中浜医院
院長中浜 力 先生
・日本感染症学会評議員
・認定内科医
・感染症専門医・指導医
・院内感染専門医(ICD)
一般内科や小児科を診療されていて、特に呼吸器疾患(胸の病気、咳、息切れ、喘息など)や感染症(発熱、風邪、気管支炎、肺炎、各種化膿症など)をご専門とされています。
論文執筆や学会活動など学術的に幅広く活動されているだけでなく、地域医療にも非常に力を入れられていて、ご自分のクリニックを中心に100m範囲に住んでおられるご家族3世代の健康全てに責任を持つ覚悟で、お父様からクリニックを継がれました。
日本呼吸器学会の「成人市中肺炎診療ガイドライン」に、プライマリケア医の立場から制作に参画
■病院情報
大阪市旭区中宮2-15-3
TEL:06-6951-0759
大阪メトロ 谷町線「千林大宮駅」から徒歩10分です。
1.マイコプラズマ・ウレアプラズマとは?
マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症は、性感染症(STD)の1種で、キスを含む性行為によって感染します。
性感染症の病原体といえば、梅毒やクラミジア、淋菌が有名ですが、マイコプラズマ・ウレアプラズマという細菌が、尿道炎・子宮頸管炎の原因菌として近年注目を集めています。
その理由は、2012年から日本でも検査が可能になったことです。
今まで原因が分からなかった尿道炎の原因菌の約20%が、マイコプラズマ・ウレアプラズマだとわかってきたのです。
症状としては、尿道・膣の違和感、排尿痛や性器のかゆみ、膿、おりものの増加、性器の異臭などが挙げられます。 咽頭(のど)の痛みや違和感、咳などの症状が出ることがあります。
また、不妊の原因になることが指摘されています。
マイコプラズマ・ウレアプラズマは、感染してから症状が出るまでの潜伏期間は1~5週間程度です。
しかし、感染していても自覚症状がない場合も多いため、それが感染拡大のリスクになります。
<監修医からのメッセージ>
マイコプラズマと聞くと、多くの方は肺炎(マイコプラズマ ニューモニエ)を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、近年、マイコプラズマによる性感染症が注目されています。
性感染症といえば、クラミジア感染症や淋病、梅毒などがよく知られていますが、マイコプラズマ・ウレアプラズマも見逃してはならない病気の1つです。
なぜなら、症状が軽いため放置されやすく、また検査を受けない方が多いので、重症化や感染拡大のリスクも高いからです。
重症化すると治療に難渋することがありますし、不妊の原因になることもあります。
性感染症は予防が最も大切ですが、もし感染の心当たりがある場合は、すぐに医療機関を受診し適切な検査・治療を受けましょう。
この記事を参考に、マイコプラズマ・ウレアプラズマの正しい理解が進むと幸いです。
2.マイコプラズマ・ウレアプラズマの原因と感染経路
1)原因菌は4種類
マイコプラズマにはいくつかの種類があります。
マイコプラズマ感染による性病の原因菌は、マイコプラズマ・ホミニスとマイコプラズマ・ジェニタリウムです。
ウレアプラズマもいくつかの種類が存在しますが、性病の原因菌となるのは、ウレアプラズマ・パルバムとウレアプラズマ・ウレアリチカムです。
つまり、マイコプラズマ・ウレアプラズマは、4種の原因菌による性感染症です。
感染経路や症状、潜伏期間、感染力の強さも似ているためまとめて、マイコプラズマ・ウレアプラズマと捉えられています。
2)感染経路
マイコプラズマ・ウレアプラズマの感染経路は、おもに性行為です。
コンドームを使用しない性行為、オーラルセックス、アナルセックス、ディープキスなどです。
一回の性的接触で30~50%感染すると考えられています。
一方、性行為以外で感染することはほとんどありません。
菌の生命力が弱く、トイレやお風呂や椅子、タオルなどの共有で感染するリスクはとても小さいと考えられています。
3.マイコプラズマ・ウレアプラズマの症状
マイコプラズマ・ウレアプラズマの症状は、性器や尿道、肛門、咽頭などにでます。
医療機関でクラミジアや淋病は陰性であっても、症状が続く場合は、マイコプラズマ・ウレアプラズマが疑われます。
1)咽頭の症状
咽頭への症状はあまりでることはないとされていますが、オーラルセックスやディープキスが原因で次のような症状が出ます。
- 喉の違和感や痛み、イガイガ感
- 咳
- 痰(たん)
2)男性の症状
男性では次のような症状が出ます。
- 性器や尿道のかゆみ、違和感、不快感
- 軽い排尿痛
- 性器から膿が出る
- 下着に分泌物でシミができる
クラミジア感染症に似た症状がでますが、比較的軽度なことが多いとされています。
そのため、放置されると尿道炎、精巣上体炎、前立腺炎などの原因になることもあります。
3)女性の症状
女性の場合は、ほとんどが無症状で気付かないことが多いとされていますが、次のような症状がでます。
- おりものの量が少し増加
- 外陰部に軽いかゆみ
- 排尿時に軽い痛み
放置すると、尿道炎、子宮頸管炎、卵管炎、腹膜炎を引き起こす可能性があります。
また、不妊症の原因になることもあります。
4.マイコプラズマ・ウレアプラズマの予防法
ほかの性感染症と同じですが、粘膜の直接の接触を行わないことと不特定多数の人との性行為を行わないことが予防の基本です。
1)必ずコンドームを使う
予防の基本は、性行為の際にコンドームを適切に使って、粘膜の直接の接触を避けることです。
オーラルセックス(口腔性交)・アナルセックス(肛門性交)の場合もコンドームを使用しましょう。
2)パートナーを限定する
多数の相手と性交渉を行うと、マイコプラズマ・ウレアプラズマに感染したり、あるいは感染させるリスクが高まります
パートナーを限定することも予防法の1つです。
5.検査
マイコプラズマ・ウレアプラズマの検査にはいくつかの種類があります。
健康保険が適用できないため、すべて自費となります。
自分自身に心当たりがある場合は、パートナーにも感染している可能性があります。
可能な限り、マイコプラズマ・ウレアプラズマの検査は同じタイミングでパートナーも受けましょう。
検査の費用は、医療機関や検査の種類で異なりますが、通常は7,000円〜10,000円程度です。
1)尿検査
男性が性器に感染している場合に行います。
検査前は、2時間程度排尿を我慢した状態で受診した方が検査精度が高くなります。
結果は、検査後2〜3日でわかります。
2)膣分泌物検査
女性が性器に感染している場合に行います。
結果は、検査後2〜3日でわかります。
3)咽頭検査
男女とも咽頭に感染している場合には、スワブ検査(綿棒でのどを拭う)やうがい液の採取で検査を行います。
結果は、検査後2〜3日でわかります。
4)肛門検査
男女とも肛門に感染している場合に行います。
結果は、検査後2〜3日でわかります。
6.マイコプラズマ・ウレアプラズマの治療
1)治療に健康保険は効かない
マイコプラズマ・ウレアプラズマは、検査と同じく治療も健康保険適用外となり、自費診療となります。
2)治療はマクロライド系やニューキノロン系の抗菌薬を使う
マイコプラズマは、細菌は細胞壁をもたない点で、ほかの細菌とは異なります。また、ウレアプラズマもマイコプラズマと細菌学的には同種です。
マイコプラズマ・ウレアプラズマの治療には、医療機関で処方するマクロライド系、ニューキノロン系の抗菌薬を使います。
一方、ペニシリンは効きません。
マクロライド系抗菌薬には、アジスロマイシンやクラリスロマイシンなどがあります。
ニューキノロン系抗菌薬には、レボフロキサシンやオフロキサシンなどがあります。
治療上の問題は、マイコプラズマは薬剤耐性菌が多いことです。人によっては、抗菌薬が効きにくい場合があります。
その場合は、抗菌薬の種類を変えて治療を続けます。
治療費は自由診療のため医療機関によって異なります。また、使用する抗菌薬の種類、量、期間などでも変わりますが、通常は7,000円〜10,000円程度です。
3)治癒したかどうかは検査が大切
マイコプラズマ・ウレアプラズマは薬剤耐性を持っている場合が増えているため、一度の治療で完治しないこともあります。
そのため、1クールの抗菌薬治療後に検査を受けることが必要です。
一般的には、抗菌薬の治療終了の2週間後に再検査を行います。
検査でマイコプラズマ・ウレアプラズマの検査が陰性化すれば治癒です。
もし、持続的に陽性が確認されれば抗菌薬を変更するなどして治療を継続します。
7.よくある質問
Q1.マイコプラズマ肺炎とマイコプラズマ・ウレアプラズマはどう違うのでしょうか?
マイコプラズマ肺炎の原因菌は、マイコプラズマ・ニューモニエという細菌です。
マイコプラズマ肺炎は、感染者の咳やくしゃみなどと一緒に飛び出した原因菌を吸い込むことによる飛沫感染と、感染者と身近で接触することによる接触感染の2つの感染経路があります。
症状としては、発熱や頑固な咳、全身の倦怠感、頭痛などが見られます。
つまり、マイコプラズマによる性病とマイコプラズマ肺炎はまったく異なる病気です。
ですからマイコプラズマ肺炎に感染しても、性病のマイコプラズマにも感染するわけではありません。また、性病のマイコプラズマに感染してもマイコプラズマ肺炎に感染するわけではありません。
ですが、感染する場所も症状も異なりますが、総じてマイコプラズマ感染症と呼ばれています。
Q2.マイコプラズマ・ウレアプラズマは自然に治りませんか?
マイコプラズマ・ウレアプラズマは、無症状であることが多く、症状が出ても軽症であることが多いため、性病と気づかないこともよくあります。
しかし、放置していて自然治癒することは極めて少なく、症状が悪化する危険性があります。また、感染拡大のリスクも高くなります。
心当たりがある場合は、必ず医療機関で検査・治療を受けましょう。
Q3.マイコプラズマ・ウレアプラズマは市販の薬で治すことはできませんか?
できません。
マイコプラズマ・ウレアプラズマの治療に使う抗菌薬は、医師の処方が必要な医療用医薬品しかありません。
ですから治療は医療機関で受けましょう。
Q4.コンドームを使うと100%予防可能でしょうか?
マイコプラズマ・ウレアプラズマは、コンドームを使用しても感染する可能性は3〜4%程度あるとされています。
そのためマイコプラズマ・ウレアプラズマをはじめ、性感染症の感染がある場合は、感染拡大を防ぐために、性行為は控えましょう。
もちろん、治療中や治療後でも完治が確定できない場合も同様です。
Q5.クラミジアとマイコプラズマ・ウレアプラズマはどう違いますか?
クラミジアは、国内では最も感染者が多いとされる性感染症です。
マイコプラズマ・ウレアプラズマは、感染部位や症状などにおいてクラミジアとよく似ています。
そのため、検査しなければどちらに感染しているかを見分けることができません。
クラミジアの治療法は、マクロライド系、ニューキノロン系、テトラサイクロン系の抗菌薬を使います。
マイコプラズマ・ウレアプラズマの方が薬剤耐性株が多く、クラミジアに比べて治療が難しい傾向にあります。
Q6.人に知られずに感染の有無を検査したいのですが、可能ですか?
マイコプラズマ・ウレアプラズマをはじめとする性感染症は、郵送で検査ができるキットが市販されています。
また、保険証不要・匿名で誰にも知られずに性感染症の検査を受け、検査結果はインターネットで確認できる場合方法もあります。
医療機関で検査することに抵抗のある場合は、郵送の検査キットを利用するのも1つの方法です。
8.まとめ
イコプラズマ・ウレアプラズマの原因や症状と予防、検査、治療法までをご紹介しました。
マイコプラズマ・ウレアプラズマは、従来は知名度の低い性感染症でしたが、2012年頃から検査や治療が可能になったため、現在では尿道炎の主要な原因菌として注目されています。
しかし、強い症状が出ることが多くないため、放置されているケースも少なくありません。
性本感染症は、放置すると患者本人のQOLが下がるとともに、パートナーへの感染リスクも高くなることが問題です。
心当たりがある場合は速やかに検査を受けましょう。もし、感染していても抗菌薬での治療が可能ですし、完治も可能です。
マイコプラズマ・ウレアプラズマに対する正しい知識や理解を持ち、予防することが大切です。
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