の毛髪と同じサイクルで成長するため、時間が経過しても自然な状態を維持できます。そのため、特別なケアをせずとも、通常の髪と同じように扱うことが可能です。
3)髪型を自由に変えられる
自毛植毛によって生えた髪は、通常の髪の毛と同じようにカットやセットができるため、自由にヘアスタイルを楽しむことができます。ウィッグや増毛とは異なり、風や汗を気にする必要がないため、自然な見た目を保ちながら好きな髪型を選べます。
また、増毛やかつらのように定期的なメンテナンスが必要ないため、維持費もかからず、長期的に見てもコストパフォーマンスの良い選択肢となります。
4)メンテナンスを行う必要がない
自毛植毛で移植した髪の毛は、一度定着すれば通常の髪と同じように成長し続けるため、特別なメンテナンスは不要です。ウィッグや増毛では定期的な交換や調整が必要ですが、自毛植毛は一度施術を受ければ、その後の手間がほとんどかからないのが大きな利点です。
また、薬による薄毛治療の場合は、継続的に服用するため副作用のリスクがあったり、費用がかかりますが、自毛植毛はそのような心配がありません。長期的に考えると、自然に維持できるという点で大きなメリットとなります。
4.自毛植毛の種類とデメリット・メリット
自毛植毛にはいくつかの施術方法があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。ここでは、代表的な2つの方法について解説します。
1)FUE法
FUE法(Follicular Unit Extraction)は、専用のパンチを使って後頭部から毛髪を1本ずつ採取し、移植する方法です。この方法は切開をともなわないため、傷跡が目立ちにくいのが特徴です。
①FUE法のメリット
- メスを使用しないため、縫合が不要でダウンタイムが短い
- 傷跡が小さく、目立ちにくい
- 施術後の痛みや違和感が少ない
②FUE法のデメリット
- 一度に大量の移植が難しいため、広範囲の薄毛には向かない
- 施術に時間がかかるため、費用が高くなりやすい
- 採取する毛髪の損傷リスクがあるため、医師の技術が重要
FUE法は、比較的小規模な範囲の薄毛治療を希望する方や、傷跡をできるだけ目立たせたくない方に適した方法です。
2)FUT法
FUT法(Follicular Unit Transplantation)は、後頭部の皮膚を帯状に切り取り、その中から毛髪を採取して移植する方法です。従来から行われている技術で、一度に多くの毛髪を移植できるのが特徴です。
①FUT法のメリット
- 一度に大量の移植が可能で、広範囲の薄毛に対応できる
- 毛髪の損傷が少なく、生着率が高い
- 施術時間が比較的短く済む
②FUT法のデメリット
- 切開をともなうため、術後に縫合が必要
- 後頭部に線状の傷跡が残る可能性がある
- ダウンタイムが長く、術後のケアが必要
FUT法は、広範囲の薄毛をカバーしたい方や、より多くの毛髪を移植したい方に適した方法です。ただし、傷跡が残る可能性があるため、髪を短くするスタイルには向いていないことを考慮する必要があります。
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植毛とは?植毛の手術方法の種類とメリット・デメリットを解説!
5.植毛がおすすめの方
植毛は、薄毛の進行を止めるだけでなく、新しい髪を定着させるための治療法です。しかし、すべての人に適しているわけではありません。特に以下のような方には植毛が適しているといえます。
1)AGA治療薬の効果が十分でなかった方
AGA治療薬(フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルなど)は、薄毛の進行を遅らせたり、発毛を促進する効果が期待できます。しかし、すべての人に効果があるわけではなく、薬の使用を数ヶ月から1年以上続けても十分な発毛が見られない場合もあります。そのような方にとって、植毛は直接的に髪を増やすことができるため、効果的な治療法となります。
2)AGAが進行している方
AGAの進行度が高く、すでに広範囲で薄毛が目立つ場合、治療薬だけでは改善が難しいことがあります。特に、生え際や頭頂部の毛量が大幅に減少している場合、薬による治療では満足のいく結果が得られないことも少なくありません。植毛を行うことで、後頭部などの健康な毛髪を移植し、自然な髪の密度を取り戻すことが可能です。
植毛は、自分の髪を活かして新しい髪を生やす治療法のため、AGAが進行している方でも比較的自然な仕上がりを期待できます。
3)半永久的な効果を期待したい方
薄毛やAGAの服用や外用薬は、長期的な使用が必要です。人工毛植毛も施術後にメンテナンスが費用です。
一方、自毛植毛は1回の施術で半永久的な効果があるため、治療の回数や期間を減らしたい方に向いています。
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自毛植毛から10年たったらどうなる?人工毛植毛との違いも解説!
6.植毛がおすすめできない方
植毛は多くの薄毛治療の中でも高い効果が期待できますが、すべての人に適しているわけではありません。以下のような方には、ほかの治療法を検討するほうが良い場合もあります。
1)AGA治療をこれから始める方
AGAの治療は、まずは薬による治療を試すことが一般的です。フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルなどの薬は、薄毛の進行を抑えたり、発毛を促す効果が期待できます。まだAGA治療を始めていない方は、まずは数ヶ月から1年以上、薬による治療を試してみることをおすすめします。薬で十分な改善が見られない場合に、植毛を検討するのが良いでしょう。
2)費用に不安がある方
植毛は、ほかのAGA治療と比較して費用が高額になる傾向があります。施術方法やクリニックによって異なりますが、一般的な相場は以下のようになります。
- FUT法(ストリップ法):1000グラフトで約60万円〜90万円
- FUE法(ダイレクト法):1000グラフトで約80万円〜120万円
このように、高額な費用がかかるため、経済的に負担が大きいと感じる方には向いていないかもしれません。費用面で不安がある場合は、分割払いの有無や医療ローンの利用について、事前にクリニックに相談してみるのも一つの方法です。
植毛は一度行うと効果が持続する治療ですが、費用を考慮し、長期的な視点で検討することが大切です。
7.自毛植毛のデメリットに関するよくある質問
Q1.自毛植毛より推奨されている治療方法はありますか?
日本皮膚学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」では、プロペシア(フィナステリド)やザガーロ(デュタステリド)などの内服薬や、ミノキシジルを用いたAGA治療を「推奨度A(行うことを強く薦める)」としています。
自毛植毛は、「推奨度B(行うよう勧める)」です。
このようにガイドラインの観点では、薬物治療が自毛植毛より推奨されている治療方法です。
Q2.自毛植毛の人工毛植毛と比べた場合のデメリットはなんですか?
自毛植毛の人工毛植毛と比べた場合のデメリットは、まず費用が高いことです。また、即効性が無い点やドナー部位の制限があること、施術直後から思い通りの髪型にならない点です。さらに、頭部全体が脱毛している場合にはできない点です。
Q3.自毛植毛で毛が生着しない確率はどれくらいでしょうか?
自毛植毛で毛が生着しない確率は、10%程度と考えられています。
そのため、移植した毛根が定着せず、髪の毛が生えてこないケースがあります。
8.自毛植毛のデメリットのまとめ
自毛植毛のデメリットや施術時の注意点、また、施術方法について詳しく解説してきました。さらにメリットについてもご紹介しました。
記事の要点をまとめると以下のとおりです。
- 自毛植毛にはデメリットもあり、効果が出るまで時間がかかる、費用が高い、施術者の技術によって仕上がりが左右される点などに注意が必要。
- 自毛植毛は副作用のリスクが低く、自然な仕上がりが期待できる。また、一度定着すればメンテナンス不要で長期的なメリットがある。
- 施術後のケアが重要であり、頭皮の扱い方やショックロスのリスク、費用負担などをしっかり理解したうえで施術を受ける必要がある。
- 自毛植毛にはFUE法とFUT法があり、それぞれ特徴が異なるため、自分に合った方法を選ぶことが大切。
自毛植毛は、薄毛治療の中でも確実な効果が期待できる方法ですが、その分リスクやコストもともないます。自分に合った施術方法を選び、信頼できるクリニックで施術を受けることが、満足のいく結果を得るためのポイントです。
この記事の情報が、自毛植毛のデメリットが気になる方にとってお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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