女性が安心して選べる避妊方法として、ピルは人気があります。しかし、本当に避妊に効果的なのでしょうか。ピルの避妊効果はいつから始まるのか、避妊成功率はどのくらいなのか、ピルの種類による違いは何かなど、「ピルで避妊する」という選択には多くの疑問もつきものでしょう。
そこで今回は、ピルの避妊効果とその成功率、服用方法について詳しく解説します。また、ピルの種類とそれぞれの特徴、飲み忘れた場合の対処法についても解説します。
ピルによる避妊について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
1.ピルの避妊効果はいつから?
ピルには大きく「中用量ピル」と「低用量ピル」の2種類があります。
かつては中用量ピルが一般的なピルとして使われていました。
しかし、低用量ピルが認可されるようになって普及した今では、避妊や月経トラブルの改善目的では、低用量ピルが用いられることが大半です。
一方、中用量ピルは、アフターピルや月経周期をずらす目的が中心になっています。
ピルは正しく服用すれば、避妊効果が99.7%(※)以上ととても高いことから、WHO(世界保健機関)も若い世代の避妊法として推奨しています。
ピルは、服用開始のタイミングによって避妊効果の発現時期が異なります。ここでは、その詳細を解説します。
※一般的なデータであり効果を保証するものではありません。
<参照元>
Hatcher, RA et al.:Contraceptive Technology:Twentieth Revised Edition, NewYork:Ardent Media, 2011
1)生理初日から低用量ピルを服用した場合は当日から
生理の初日から低用量ピルの服用を開始すると、避妊効果はその日から始まります。これは、ピルが排卵を抑制し、すぐに避妊効果を発揮するためです。
きちんと低用量ピルを服用していれば、もし避妊なしの性交をした場合にも追加の避妊手段を取る必要はありません。生理初日からの服用は、避妊効果を最短で得る方法といえます。
2)生理初日以外に低用量ピルを服用した場合は8日目以降から
生理初日以外に低用量ピルの服用を開始した場合、避妊効果は服用を開始した8日目以降から始まります。この期間中は、避妊法なしでの性交は妊娠する可能性が上がります。そのため、避妊を望むなら、コンドームなどの追加の避妊手段が必要です。
3)アフターピルは性交から時間がたつにつれ避妊効果が低下する
アフターピルは、性交後の緊急避妊薬です。性交後72時間または120時間以内に服用することで緊急避妊効果が期待できます。早めに服用するほど避妊効果が高まり、時間が経過するにつれてその効果は低下します。アフターピルは、性交後できるだけ早く服用することが重要です。
2.低用量ピルを使用した避妊方法は?詳しい服用方法を紹介
低用量ピルは避妊効果が高く、服用方法によっては女性の生活スタイルに合わせて調整できます。ここでは、主に使われる21錠タイプと28錠タイプのピルの服用方法について解説します。
1)21錠タイプ:21錠目まで飲み終わったら7日間休薬期間をとる
21錠タイプの低用量ピルは、21日間連続して服用し、その後7日間の休薬期間を設けます。21錠目を飲み終えた後、休薬期間中はピルを服用しません。この期間に通常、撤退性出血(休薬出血)が起こります。
休薬期間が終わったら、新しいシートで再び飲み始めます。休薬期間中でも、正しく服用していれば避妊効果は継続されます。
2)28錠タイプ:28錠目まで飲み終わったら次のシートを飲み始める
28錠タイプの低用量ピルは、28日間連続して服用します。このタイプは最後の数錠がプラセボ(無効成分)の錠剤であり、これらを服用する期間中にも撤退性出血が起こることがあります。
28錠目を服用した後は、次のシートの服用を直ちに開始します。このタイプのピルは、休薬期間がありません。そのため、服用を忘れるリスクが低減され、避妊効果が一定に保たれます。
3.低用量ピルを飲み忘れたときの避妊効果はなくなる?
低用量ピルの服用を忘れた場合、避妊効果にどのような影響があるのかは、飲み忘れた日数によって異なります。詳しく見ていきましょう。
1)1日の飲み忘れであれば避妊効果が下がることはない
1日だけピルの服用を忘れた場合、避妊効果が大きく下がることはありません。忘れたことに気づいたら、できるだけ早くその錠剤を服用し、次の錠剤は通常通りに服用しましょう。この対応を取ることで、避妊効果は維持されます。
2)2日以上飲み忘れると効果が下がる
2日以上連続してピルの服用を忘れると、避妊効果が低下します。この場合、追加の避妊手段を用いることが推奨されます。
また、ピルの服用を再開する際には、休薬期間を適切に管理し、避妊の失敗を避けるために医師に相談するのが望ましいでしょう。
3)休薬期間が8日以上あくと効果が下がる
休薬期間が8日以上あくと、避妊効果は大幅に低下します。特に、休薬期間が終わって4日目や5日目に新しいシートの服用を開始する場合、直後に妊娠するリスクが高まります。
このため、休薬期間を正しく守り、新しいシートの服用を適切なタイミングで開始することが重要です。
4.低用量ピルを使用する際の注意点
低用量ピルは効果的な避妊手段ですが、いくつかの注意点があります。ここでは、低用量ピル使用時の注意点について解説します。
1)妊娠しているときはピルを服用できない
低用量ピルは、すでに妊娠している場合には服用できません。そのため、ピルを服用する前に妊娠していないことを確認することが重要です。
妊娠の可能性がある場合は、まずは妊娠検査薬を使用して確認することをおすすめします。妊娠検査薬で陽性が出た場合は直ちにピルの服用を中止し、医師に相談してください。
2)生理初日以外に飲み始めた場合は7日間の服用が終わるまでコンドームを併用する
生理初日以外に低用量ピルの服用を開始した場合、最初の7日間は避妊効果が完全ではありません。この期間中は、コンドームなどの追加の避妊手段の併用が推奨されます。
避妊なしの性交は妊娠のリスクが高まるため、併用することで安全性を高められます。
3)服用している最中は生理がこないが休薬期間中に軽い出血がある
低用量ピルを服用している間は、生理がこないのが一般的です。しかし、休薬期間中には軽い出血が起こることがあります。
これは消退出血と呼ばれ、ピルの服用を止めると通常は生理が再開します。この出血は通常軽いもので、また短期間で終わるため心配する必要はありません。
4)服用している最中でも性感染症予防のためにコンドームを使用したほうがよい
低用量ピルでは性感染症(STI)の予防はできません。そのため、性感染症の予防のためには、コンドームの使用が推奨されます。
特に新しいパートナーとの性交や、複数のパートナーがいる場合は、コンドームなしでの性交は避けましょう。性感染症のリスクを減らすために、コンドームの併用が重要です。
<参考記事>
マイコプラズマ・ウレアプラズマの性病の原因・症状と予防・治療
5.低用量ピルで避妊する3つのデメリット
低用量ピルは効果的な避妊手段ですが、いくつかのデメリットも存在します。ここでは、低用量ピルの3つのデメリットを紹介します。
1)頭痛や吐き気など副作用が発生する可能性がある
低用量ピルの初服用時には、体が新しいホルモンバランスに反応するため、頭痛や吐き気といった副作用が出現する可能性があります。副作用は通常、時間が経つにつれて減少しますが、一部の方では続くこともあります。
また、不正出血や生理が終わらないといった症状も報告されています。これらの症状がつらい、しんどいと感じる場合には、医師に相談することが重要です。
2)確率は低いが血栓症のリスクがある
低用量ピルの服用によって、血栓症のリスクがわずかに増加する可能性があります。もともと女性の体は出産という出血を伴うイベントに備えて、出血多量にならないように切り傷などの出血を止めるような仕組みが備わっています。それが女性ホルモンの大きな働きの一つです。そのため、お産後の自然な女性の体に比べて少ないリスクですが、ピルに含まれる女性ホルモンで血栓症が起きることがあります。これは、ピルに含まれるホルモンが血液の凝固に影響を与えるためです。
特に喫煙者、高度に肥満の方、高齢の方、既往のある方では注意が必要です。もともと健康で持病のない方でも、風邪をひいて寝込んでしまうような状態や、脱水なども血栓症と関係があります。体の異常に気づいた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
3)避妊目的での使用は保険が適用されない
日本では、低用量ピルの避妊目的での使用には健康保険が適用されません。これは、避妊が疾患の治療として認められていないためです。そのため、ピルの費用は自由診療となり、全額自己負担となります。その結果、経済的な負担がデメリットになります。
ただし、避妊ももちろんしたいけれど、月経の痛みもある方は保険のピルの方が良い場合もあるので、医療機関で相談すると良いでしょう。その場合は、経済負担が小さくなります。
6.ピルを使用して生理を移動させる方法
ピルを使用して、生理のタイミングを調整することが可能です。生理を早めたり遅らせたりする方法は、以下のとおりです。
1)生理を早めたい場合は低用量ピルを生理開始から5日目までに服用
生理を早めたい場合、低用量ピルを生理開始から5日目までに服用することで、生理の開始を早められます。この方法は、特定のイベントや旅行などで生理のタイミングを調整したいときに有効です。
低用量ピルの服用によって生理周期をコントロールし、生理を早めることが可能になります。
2)生理を遅らせたい場合は中用量ピルを生理の5〜7日前から服用
生理を遅らせたい場合は、中用量ピルを生理の5〜7日前から服用することで、生理の開始を遅らせることが可能です。この方法は、休暇中や大切なイベントなどの際に生理を避けたいときに役立ちます。
中用量ピルの服用によって生理周期を延長し、生理の開始を遅らせることが可能です。
7.ピルの種類とそれぞれの効果は?ホルモンの配合量で分類できる
ピルはホルモンの配合量で50㎍以上の高用量ピル、50㎍の中用量、50㎍以下低用量の3つに分かれます。しかし、今では副作用の多い高用量ピルはほとんど使われなくなりました。
また、低用量ピルはより用量の小さい超低用量ピルも登場しています。
さらに、用量ではなく緊急避妊薬としてアフターピルもあります。
ここでは、中用量ピル、低用量ピル、超低用量ピル、アフターピルの特徴と効果について解説します。
1)低用量ピル:正しい服用で99.7%の避妊効果を得られる
低用量ピルは、正しい服用で99.7%の高い避妊成功率を誇るといわれています。中でも、配合されるホルモンの量が3段階に変化する3相性というタイプのトリキュラーなどは、排卵を抑制するため、排卵痛の軽減にも効果的です。
また、低用量ピルは避妊目的だけでなく、生理痛やPMS(月経前症候群)といった生理に関連する不快な症状の緩和にも使用されます。
トリキュラー28(国産)以外でも、その後発品ラベルフィーユ28があります。さらに、ホルモン量が一定の1相性の低用量ピルにマーベロン28(国産)とその後発品ファボワール28があります。
2)超低用量ピル:主に月経困難症や子宮内膜症の治療に使用される
超低用量ピルは、主に月経困難症や子宮内膜症の治療に使用されます。これらの症状を緩和するために、非常に低い配合量のホルモンが配合されています。生理痛の軽減や生理周期の調整に効果的で、副作用が少ないのが特徴です。
超低用量ピルには、ルナベルULDやフリウェルULD、ヤーズフレックスがあります。
3)中用量ピル:過多月経や月経困難症の治療に使用される
中用量ピルは、過多月経や月経困難症の治療に使用されることがあります。経血量を減らし、生理期間を短縮する効果があるためです。また、生理痛の軽減にも役立ちます。
中用量ピルには、プラノバール21錠などがあります。
4)アフターピル:性交後72時間以内に飲むことで避妊効果が期待できる
アフターピルは性交後72時間以内または120時間以内に服用することで、避妊効果が期待できます。このピルは、排卵を遅らせたり、受精卵の着床を阻害したりするはたらきがあります。
避妊成功率は服用するタイミングによって異なりますが、早めに服用するほど効果が高まるのが特徴です。
ノルレボやその後発品であるレボノルゲストレル、国内未承認ですが、エラワンやマドンナ、ポスティノーがあります。
また、中用量ピルのブラバノールを使うこともあります。
8.低用量ピルに関するよくある質問
Q1.低用量ピルで不妊症になることは?
実際ピルは不妊症の治療の薬を作る過程でできた薬で、ピル服薬終了直後は妊娠しやすくなると言われています。そのため、低用量ピルの服用が不妊症を引き起こすことはありません。多くの場合、ピルの服用をやめて数か月以内に自然な排卵が再開し、妊娠が可能になります。
Q2.低用量ピルの服用中止直後は避妊効果がある?
低用量ピルの服用を中止した直後は避妊効果が続きますが、中止後3カ月以内に排卵が始まり、妊娠が可能になるのが一般的です。そのため、ピルの服用をやめた後は、ほかの避妊方法を検討することが重要です。
Q3.低用量ピルの服用を中止した後はいつから生理が再開する?
低用量ピルの服用中止後、個人差がありますが、一般的には30~60日ほどで生理が再来します。この期間は、個人の体質やホルモンバランスなどによって異なるため、一定ではありません。
Q4.ピルの休薬期間とは何?
休薬期間とは、ピルの服用を休む期間です。
ピルは、基本的に毎日内服を続ける必要がありますが、休薬期間はピルの内服を休むべき期間です。ピルは28日間で1つのサイクルとして考えるため、21錠タイプのピルの場合は7日間が休薬期間になります。
一方、28錠タイプは28日間ずっと内服を続けますが、最後の7日間の薬はプラセボと呼ばれる偽薬、つまり、ピルの有効成分のないものです。つまり、服用していても実際は、休薬しているのです。
これは、あくまでもピルを飲む習慣付けや飲み忘れ防止のためのものです。
Q5.なぜ休薬期間が必要なの?
ピル服用中、卵巣は活動を休止して卵胞が育たなくなりますが、休薬によって刺激を受けることで卵胞は発育しようと活動を開始します。ピル服用で休ませている卵巣を正常に保つためにも、休薬期間は重要なのです。
また、休薬期間には出血が起こりますが、その有無で妊娠を確認することができます。
さらに、休薬期間を設けることで、ピルを28日周期で管理することが容易になります。
Q6.ピル休薬期間中にも避妊効果はある?
低用量ピルを適切に服用していれば、休薬期間に妊娠する可能性は極めて低いとされています。なぜなら、休薬期間は排卵が終わった時期にあたるからです。
休薬期間中の避妊効果は、ピルの服用が正しく行われているかどうかに依存します。
Q7.低用量ピルと痛み止めの併用はできる?
低用量ピルと市販の痛み止め薬は一般的に併用できますが、処方薬を使用する場合は医師に相談することが重要です。中にはピルの効果や安全性に影響を与える可能性があるため、自己判断せず、必ず医師に相談しましょう。
9.まとめ:避妊効果を確実に得るために!低用量ピルを正しく服用しよう
ピルの避妊効果がいつから発現するか、また正しい服用法を解説しました。
また、ピルの種類や特徴についても触れました。
最近、避妊でよく使われるのが低用量ピルです。
低用量ピルは、正確に服用すれば効果的な避妊手段になります。毎日同じ時間にピルを服用することで、ホルモンバランスを一定に保ち、排卵をしっかりと抑制します。
ただし、ピルは避妊には効果的ですが、性感染症予防にはなりません。リスクがある場合は、コンドームなどを併用しましょう。
質問や不明点がある場合には医師に相談し、安心してピルを活用しましょう。
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