【医師監修】幹細胞培養上清液とは?成長因子・サイトカイン・エクソソームの違いをやさしく解説

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幹細胞培養上清液は、幹細胞そのものではなく、培養したあとの“上澄み(上清)”に含まれる成長因子・サイトカイン・エクソソームなどの分泌成分を利用する素材です。本記事ではこれら3つの成分の役割と違い、培養上清液が美容医療で注目される理由を、できるだけやさしく整理します。

寺井 美佐栄 先生
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この記事の監修医からのメッセージ

ミサクリニック 六本木本院

院長 寺井 美佐栄 先生

幹細胞培養上清液は、成長因子やサイトカイン、エクソソームなど多様な成分を含む素材として研究が進んでいます。これらは「期待される働き」であって、医薬品のように効果が保証されたものではありません。まずは“何が含まれ、どのような考え方で使われるのか”という基礎を正しく理解することが、過度な期待やトラブルを避ける第一歩になります。成分の種類や由来、投与方法によって性質は大きく異なりますので、気になる点は遠慮なくクリニックで医師にご確認ください。

<看護師アドバイザー>

美容看護師中川ゆう子さん

中川ゆうこさん

<執筆>

ナールス美容医療アカデミー編集長 富本充昭

富本充昭

 

「幹細胞培養上清液という言葉は聞くけれど、結局どんなものなのか分からない」
「成長因子・サイトカイン・エクソソームの違いがよく分からない」
「“幹細胞”と名前がつくけれど、細胞そのものを体に入れるの?」
幹細胞培養上清液は、点滴・水光注射・施術後のケアなどで、美容クリニックにおいて提供されることがあります。一方で、含まれる成分や名前が似た言葉が多く、基礎の部分でつまずきやすいテーマでもあります。
本記事では基礎編として、培養上清液とは何か、含まれる代表的な3成分(成長因子・サイトカイン・エクソソーム)の役割と違い、そして美容医療で注目される理由を、やさしく整理します。なお、エクソソーム製品と培養上清液の“製品としての違い・成分・製法・濃縮・選び方”は、「エクソソームと幹細胞培養上清液の違い|成分・製法・濃縮・選び方を整理」で詳しく扱います。

効果には個人差があり、医師の診察と説明が前提となる点を最初にお伝えしたうえで、読み進めていただければと思います。

 

幹細胞培養上清液とは?「細胞」ではなく「分泌成分」を使う

幹細胞培養上清液のしくみ(細胞ではなく分泌成分を使う)を示す図

幹細胞を培養すると、細胞は周囲の培養液にさまざまな成分を放出します。その培養液の“上澄み(上清)”に含まれる分泌成分を集めたものが、幹細胞培養上清液(培養上清液・上清液)です【1】。幹細胞培養上清液を使った施術は、細胞そのものを移植するのではなく、細胞が放出した因子で肌などの環境を整える、という考え方に基づいています【1】【2】。

細胞そのものではないことを示す注意図

細胞を使わない素材であるため、取り扱いや製品化のしやすさが期待され、“細胞治療に近い考え方を細胞なしで応用する素材”として注目されることがあります【1】。ただし、これは細胞そのものと同じ働きが保証されるという意味ではありません。
幹細胞そのものの基礎を知りたい方は「幹細胞とは?種類と肌への美容医療と化粧品の効果を解説」、由来別の基礎は「ヒト幹細胞とは?各部位ごとの美容効果について簡単に解説」、再生医療全体の位置づけは「肌の再生医療とは?効果や種類からメリット・デメリットを解説」もご参照ください。

培養上清液に含まれる代表的な3つの成分

成長因子・サイトカイン・エクソソームの関係を示す図

培養上清液には多様な分泌成分が含まれます。本記事では、一般向けに理解しやすい代表例として、成長因子・サイトカイン・エクソソームの3つを中心に整理します【1】【3】。
なお、成長因子は広い意味ではサイトカインの一群として扱われることもあります。ただし、美容医療や再生医療の説明では、役割をわかりやすくするために、細胞の増殖・分化・修復に関わるものを「成長因子」、炎症や免疫などの情報伝達に関わるものを「サイトカイン」と分けて説明することがあります。本記事でも、読者が理解しやすいよう便宜的に分けて整理します。

1)成長因子(グロースファクター)

細胞の増殖・分化や組織の修復のシグナルとなるたんぱく質です。EGF(上皮成長因子)、FGF2(線維芽細胞増殖因子)、HGF(肝細胞増殖因子)などが知られています【1】。肌の領域では、線維芽細胞の働きやコラーゲン産生に関わる因子が研究の対象になっています。

2)サイトカイン

細胞どうしの情報伝達を担うたんぱく質の総称で、炎症の調整(促進にも抑制にも関わる)など、体内のバランス調整に関わります。培養上清液にも各種のサイトカインが含まれます【1】。

3)エクソソーム

エクソソームの図解

細胞が放出する細胞外小胞の一種で、一般には小型EVとして扱われることが多い成分です。サイズはおおむね30〜150nm程度と説明されることがありますが、厳密には発生由来や分離・解析方法によって定義が左右されるため、サイズだけでエクソソームと断定できるわけではありません【3】【7】。内部にたんぱく質や核酸などを内包し、別の細胞へ“荷物”を届けるイメージで働くと考えられています【3】。重要な点として、エクソソームはあくまで培養上清液に含まれる成分の“一部”であり、「培養上清液=エクソソーム」ではありません【3】。

成長因子・サイトカイン・エクソソームの違いをやさしく整理

3つの成分は、ざっくり次のように整理できます。

成分ざっくりいうと主な役割のイメージ培養上清液との関係
成長因子増殖・修復の指示を出すたんぱく質細胞を増やす・組織を直す方向のシグナル含まれる成分の一つ
サイトカイン細胞間の連絡係のたんぱく質炎症や免疫のバランス調整含まれる成分の一つ
エクソソーム中身を運ぶ小さな袋(細胞外小胞)他の細胞へ情報・分子を届ける含まれる成分の“一部”

※成長因子とサイトカインは完全に別々の分類ではありません。成長因子は広い意味でサイトカインに含まれることもありますが、本記事では一般の方に役割の違いを理解していただくため、便宜的に分けて説明しています。
これらは厳密に切り分けられるものではなく、互いに関わり合いながら働くと考えられています。そのため「どれが一番効く」と単純化することはできません。
エクソソーム“製品”と培養上清液の、成分・製法・濃縮・選び方といった製品レベルの違いについては、「エクソソームと幹細胞培養上清液の違い|成分・製法・濃縮・選び方を整理」で詳しく整理しています。

美容医療で注目される理由

培養上清液のカウンセリングの様子(医師と女性)

培養上清液は細胞を用いないため取り扱いがしやすく、線維芽細胞の働きやコラーゲン産生、創傷治癒といった皮膚の修復プロセスに関わる因子を含むことから、皮膚老化や施術後のケアへの応用が研究されています【4】【5】。
ただし、これらは「期待される作用」であり、医薬品のように効果が保証されているわけではありません【5】。研究の多くは基礎研究や小規模な臨床であり、製法も標準化の途上にある点に注意が必要です【1】【5】。

 

中川ゆう子さん
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美容看護師中川ゆう子さんコメント

美容看護師

中川ゆう子さん

カウンセリングでは、施術名や価格だけでなく、「どのような素材を使うのか」「何が含まれているのか」も遠慮なく確認していただきたいと思います。培養上清液は“期待できる可能性”と“まだ分かっていないこと”が混在する分野です。基礎を知ったうえで、過度に期待しすぎないことも大切です。施術後に気になる変化があれば、自己判断せず早めにクリニックへご相談ください。
*中川ゆう子さんは、美容医療アカデミーのアドバイザーであり、ミサクリニック 六本木本院の看護師ではありません。

知っておきたい限界と注意点

期待される効果と限界・注意の比較図

幹細胞培養上清液は、もとになる幹細胞の由来(臍帯・脂肪・歯髄など)や、ドナー管理・培養工程・濃縮や検査の体制によって品質が大きく変わります。「名前が同じ培養上清液」でも中身は同一ではありません。

また、点滴・注射などで体内に入れる方法(静脈投与)については、外用や局所導入と比べてリスクの性質が異なり、学会から慎重な見解も示されています。投与方法ごとの考え方は「エクソソームと幹細胞培養上清液の違い|成分・製法・濃縮・選び方を整理」や、点滴の費用・実際を扱う「エクソソーム(幹細胞培養上清液)点滴の効果とデメリットや費用」もあわせてご確認ください。

なお、細胞外小胞(EVs)やエクソソーム、これらを含む細胞培養上清などを用いる治療については、日本再生医療学会などからも、品質管理・有効性評価・安全性確認の重要性が示されています。特に自由診療で提供される未承認の製品・調製物については、効果や安全性が十分に確立しているとは限らないため、投与方法、由来、製造・検査の体制、リスク説明を確認することが大切です【6】。

なお、厚生労働省も2024年7月31日付の事務連絡で、ヒト幹細胞培養上清液やエクソソーム等を用いる医療について、現時点で有効性・安全性が示され薬事承認を得た医薬品はないと周知しています。そのため、点滴・注射などで用いる場合は、医師の責任のもとで安全性に特に留意する必要があります【8】。

よくある質問

Q1. 幹細胞培養上清液は、幹細胞そのものを体に入れるのですか?

いいえ。幹細胞培養上清液は、幹細胞そのものではなく、幹細胞を培養したあとの“上澄み(上清)”に含まれる分泌成分(成長因子・サイトカインなど)を利用する素材です【1】。細胞を移植するのではなく、細胞が放出した因子で肌などの環境を整えるという考え方に基づいています【1】【2】。

Q2. 成長因子・サイトカイン・エクソソームは何が違うのですか?

おおまかには、成長因子は細胞の増殖・修復のシグナルとなるたんぱく質、サイトカインは細胞どうしの情報伝達を担うたんぱく質、エクソソームは中身を運ぶ小さな袋(細胞外小胞)です【1】【3】。ただし、成長因子は広い意味ではサイトカインに含めて扱われることもあり、両者は完全に別々の分類ではありません。本記事では、働きの違いをわかりやすくするために、成長因子とサイトカインを分けて説明しています。これらは厳密に切り分けられるものではなく、互いに関わり合いながら働くと考えられており、「どれが一番効く」と単純化することはできません。

Q3. 「培養上清液」と「エクソソーム」は同じものですか?

同じではありません。エクソソームは、培養上清液に含まれる成分の“一部”であり、「培養上清液=エクソソーム」ではありません【3】。培養上清液は、成長因子・サイトカイン・エクソソームなど多様な分泌成分を含む“全体”を指します。製品としての違いや選び方は、「エクソソームと幹細胞培養上清液の違い」で詳しく整理しています。

Q4. 培養上清液は、どのくらい効果が期待できますか?

培養上清液に含まれる因子は、皮膚老化や施術後のケアへの応用が研究されていますが、これらは「期待される作用」であり、医薬品のように効果が保証されているわけではありません【4】【5】。研究の多くは基礎研究や小規模な臨床で、製法も標準化の途上にあります【1】【5】。効果には個人差があり、医師の診察と説明が前提となります。

Q5. 名前が同じ「培養上清液」なら、中身も同じですか?

同じとは限りません。もとになる幹細胞の由来(臍帯・脂肪・歯髄など)や、ドナー管理・培養工程・濃縮や検査の体制によって品質は大きく変わります。「名前が同じ培養上清液」でも中身は同一ではないため、由来や製造・検査の体制を確認することが大切です。

Q6. 点滴で培養上清液・エクソソームを入れるのは安全ですか?

外用や局所導入と、点滴・注射などで体内に入れる方法(静脈投与)では、リスクの性質が異なります。細胞外小胞やエクソソーム、これらを含む細胞培養上清などを用いる治療については、学会からも品質管理・有効性評価・安全性確認の重要性が示されており、自由診療で提供される未承認の製品・調製物では、効果や安全性が十分に確立しているとは限りません【6】。投与方法・由来・製造や検査の体制・リスク説明を確認し、医師とよく相談することが大切です。

まとめ

幹細胞培養上清液は、幹細胞そのものではなく培養後の上清に含まれる分泌成分(成長因子・サイトカイン・エクソソームなど)を利用する素材です。期待される作用とまだ確立していない点を分けて理解することが大切です。要点は次のとおりです。

 

関連記事(内部リンク)

臍帯・臍帯血・脂肪・歯髄・骨髄の違い|由来別比較表でわかる選び方

参考文献

本記事は、幹細胞培養上清液に関する主要論文を参考に、専門医監修のもとで作成しています。
【1】 Pawitan JA. Prospect of Stem Cell Conditioned Medium in Regenerative Medicine. Biomed Res Int. 2014;2014:965849.
PMID: 25530971 DOI: 10.1155/2014/965849
日本語要旨:培養上清液には成長因子・サイトカイン・細胞外小胞が含まれ、細胞を用いない治療素材として注目される背景を整理。本記事の『培養上清液とは』『3成分』の根拠として参照。
【2】 Chen L, Tredget EE, Wu PY, Wu Y. Paracrine factors of mesenchymal stem cells recruit macrophages and endothelial lineage cells and enhance wound healing. PLoS One. 2008;3(4):e1886.
PMID: 18382669 DOI: 10.1371/journal.pone.0001886
日本語要旨:MSCの分泌因子が創傷治癒を促す可能性を示した基礎研究。『細胞ではなく分泌成分に着目する』という作用機序の根拠として参照。
【3】 Kalluri R, LeBleu VS. The biology, function, and biomedical applications of exosomes. Science. 2020;367(6478):eaau6977.
PMID: 32029601 DOI: 10.1126/science.aau6977
日本語要旨:エクソソームの生物学・機能・医療応用を整理した代表的総説。エクソソームは細胞外小胞の一種で培養上清液の一部成分。本記事のエクソソームの説明の根拠として参照。
【4】 Alquraisy A, et al. A Comprehensive Review of Stem Cell Conditioned Media Role for Anti-Aging on Skin. Stem Cells Cloning. 2024;17:5-19.
PMID: 39310304 DOI: 10.2147/SCCAA.S480437
日本語要旨:幹細胞培養上清液の皮膚抗老化への応用を整理した総説。本記事の『美容医療で注目される理由』の根拠として参照。
【5】 Montero-Vilchez T, et al. Mesenchymal Stromal Cell-Conditioned Medium for Skin Diseases: A Systematic Review. Front Cell Dev Biol. 2021;9:654210.
PMID: 34368115 DOI: 10.3389/fcell.2021.654210
日本語要旨:MSC培養上清液の皮膚応用を整理した系統的レビュー。全体像と限界を示す。本記事の総論・限界の根拠として参照。
【6】 日本再生医療学会「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)」(2024年4月30日)
日本語要旨:細胞外小胞(EVs)・エクソソーム・これらを含む細胞培養上清等を用いる治療について、薬事未承認の製品・調製物の投与に安全性・有効性上の懸念があるとし、実施者が確認すべき現状確認項目・推奨項目を示した学会ガイダンス。本記事の限界・注意点の根拠として参照。
【7】 Welsh JA, Goberdhan DCI, O’Driscoll L, et al. Minimal information for studies of extracellular vesicles (MISEV2023): From basic to advanced approaches. J Extracell Vesicles. 2024;13(2):e12404.
PMID: 38326288 DOI: 10.1002/jev2.12404
日本語要旨:細胞外小胞研究に必要な最小情報を示した国際的ガイドライン。EVの分離・濃縮・解析方法の限界を整理し、エクソソーム表示や粒子数評価を慎重に扱う根拠となる。本記事のエクソソームの定義に関する記述の根拠として参照。
【8】 厚生労働省 医政局研究開発政策課 事務連絡「幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)」(令和6年7月31日)
日本語要旨:ヒト幹細胞培養上清液や細胞外小胞等を用いる医療について、現時点で有効性・安全性が示され薬事承認を得た医薬品はなく、実施する医師・歯科医師の責任のもとで特に安全性に留意する必要があると周知した行政資料。本記事の静脈投与・安全性の注意の根拠として参照。

 

※本記事は医師監修のもと作成されていますが、個別の医療アドバイスを提供するものではありません。治療の適応や製剤の使用については必ず医師にご相談ください。学術論文は情報提供を目的としており、治療効果を保証するものではありません。
※2026年7月時点の情報に基づいています。法令・ガイドラインの改訂や製品情報の変更により内容が変わる場合があります。幹細胞培養上清液・エクソソームを用いる医療の法的位置づけは検討中の事項を含むため、最新情報をご確認ください。

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