美容医療の世界では近年、「自己血液由来成分」を活用した成長因子を用いた治療が大きな注目を集めています。
その最前線にあるのがPDF-FD(Plasma-Derived Factors-Freeze-Dry)療法です。
PRP療法が抱えていた成分の不安定性や個体差による効果のばらつきという課題を克服し、高濃度で安定した成長因子を肌へ届けられる次世代型治療として、美容皮膚科クリニックで普及しつつあります。
PDF-FD療法は、採血した血液から成長因子を抽出し、細胞成分を除去(Cell Free)して凍結乾燥することで長期保存を可能にした自己由来・細胞非含有のC-PRP製剤を使用します。この製法により、PRP療法で問題となっていた「その日の体調による血小板数の変動」や「調製方法による品質のばらつき」といった課題が大幅に改善されました。
肌のハリ・弾力向上、毛穴の引き締め、小じわの改善、慢性炎症の鎮静など、美肌やエイジングケアに関わる多様な効果が期待できることから、肌質改善を目指す方々の新たな選択肢となっています。また、自己血液由来であるがゆえにアレルギーや拒否反応のリスクが極めて低い点も、安全性を重視する美容医療において高く評価されています。
本記事では、PDF-FD療法の科学的な作用機序、期待できる美肌・エイジングケア効果、安全性やリスク・副作用、他の治療法との比較、実際の治療の流れなど、医学的エビデンスに基づいた正確な情報をわかりやすく解説していきます。
1.PDF-FD療法とは?

1)PDF-FD(C-PRP)療法の正式名称と定義
PDF-FDとは、Plasma-Derived Factors(血漿由来因子)のFreeze-Dry(凍結乾燥)の略称です。患者自身の血液から、肌や組織の再生に不可欠な血小板由来成長因子(PDGF、TGF-β、VEGF、EGF など)を高純度で抽出し、細胞成分を除去したうえで凍結乾燥することで、安定性と保存性を大幅に向上させた製剤です。
細胞成分を含まない(Cell Free)ため、C-PRP(Cell Free PRP)とも呼ばれます。この特性により、再生医療等安全性確保法上は「再生医療」に分類されませんが、成長因子を用いた再生医療的アプローチとして位置づけられます。
【PDF-FD療法の3つの特徴】
- 成長因子抽出:必要な成長因子だけを高濃度で取り出す
- 細胞非含有:白血球などの細胞成分を除去し、成分を均一化
- 凍結乾燥:フリーズドライ加工により長期保存を可能に(約6か月間)
これらの工程により、PRP療法で課題だった「体調による血小板数の変動」「調製方法による品質のばらつき」を極力排除し、常に安定した治療効果を狙えるように設計されています【1】。
2)従来のPRP療法との違い

PRP(多血小板血漿)療法は、採血した血液を遠心分離し、血小板を濃縮した液体を当日中に使用する治療法です。
一方、PDF-FD療法は製剤化プロセスを経ることで、以下のような明確な違いが生まれます。
【PRP療法との主な違い】
| PRP療法 | PDF-FD療法 | |
| 保存性 | 当日使用が原則 | 凍結乾燥により約6か月間の保存が可能 |
| 成分安定性 | 時間経過・温度変化の影響を受けやすい | 成長因子の活性を安定した状態で保持 |
| 再現性 | 採血条件や体調により品質にばらつきが生じやすい。 | 工程管理により品質の均一化が図られる |
| 細胞成分 | 血小板や白血球を含む | 細胞成分を除去(Cell Free) |
| 治療計画 | 施術ごとに採血が必要 | 1回の採血で複数回の施術が可能 |
これらの特性により、PDF-FD療法は単なる進化版PRPではなく、成長因子を安定的に供給する治療システムとして、より精度の高いアプローチが可能になっています【1】【2】。
<参考記事>
PDF-FD(C-PRP)療法とは?効果・安全性・適応疾患をエビデンスで検証
2.成長因子がもたらす肌への働き・メカニズム

PDF-FD療法の核となるのは、血漿由来成長因子(Plasma-Derived Growth Factors)の働きです。
これらの成長因子は、肌の再生・修復プロセスにおいて重要な役割を果たします。
ここでは、主要な成長因子それぞれの作用について詳しく解説していきます。
1)PDGF(血小板由来成長因子)
PDGF(Platelet-Derived Growth Factor)は、線維芽細胞の増殖と遊走を促進する中心的な成長因子です。線維芽細胞は、肌のハリと弾力を支えるコラーゲンやエラスチンを産生する重要な細胞です。
【PDGFの主な作用】
- 線維芽細胞の増殖を活性化
- コラーゲン産生を促進
- 創傷治癒プロセスの初期段階で重要な役割
- 肌の弾力とハリの基盤を形成
PDGFは特に、加齢により低下したコラーゲン産生能力を回復させる効果が期待されており、凍結乾燥後も成長因子活性が保持されることが確認されています【2】【3】。
エイジングケアの要となる成長因子といえます。
2)TGF-β(トランスフォーミング成長因子β)
TGF-β(Transforming Growth Factor-β)は、細胞外マトリックスの再構築を促進し、真皮の構造を整える多機能性成長因子です。
肌の構造維持と炎症制御の両面で重要な働きをします。
【TGF-βの主な作用】
- 細胞外マトリックスの産生を促進
- 真皮の構造的安定性を維持
- 抗炎症作用により肌環境を安定化
- 慢性炎症の鎮静に寄与
- 組織修復の調整役として機能
TGF-βは、赤みや炎症を伴う肌トラブルに対して特に有効性が高く、NF-κB経路の抑制を介して肌質を根本から改善する作用が期待できます【4】。
3)VEGF(血管内皮成長因子)
VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)は、新生血管の形成を促進し、皮膚の血流と酸素供給を改善する成長因子です。肌の代謝機能向上に不可欠な役割を担います。
【VEGFの主な作用】
- 新生血管形成(血管新生)の促進
- 皮膚組織への血流改善
- 酸素と栄養素の供給効率向上
- 肌の代謝機能と修復能力の向上
- くすみの改善に寄与
VEGFにより血流が改善されることで、肌細胞に十分な栄養が届き、老廃物の排出も促進されます。その結果、肌の透明感やツヤが向上します。
4)EGF(上皮成長因子)
EGF(Epidermal Growth Factor)は、表皮細胞の増殖とターンオーバーを促進する成長因子です。肌表面のキメや質感の改善に直接的に作用します。
【EGFの主な作用】
- 表皮細胞(ケラチノサイト)の増殖促進
- ターンオーバーの正常化
- 肌表面のキメを整える
- 創傷治癒の促進
- 肌の滑らかさとツヤの向上
EGFは肌表面の質感改善に優れた効果を発揮し、ざらつきやゴワつきを解消して、触り心地の良い滑らかな肌へと導きます。
5)IGF(インスリン様成長因子)
IGF(Insulin-like Growth Factor)は、細胞の成長と分化を調整し、組織修復プロセスを総合的にサポートする成長因子です。
【IGFの主な作用】
- 細胞の成長と分化の調整
- 組織修復プロセスのサポート
- コラーゲン合成の促進
- 細胞の生存率向上
- 他の成長因子の効果を増強
IGFは単独でも作用しますが、他の成長因子と協調的に働くことで、より効果的な組織再生を実現します。PDF-FD療法では、これらの成長因子が総合的に作用することで、肌の若返りを多角的にサポートします。

| <編集長> PDF-FD(C-PRP)療法は、「どの成長因子を、どの状態で、どの層に届けるか」が極めて重要な治療です。本文で解説されているように、PDGF・TGF-β・VEGF・EGF・IGFといった複数の成長因子は、それぞれ単独でも作用しますが、実際の臨床では“協調的に働くこと”が美肌効果の鍵となります。 特に注目すべき点は、PDF-FDが細胞成分を含まないセルフリー製剤であり、炎症を過度に惹起しにくい点です。PRP療法では、白血球由来の炎症反応が肌状態に影響するケースもありますが、PDF-FDではそのリスクが抑えられ、より安定した肌再構築を目指せます。 また、凍結乾燥により成長因子活性が保持され、施術ごとの品質差が少ない点は、医師の立場から見ても大きな利点です。再生医療的アプローチを「美容皮膚科の日常診療」に落とし込める治療として、今後さらに活用の幅が広がると考えています。 |
3.美肌・エイジングケアに期待できる作用と効果

1)期待できる美肌・エイジングケア効果
成長因子が複合的に作用することで、以下のような美肌効果が期待できます。
①ハリ・弾力アップ
線維芽細胞の活性化により、コラーゲンやエラスチンの産生が促進され、肌がふっくらとした弾力を取り戻します。
特に、PDGFとTGF-βの相乗効果により、真皮層が厚みを増し、肌全体がリフトアップしたような印象になります。
実際、PRP療法の臨床研究では、コラーゲン密度が約89%改善し、生理食塩水対照群の約1.9倍の効果を示したことが報告されています【5】。
②小じわ改善
真皮層のコラーゲン密度が高まることで、目元・口元・首など薄い皮膚部位の小じわやちりめんジワが目立ちにくくなります。PRP療法の臨床試験では、眼窩周囲のシワが約40%以上改善したと報告されています【6】。
表面的な保湿ケアでは改善が難しい深いシワに対しても、内側からのアプローチにより効果が期待できます。
③肌質の向上
細胞ターンオーバーの正常化により、肌のキメが整い、なめらかな質感が得られます。EGFの作用により表皮のバリア機能も強化されるため、外部刺激に対する抵抗力が高まり、肌トラブルが起こりにくくなります。
④抗炎症作用
慢性炎症を鎮静化し、肌の赤みやくすみを軽減します。TGF-βの抗炎症作用により、肌環境が安定し、揺らぎにくい健康的な肌状態を維持できます。
⑤血行促進によるくすみ改善
VEGFによる血管新生効果により、肌の血流が改善され、酸素と栄養素の供給が効率化されます。その結果、肌の透明感が増し、健康的な血色が戻ります【6】。
⑥総合的なエイジングケア効果
これらの成長因子が協調的に作用することで、単一の成分では得られない総合的なエイジングケア効果が実現します。PRP療法のシステマティックレビューでは、皮膚若返り治療においてコラーゲン密度と全体的な皮膚外観の有意な改善が一貫して報告されています【7】。
見た目年齢を若々しく保つだけでなく、肌が本来持つ再生力・修復力を高めることで、長期的な美肌維持が可能になります。
<参考記事>
2)毛穴・赤み・ニキビ跡への効果

①毛穴の引き締め
毛穴の開きは、毛包周囲の真皮構造が弱ることで顕著になります。PDF-FD療法により真皮のコラーゲン線維が再構築されることで、毛包構造が引き締まり、毛穴が目立ちにくくなる効果が期待できます。特に、鼻周りや頬の開き毛穴、たるみ毛穴に対して有効性が報告されています。
②赤み・炎症の鎮静
PDF-FD製剤に含まれる抗炎症因子(TGF-βなど)は、慢性炎症状態にある肌の環境を改善します。赤ら顔、酒さ様皮膚炎、ニキビ後の赤み、慢性的な肌荒れなど、炎症が関与する肌トラブルに対して鎮静効果が期待できます。従来の抗炎症治療と併用することで、より安定した肌状態の維持が可能になります。
③ニキビ跡(クレーター)の改善
浅いクレーター状のニキビ跡に対しては、真皮の再構築により凹凸がなめらかになる可能性があります。ただし、深いクレーターや広範囲の瘢痕組織に対しては、サブシジョン(剥離術)やキュアジェット、フラクショナルレーザーなどの他の治療との併用が推奨されます。PDF-FD療法は、これらの攻めの治療後の組織修復を促進する役割としても有効です。
<参考記事>
3)他施術との組み合わせによる相乗効果

PDF-FD療法は単独でも効果的ですが、他の美容医療施術と組み合わせることで、さらに高い相乗効果が期待できます【8】。相性の良い組み合わせ施術は次の通りです。
①ピコフラクショナルレーザー
ピコフラクショナルレーザーで肌に微細な刺激を与えた後、PDF-FDを導入することで、成長因子の浸透が高まり、真皮再構築効果が増強されます。これによってエイジングケア効果が期待できます。
②サブシジョン後の組織修復
深いニキビ跡やクレーターに対するサブシジョン(剥離術)後に PDF-FDを注入することで、創傷治癒が促進され、より平滑な肌表面が得られます。
③水光注射(ダーマシャイン等)による導入
水光注射の専用機器を使用してPDF-FDを顔全体に均一に注入することで、広範囲の肌質改善が期待できます。
ヒアルロン酸やアミノ酸、ビタミンCなどの美容成分を同時に導入することも可能で、即時的な潤い効果とPDF-FDによる長期的な肌質改善の両方を実現できます。
④スキンブースター(ジュベルック等)
ジュベルックなどポリ乳酸系のスキンブースターとPDF-FDを組み合わせることで、即効性と持続性のバランスが取れた肌質改善が期待できます。
⑤ダーマペンやポテンツァなどマイクロニードル治療
ダーマペンやポテンツァなど微細な針で肌に穴を開けるマイクロニードリング治療と併用することで、PDF-FDの真皮深層への効果的なデリバリーが可能になります。
ダーマペンの場合は、微細な穴を開けた後にPDF-FDを塗布することで浸透を高めます。
ポテンツァの場合は、ドラッグデリバリーシステム(ポンピングチップ)により真皮層へ均一にPDF-FDを注入でき、より効率的な導入が可能です。また、ポテンツァのRF(高周波)照射により止血効果があるため、出血を抑えながら薬剤を浸透させることができます。
<参考記事>
ピコフラクショナルレーザーの効果はいつから?毛穴や小じわに効く?
ポテンツァとは?効果やダウンタイム、費用、ダーマペンとの違い
4.安全性・リスクと注意点

1)自己血由来成分の安全性(免疫反応・感染リスクの低さ)
PDF-FD療法の最大の安全性上の利点は、患者自身の血液を原料とする「自己血由来」である点です。
この特性により、以下のような安全性メリットがあります。
①アレルギー反応のリスクが極めて低い
他人由来の成分や化学合成物質ではなく、自分自身の血液成分を使用するため、アレルギー反応や過敏症のリスクがほぼありません。
②免疫拒絶反応がない
他家移植や異種由来成分で起こりうる拒絶反応の心配がなく、体が自然に受け入れます。
③感染症伝播のリスクがない
他人の血液由来成分を使用しないため、感染症(HIV、肝炎ウイルス等)が伝播するリスクがありません。
④長期的な安全性
自己成分であるため、体内に異物として蓄積される心配がなく、長期的にも安全性が高いと考えられています【2】【9】。
ただし、安全性が高いとはいえ、医療行為である以上、適切な無菌管理と医療従事者による正確な手技が不可欠です。信頼できる医療機関で施術を受けることが重要です。
2)副作用・ダウンタイムについて
PDF-FD療法は比較的ダウンタイムの少ない治療ですが、注射による侵襲があります。主な副作用は注射部位の一時的な痛みや腫れに限定されることが報告されています【9】【10】。
①注射部位の痛み・違和感
施術中および施術直後に、注射針による痛みや違和感を感じることがあります。多くの場合、麻酔クリームの使用により痛みは軽減されます。施術後の痛みは通常、数時間から1日程度で自然に軽快します。
②赤み・腫れ
注射部位に一時的な赤みや軽度の腫れが生じることがあります。通常は数時間から2〜3日以内に落ち着きます。氷冷することで症状を軽減できます。
③内出血
注射針が毛細血管に触れることで、小さな内出血(青あざ)が生じる場合があります。個人差がありますが、通常1〜2週間程度で自然に消退します。コンシーラーでカバー可能です。
④一過性の炎症反応
成長因子の作用により、一時的に軽度の炎症反応(ほてり感、わずかな腫脹感)が起こることがあります。これは組織修復プロセスの一部であり、通常は数日で収まります。
【ダウンタイムの目安】
- 赤み・腫れ:数時間〜3日程度
- 内出血:1〜2週間程度(出現しない場合もあり)
- メイク:翌日から可能(クリニックや注入方法により異なる。当日夜から可能な場合も)
- 洗顔・シャワー:当日から可能な場合が多い
- 激しい運動・飲酒・サウナ:2〜3日程度は控えることが推奨される
3)治療を受けられない・注意が必要な方
✗ 妊娠中・授乳中の方
✗ 重度の血液疾患がある方(血小板減少症、凝固障害など)
✗ 活動性の感染症がある方
✗ 悪性腫瘍の治療中または治療歴のある方
✗ 免疫抑制剤を使用中の方
✗ 抗凝固薬・抗血小板薬を服用中の方(内出血リスクが高まる)
✗ ケロイド体質の方
上記に該当する場合でも、医師の判断により施術可能な場合があります。必ずカウンセリング時に詳しく相談してください。
5.PDF-FD療法はどんな人に向いているか?

1)エイジングサインが気になる方
30代後半から40代、50代にかけて、肌のハリ・弾力の低下、小じわの増加、肌のくすみなど、エイジングサインが気になり始める方にPDF-FD療法は非常に適しています。
従来のヒアルロン酸注入は即効性がありますが、効果持続期間が6か月〜1年程度と限定的です。
一方、PDF-FD療法は自己の成長因子により肌の内側から再生を促すため、より自然で持続的な若返り効果が期待できます。「見た目年齢を5歳若返らせたい」「自然なエイジングケアをしたい」という方に理想的な選択肢です。
2)肌質改善を目指す方
慢性的な肌荒れ、繰り返すニキビ、赤み、毛穴の開きなど、肌質そのものを改善したい方にもPDF-FD療法は有効です。
表面的な対処療法ではなく、真皮層の環境を整えることで、肌が本来持つバリア機能や修復能力を高めます。「何を使っても肌質が改善しない」「根本から肌を強くしたい」という方に、PDF-FD療法は新たな解決策となる可能性があります。
特に、ニキビ跡のクレーターや色素沈着、毛穴の開き、肌のキメの乱れなど、セルフケアでは改善が難しい悩みを持つ方に推奨されます。
3)敏感肌・ダウンタイムを抑えたい方
PDF-FD療法は自己血液由来であるため、異物に対するアレルギー反応のリスクが極めて低く、敏感肌の方でも安心して受けられる治療です。
また、ダウンタイムが比較的短いため、「仕事や予定を休めない」「周囲に気づかれたくない」という方にも適しています。施術翌日からメイクが可能なクリニックも多く、日常生活への影響を最小限に抑えられます。
レーザー治療やピーリングなど、ダウンタイムの長い施術に抵抗がある方、化学合成物質や異物を避けたい方にとって、PDF-FD療法は理想的な選択肢となるでしょう。

| <編集長コメント> PDF-FD療法は、いわゆる“即時的に形を変える治療”とは異なり、肌そのものの再生力を底上げする治療です。そのため、ヒアルロン酸やボトックスで満足できなかった方や、「不自然な変化は避けたいが、確かな改善は欲しい」という方に適しています。 臨床現場では、年齢によるハリ低下だけでなく、慢性的な赤み、肌荒れ、ニキビ跡など「肌質の不安定さ」を訴える患者さんが増えています。PDF-FD療法は、成長因子による真皮環境の改善と炎症制御を同時に狙える点で、こうした悩みに理にかなった選択肢です。 一方で、万能な治療ではありません。深い瘢痕や強いたるみには、他治療との組み合わせが必要です。重要なのは、肌状態を正確に評価し、適応を見極めたうえで治療計画を立てることです。適切に用いれば、PDF-FD療法は“長期的に肌を育てる治療”として高い価値を持つと考えています。 |
6.治療の流れ(採血〜施術まで)

1)採血と成分加工のプロセス
Step 1:初回カウンセリング・診察
医師によるカウンセリングと診察を受けます。肌の状態、既往歴、服薬中の薬、アレルギーの有無などを確認し、PDF-FD療法の適応を判断します。
治療のリスクや期待できる効果、費用についても詳しく説明を受け、納得した上で同意書にサインします。
Step 2:採血
腕の静脈から血液を採取します。採血量は施術内容や治療計画により異なりますが、通常45ml程度です。採血自体は数分で完了し、通常の健康診断の採血と同様の感覚です。
Step 3:製剤加工(2〜3週間)
採取した血液は、専門の加工施設(セルプロジャパン)に送られます。ここで以下のプロセスが行われます。
- 遠心分離:血液を遠心分離
- 成長因子抽出:血漿から成長因子を抽出
- 細胞成分除去:白血球などの細胞成分を除去(Cell Free化)
- 凍結乾燥:無菌環境下で凍結乾燥(フリーズドライ)処理
- 品質検査:無菌性試験、成長因子濃度測定などの品質管理
この製剤化プロセスを経てクリニックに製剤が届くまで約2〜3週間を要します。完成したPDF-FD製剤は、専用容器に密封され、常温で約6か月間保存が可能です【2】。
2)施術方法(注入・導入)

Step 4:製剤の再溶解
施術当日、凍結乾燥されたPDF-FD製剤を生理食塩水で溶解します。この工程により、成長因子が活性化し、注入可能な状態になります。
Step 5:施術(注入・導入)
施術方法は、治療部位や目的により以下のような選択肢があります。
◆手打ち注射
医師が手動で注射針を用いて真皮層に注入します。細かい部位への正確な投与が可能で、特定の悩み(小じわ、ニキビ跡など)に対してピンポイントで治療できます。一般的には30〜32ゲージの細い針を使用し、真皮浅層〜中層(深さ約2〜4mm)へ注入します。
◆水光注射(ダーマシャイン等)
専用機器を使用し、顔全体に均一にPDF-FDを注入します。9本または5本の極細針(通常31〜32ゲージ)で、真皮浅層〜中層(深さ約1.5〜3mm)に自動的に注入されます。広範囲の肌質改善に適しており、ハリ感や潤いを全体的に高めたい場合に推奨されます。注入深度や注入量を細かく調整できるため、部位ごとに最適な治療が可能です。
◆ダーマペン・ポテンツァとの併用
マイクロニードリング機器で肌に微細な穴を開け、PDF-FDを導入します。
<ダーマペンの場合>
極細針(12〜16本、深さ0.25〜3.0mm調整可能)で穿刺後、PDF-FDを塗布することで真皮層への浸透を高めます。
<ポテンツァの場合>
ドラッグデリバリーシステム搭載のポンピングチップにより、針を抜く際に空気圧でPDF-FDを真皮層へ均一に注入します。さらにRF(高周波)照射により止血効果があるため、出血を抑えながら効率的に薬剤を浸透させることができ、ダウンタイムの軽減にも寄与します。
◆エレクトロポレーション・イオン導入
電気の力を利用して成長因子を浸透させる非侵襲的な方法です。針を使わないため、痛みやダウンタイムを最小限に抑えたい方に適しています。ただし、注射や水光注射と比較すると浸透深度は浅く(主に表皮〜真皮浅層)、効果は比較的マイルドになります。
ダウンタイムを完全に避けたい方や、初めてPDF-FD療法を試す方に推奨される方法です。
<参考記事>
エレクトロポレーションの効果はいつから?頻度や回数、間隔は?
Step 6:アフターケア
施術後は、医師の指示に従い適切なスキンケアを行います。保湿と紫外線対策が特に重要です。また、激しい運動、飲酒、サウナなど血行を促進する行為は2〜3日程度控えることが推奨されます。
【治療回数と効果実感の目安】
- 推奨回数:2〜4回(1か月間隔)
- 効果実感:2〜4週間後から徐々に
- 効果持続期間:6か月〜1年程度
- メンテナンス:年1〜2回の施術で効果を維持
※1回でも効果を実感される方が多いですが、肌の悩みの程度や治療目的により回数は異なります
7.よくある質問(FAQ)
Q1.PDF-FD療法は何回受ければ効果が出ますか?
個人差がありますが、1回の施術でも肌質の変化を実感される方が多いです。より確実で持続的な効果を得るには、1か月間隔で2〜3回の施術が推奨されます。肌の悩みの程度や治療目的により、医師が最適な治療計画を提案します。
Q2.PDF-FD療法に副作用はありますか?
自己血液由来であるため、重篤な副作用のリスクは極めて低いです。一般的な副作用としては、注射部位の一時的な赤み、腫れ、内出血などがありますが、通常は数日以内に自然に治まります。これらは注射という手技に伴う一般的な反応であり、過度に心配する必要はありません。
Q3.PRP療法とPDF-FD療法の違いは何ですか?
最大の違いは製剤の「安定性」と「保存性」です。PRP療法は採血当日に液体状態で使用しますが、PDF-FD療法は成長因子を抽出・凍結乾燥することで、約6か月間の保存が可能です【1】【2】。また、細胞成分を除去するため品質が均一化され、治療効果のばらつきが少ないという利点があります。臨床研究では、PRPとC-PRPで同等の美肌効果が確認されています【11】。
Q4.PDF-FD療法の効果はどのくらい持続しますか?
個人差がありますが、一般的には6か月〜1年程度効果が持続します。ヒアルロン酸注射よりも長期間効果が続く傾向があります。効果を持続させるには、年1〜2回のメンテナンス施術が推奨されます。
Q5.PDF-FD療法は保険適用されますか?
PDF-FD療法は美容目的の治療であるため、健康保険は適用されず、全額自費診療となります。
Q6.PDF-FD療法の料金相場は?
費用はクリニックにより異なりますが、2回セットで10万円〜20万円程度が相場です。詳細な料金は各クリニックにお問い合わせください。
Q7.PDF-FD療法後、いつからメイクや洗顔ができますか?
クリニックにより指示が異なりますが、一般的には翌日からメイクが可能です。洗顔やシャワーは当日から可能な場合が多いですが、注射部位を強くこすったり、熱いお湯で洗顔することは避けてください。詳細は施術を受けるクリニックの指示に従ってください。
8.まとめ
PDF-FD(C-PRP)療法は、自己血液由来の成長因子を凍結乾燥という革新的な技術で安定化させた、次世代型の美肌・エイジングケア治療です。
従来のPRP療法が抱えていた品質のばらつきや保存性の問題を克服し、より安定した効果を提供できる点で、美容医療の新たなスタンダードとなる可能性を秘めています【1】【7】【12】。
【PDF-FD療法の主なメリット】
✓ 自己血液由来で安全性が極めて高い
✓ 成長因子を高濃度・高純度で投与できる
✓ 凍結乾燥により長期保存が可能(約6か月)
✓ 品質が安定しており、効果のばらつきが少ない
✓ ダウンタイムが比較的短い
✓ 肌の内側から再生を促す根本的なアプローチ
✓ 他の美容医療施術との併用で相乗効果が得られる
エイジングケアの本質は、表面的な対処ではなく、肌が本来持つ再生力を高めることにあります。PDF-FD療法は、自分自身の成長因子という最も自然で安全な成分を活用することで、肌を内側から蘇らせる理想的な治療法といえるでしょう【7】【12】。
肌のハリ低下、小じわ、毛穴の開き、慢性的な肌荒れなど、従来の治療では満足できなかった方は、PDF-FD療法という新たな選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。まずは信頼できる美容皮膚科クリニックで、専門医によるカウンセリングを受けることをおすすめします。
<参照論文>
【1】Andia I, Perez-Valle A, Del Amo C, Maffulli N. Freeze-Drying of Plasma-Rich Plasma: The Quest for Standardization. Int J Mol Sci. 2020;21(18):6904.
PMID: 32927652 PMCID: PMC7555364 DOI: 10.3390/ijms21186904
日本語要旨:PRP療法は製剤差・投与量・プロトコルの不均一性が臨床の再現性を阻害する。一方、凍結乾燥(FD)は保管性と"オフ・ザ・シェルフ化"を高め、サイト間での品質均一化に寄与し得る。しかし、標準化された製造・品質管理(成分、活性、無菌性等)の枠組み整備が不可欠と論じる。
【2】Emer J, Sundaram H. Freeze-Dried Human Plasma-Rich Plasma Retains Activation and Growth Factor Expression after an Eight-Week Preservation Period. Asian Spine J. 2017;11(3):449-458.
PMID: 28670413 PMCID: PMC5481587 DOI: 10.4184/asj.2017.11.3.449
日本語要旨:凍結乾燥ヒトPRPは8週間保存後も活性化血小板数と成長因子レベルを維持することを示した。凍結のみでは8週間後に劣った結果となり、長期保存には凍結乾燥が最適であることを示唆。臨床応用の可能性を強調。
【3】Kinoshita H, Orita S, Inage K, et al. Freeze-Dried Plasma-Rich Plasma Induces Osteoblast Proliferation via Plasma-Derived Growth Factor Receptor-Mediated Signal Transduction. Asian Spine J. 2020;14(1):1-8.
PMID: 31575111 PMCID: PMC7010512 DOI: 10.31616/asj.2019.0048
日本語要旨:FD-PRPは保存後でもPDGF受容体~ERK経路を介して骨芽細胞増殖を促進し、成長因子活性が保たれ得ることを示した。FD化により保管性を上げつつ、主要GFの機能を維持できる可能性を支持する基礎データ。
【4】Li T, Lu H, Zhou L, et al. Growth factors-based Plasma lysate rejuvenates skin against ageing through NF-κB signalling pathway: In vitro and in vivo mechanistic and clinical studies. Cell Prolif. 2022;55(4):e13212.
PMID: 35274780 PMCID: PMC9055903 DOI: 10.1111/cpr.13212
日本語要旨:血小板ライセート(細胞成分を除いた"因子"中心の製剤)が、細胞・動物モデルで老化関連変化を抑制し、臨床(後ろ向き)でも皮膚外観の改善が示されたと報告。機序としてNF-κB経路抑制などを提示している。
【5】Abuaf OK, Yildiz H, Baloglu H, et al. Histologic evidence of new collagen formulation using Plasma rich plasma in skin rejuvenation: a prospective controlled clinical study. Ann Dermatol. 2016;28(6):718-724.
PMID: 27904270 PMCID: PMC5125944 DOI: 10.5021/ad.2016.28.6.718
日本語要旨:PRP治療による皮膚若返りの前向き比較臨床研究。PRP群では生理食塩水対照群と比較して、コラーゲン密度が89.05%改善(対照群46.01%)し、約1.93倍の効果を示した(p<0.001)。組織学的にコラーゲン新生の証拠を提供し、PRPの皮膚若返り効果の機序を裏付ける。
【6】Banihashemi M, Zabolinejad N, Jaafari-Ashkavandi Z, Eslaminejad MB, Amirkhani MA. Plasma-rich Plasma use for facial rejuvenation: a clinical trial and review of current literature. Acta Biomed. 2020;91(4):e2020116.
PMID: 33525274 PMCID: PMC8182581 DOI: 10.23750/abm.v91i4.10225
日本語要旨:イラン人女性30名を対象としたPRP顔面若返り治療の臨床試験。3か月間隔で2回施術し、3か月および6か月後の評価で、眼窩周囲の黒ずみ改善(47.9%→74%)、眼窩周囲シワ改善(39.1%→43.5%)、鼻唇溝改善(4.3%→13.1%)を医師評価で確認。黒ずみと鼻唇溝で統計的に有意な改善(p<0.05)。重篤な副作用なし。
【7】Singh S, Verma P, Singh N. Plasma-Rich Plasma in Aesthetic Dermatology: Current Evidence and Future Directions. Cureus. 2024;16(8):e66946.
PMID: 39268288 PMCID: PMC11391108 DOI: 10.7759/cureus.66946
日本語要旨:美容皮膚科におけるPRPのシステマティックレビュー。皮膚若返り、育毛、創傷治癒、脂肪移植の各領域で一貫した陽性結果を報告。皮膚若返りではコラーゲン密度と全体的な皮膚外観の有意な改善を確認。ただし、PRP調製法と治療プロトコルに大きなばらつきがあり、標準化の必要性を指摘。
【8】Nanda S, Arora J, Sachdeva S, et al. Plasma-Rich Plasma in Aesthetics. Indian Dermatol Online J. 2021;12(Suppl 1):S41-S54.
PMID: 35173972 PMCID: PMC8664171 DOI: 10.4103/idoj.IDOJ_698_20
日本語要旨:IADVL(インド皮膚科学会)によるPRPの美容医療ガイドライン。顔面若返りに対してエビデンスレベルI B、推奨度1/2Aと評価。PRP調製法の標準化と大規模RCTの必要性を指摘。PRPは有望だが、研究の多くが少数例で追跡期間が短く、プロトコルの統一が課題。
【9】Koga T, Nakatani Y, Ohba S, et al. Clinical Safety Assessment of Autologous Freeze-Drying Plasma-Rich Plasma for Bone Regeneration in Maxillary Sinus Floor Augmentation: A Pilot Study. J Clin Med. 2021;10(8):1678.
PMID: 33919726 PMCID: PMC8070716 DOI: 10.3390/jcm10081678
日本語要旨:自家FD-PRP(濃縮FD-PRP)を上顎洞底挙上術の骨造成に併用した少数例パイロット研究。重篤な全身合併症や過度の炎症反応などは認めず、手技に伴う通常範囲の経過で安全に実施できたと報告。小規模単群で有効性は今後の検討課題。
【10】Ohtsuru T, Otsuji M, Nakanishi J, et al. Freeze-dried noncoagulating Plasma-derived factor concentrate is a safe and effective treatment for early knee osteoarthritis. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2023;31(10):4137-4147.
PMID: 37380754 PMCID: PMC10598078 DOI: 10.1007/s00167-023-07414-y
日本語要旨:早期膝関節症に対するPFC-FD(凍結乾燥血小板由来因子濃縮物)注射の前向き臨床研究。312例を対象とし、12か月で一定割合に臨床的改善を示し、主な有害事象は注射部位の痛み・腫脹など非重篤が中心。疾患重症度が高い群では反応が乏しい傾向も示され、適応の見極めの重要性が示唆される。
【11】Hirose Y, Fujita C, Aoki A, et al. A comparative study on the influences of Plasma-rich plasma vs its derived cytokines on skin rejuvenation. European Journal of Plastic Surgery. 2023.
DOI: 10.1007/s00238-023-02063-3
日本語要旨:PRP(高濃度血小板血漿)療法とその誘導因子(無細胞 PRP, PRP-C)療法を比較した実臨床研究。1,340例の肌老化治療症例を対象に、PRP と無細胞 PRP の肌理改善・弾力性改善・小じわ改善を 8 週間にわたり評価した。その結果、両群とも統計的に肌の状態が改善したものの、PRP 群と無細胞 PRP 群の間で有意差は認められなかった。これらの結果は、両療法が肌老化治療において類似した臨床効果を示す可能性を示唆している。効果持続や長期成績についてはさらなる研究が必要である。
【12】Xu D, Mao R, Xiao M, Fang Y, Liu Y. Plasma-Rich Plasma in Facial Rejuvenation: A Systematic Appraisal of the Available Clinical Evidence. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2022;15:313-332.
PMID: 35221695 PMCID: PMC8864087 DOI: 10.2147/CCID.S340434
日本語要旨:顔面若返りにおけるPRPのシステマティックレビュー。36研究、計3172例を解析。単独療法および他治療との併用で有望な結果を報告。ただし、研究デザインの異質性、評価ツールの多様性により、結果の解釈には慎重な姿勢が必要。標準化プロトコルの確立が急務。
※記事内容は2026年1月時点の情報に基づいています。最新の治療情報については、各医療機関にお問い合わせください。
【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、医療行為を推奨するものではありません。治療の適応、リスク、費用などについては、必ず医療機関で医師の診察を受け、十分な説明を受けた上でご判断ください。効果には個人差があり、すべての方に同様の結果が得られるとは限りません。
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