AGA(男性型脱毛症)や女性の薄毛は、進行性である一方、早期かつ適切な治療によって進行抑制や毛髪環境の改善が期待される疾患です
近年、内服薬や外用薬に加え、「自己血液を用いた成長因子由来医療」が注目されており、その一つがPDF-FD療法です。
PDF-FD療法は、PRP療法の考え方を基盤としつつ、保存性や運用面を工夫した治療法と位置づけられています。
本記事では、AGAおよび女性の薄毛に対するPDF-FD療法の効果・安全性・エビデンスを、既存治療やPRP療法との違いを含め、医師監修の下、医学的根拠に基づいて解説します。
1.AGA・女性の薄毛治療の基礎知識

AGAや女性の薄毛は、いずれも「毛髪そのものの問題」ではなく、毛包(もうほう)を取り巻く生物学的環境の変化によって引き起こされます。
治療効果を正しく理解するためには、まず発症メカニズムと毛包構造を知ることが重要です。
1)AGA(男性型脱毛症)の発症メカニズム

AGA(Androgenetic Alopecia:男性型脱毛症)は、男性ホルモン(アンドロゲン)と遺伝的要因が関与する進行性の脱毛症です。
主な原因は、テストステロンが 5αリダクターゼ という酵素によって DHT(ジヒドロテストステロン) に変換され、このDHTが毛乳頭細胞に作用すると考えられています。
DHTの影響を受けると、次のような変化が起こり、薄毛が徐々に進行していきます。
- 毛周期(ヘアサイクル)の成長期が短縮する
- 毛包が徐々に小型化(ミニチュア化)する
- 太く長い毛が育たなくなる
AGAは自然に改善することは少なく、早期からの適切な治療介入が重要とされています。
そのため、AGA治療では、5α還元酵素を阻害してDHT産生を抑制する内服薬が標準治療として用いられており、フィナステリドはランダム化比較試験により毛髪数の維持・改善効果が示されています【1】。
2)女性の薄毛(FAGA・びまん性脱毛症)の特徴

女性の薄毛は、男性とは異なり、ホルモンバランスの変化・加齢・生活習慣・ストレスなど、複数の要因が関与します。
代表的なものに以下があります。
- FAGA(女性男性型脱毛症)
- びまん性脱毛症(頭部全体の毛量が均等に減少)
女性の場合、前頭部の生え際が後退するよりも、分け目や頭頂部を中心に毛髪密度が低下する傾向があります。
また、毛包自体が完全に失われることは少なく、毛包の活動低下・成長力の低下が主な原因と考えられています。
この点が、再生医療や成長因子治療が検討される理由の一つです。
女性のびまん性薄毛では、外用ミノキシジルが第一選択とされており、プラセボ対照RCTにおいて毛髪密度の改善が確認されています【2】。
一方で、反応には個人差があり、補助的治療の検討が必要となるケースも少なくありません。
3)毛包・毛乳頭・成長因子の関係
毛髪は、皮膚の中に存在する毛包という器官で作られています。
毛包の最深部には 毛乳頭 が存在し、ここが毛髪の成長をコントロールする司令塔の役割を担っています。
毛乳頭細胞は、以下のような成長因子(グロースファクター)の影響を強く受けます。
- 血管新生を促す因子
- 細胞増殖を促進する因子
- 毛周期を正常化する因子
これらの成長因子が十分に作用することで、次の効果が期待されます。
- 毛包の活動が維持される
- 成長期が保たれる
- 太く健康な毛髪が育つ
AGAや女性の薄毛では、こうした成長因子の働きが低下したり、毛包環境が悪化しているケースが多く、毛包環境そのものを改善する治療が重要なアプローチとされています。
<参考記事>
AGAの原因は遺伝以外に何がある?ストレスや生活習慣による影響
AGAの初期症状とは?いつから脱毛が始まるのか段階ごとに解説!
AGA治療は効果がない?効果なしと言われる理由とともに実態を紹介
女性の薄毛・FAGA治療!再生医療を中心に望月瑠璃子先生に聞いた
2.PDF-FD療法とは?PRP療法との違い
PDF-FD療法は、自己血液由来の成長因子を活用した再生医療的アプローチの一つで、近年、AGAや女性の薄毛治療への応用が進んでいます。
ここでは、まずPDF-FD療法の基本を整理し、PRP療法との違いを明確にしたうえで、なぜ薄毛治療に用いられるのかを解説します。
1)PDF-FD療法の特徴

PDF-FDはPlasma-Derived Factors – Freeze-Dried(血漿由来因子の凍結乾燥)を意味します。
PDF-FD療法は、患者自身の血液から得られる血漿由来成長因子を活用した治療法です。
最大の特徴は、血液成分を加工した後に凍結乾燥(フリーズドライ:FD)処理を行う点にあります。
一般的な流れは以下の通りです。
- 患者自身から採血
- 血液中の血漿成分を分離・加工
- 成長因子を含む成分を凍結乾燥し保存
- 使用時に溶解し、頭皮へ注入
凍結乾燥処理を行うことで、成長因子の活性を保ったまま安定的に保存・使用できるため、治療ごとの品質差を抑えやすい点が特徴です。
また、自己血液由来であるため、免疫学的拒絶反応のリスクが低い点も重要な特性・メリットです。
<参考記事>
【2025年最新版】AGAのPRP治療とは?効果・安全性・他治療との違いを徹底解説
2)PRP療法との製法・成分・安定性の違い
PRP療法(多血小板血漿療法)も、自己血液由来成分を用いた治療法ですが、PDF-FD療法とは製法や運用面で明確な違いがあります。
特に、PRPに含まれる成長因子は調製法や保存条件により活性が変動することが指摘されており、凍結乾燥による安定化と標準化の重要性が論じられています【3】。
PDF-FD療法は、こうした課題に対応するための技術的工夫を取り入れた治療法と位置づけられます。
主な違いを整理すると以下の通りです。
| PRP療法 | PDF-FD療法 | |
| 製法 | 採血後、その場で遠心分離し、即日注入 | 成分を加工後、凍結乾燥して保存・使用 |
| 成分の安定性 | 血液状態や調製条件により成分濃度にばらつきが生じやすい | 凍結乾燥により成分の再現性・安定性を確保しやすい |
| 運用の柔軟性 | 当日治療が基本 | 約6か月間保存が可能なため、治療スケジュールの自由度が高い |
このように、PDF-FD療法はPRP療法を基盤としつつ、品質管理・再現性・利便性を高めた発展型治療と位置づけられています。
<参考記事>
3)PDF-FD療法が薄毛治療に応用される理由
AGAや女性の薄毛では、毛包や毛乳頭の活動低下、血流低下、毛周期の乱れなどが複合的に関与しています。
PDF-FD療法は、こうした問題に対し、成長因子を直接頭皮環境へ補うという点で理論的な親和性があります。
特に注目されている理由は以下の点です。
- 毛乳頭細胞や毛包周囲組織への成長因子供給
- 血流改善や細胞活性化への関与
- 毛周期(成長期)の維持・正常化をサポートする可能性
また、女性の薄毛では毛包が完全に消失していないケースが多く、毛包機能の回復・サポートを目的とした治療として再生医療的アプローチが検討される背景があります。
PDF-FD療法は、内服薬や外用薬とは異なり、毛包環境そのものに働きかける補助的治療として位置づけられ、医師の判断のもと、他治療と組み合わせて用いられることもあります。
3.PDF-FD療法がAGA・女性の薄毛に作用するメカニズム

PDF-FD療法は、自己血液由来の成長因子を頭皮に補うことで、毛包環境の改善を通じて発毛・育毛を間接的にサポートする治療と位置づけられています。
ここでは、AGAおよび女性の薄毛に対して、どのような仕組みで作用すると考えられているのかを解説します。
1)血漿由来成長因子が毛包環境に与える影響
PDF-FD療法で用いられる製剤には、血漿由来のさまざまな成長因子(グロースファクター)が含まれています。
これらは、もともと組織修復や血管新生に関与する生理活性物質で、毛包周囲組織においても重要な役割を果たすと考えられています。
AGAや女性の薄毛治療において、抜け毛抑制・毛髪強化・発毛促進・頭皮環境改善といった多面的な作用が期待されています。
AGAや女性の薄毛では、こうした環境が低下しているケースが多く、成長因子を補うことで毛包が本来持つ成長力を引き出すことが治療の狙いとなります。
PDF-FD療法は、単一の成長因子ではなく、複数の成長因子が相互に作用することで毛包環境を包括的に整える治療と位置づけられます。
そのため、内服薬や外用薬とは異なる視点から、薄毛治療を補完する再生医療的アプローチとして応用されています。
2)毛乳頭細胞・毛包幹細胞への働きかけ
毛髪の成長は、毛包の最深部にある毛乳頭細胞と、その周囲に存在する毛包幹細胞の相互作用によって制御されています。
これらの細胞は、成長期(アナゲン期)を維持するために、適切な刺激と栄養環境を必要とします。
PDF-FD療法により供給される成長因子は、下記の効果が示唆されています。
- 毛乳頭細胞のシグナル伝達をサポート
- 毛包幹細胞の活動維持を助ける
- 毛包の退縮(ミニチュア化)進行を抑制する方向に働く可能性
特に女性の薄毛では、毛包が消失していないケースが多いため、毛包機能の回復・維持を目的としたアプローチとして再生医療が注目されています。
3)血流改善と毛周期(ヘアサイクル)への関与

健康な毛髪が育つためには、毛包周囲の血流と酸素・栄養供給が不可欠です。
PDF-FD療法に含まれる成長因子は、血管新生や血流改善に関与するとされており、これが毛包環境の改善につながる可能性があります。
この結果として、下記のように毛周期の正常化が期待されます。
- 成長期(アナゲン期)の維持
- 休止期(テロゲン期)への早期移行の抑制
- 抜け毛の増加抑制
AGAでは成長期が短縮することが問題となり、女性の薄毛では成長期の力が弱まることが課題となるため、毛周期に着目した補助的治療としてPDF-FD療法が用いられる理由の一つとなっています。
PRPを用いたランダム化比較試験では、毛髪密度や毛径、成長期毛割合の改善が報告されており、成長因子が毛包環境に影響を与える可能性が示唆されています【4】。
PDF-FD療法は、同様の成長因子作用を安定的に活用することを目的としたアプローチです。
4)内服薬・外用薬とは異なる「環境改善型」アプローチ
フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルなどの治療は、
- ホルモン作用の抑制
- 血管拡張作用
といった特定の経路に作用します。
一方、PDF-FD療法は、
- 毛包を取り巻く環境そのものを整える
- 成長因子という生理的物質を補う
という点で、作用機序が異なる治療法です。
そのため、単独治療としてだけでなく、既存治療と併用する補助的治療として位置づけられることが多く、医師の判断のもとで治療計画に組み込まれます。
PRP療法に関するメタ解析では、AGA患者において毛髪密度の改善が示されており、補助的治療としての有用性が検討されています【5】。
ただし、治療プロトコルの不均一性が課題として指摘されています。
5)PDF-FD療法の成長因子の作用
| 成長因 | 作用 |
| VEGF(血管内皮増殖因子) | 毛乳頭周囲の血管新生を促進し、毛包への血流と栄養供給を改善することで、毛周期の成長期(アナゲン期)を延長し、脱毛進行の抑制に関与すると考えられています。 |
| IGF-1(インスリン様成長因子) | 毛包の構造を強化し、毛母細胞の増殖をサポートすることで、太く丈夫な毛髪の成長を促進する役割が示唆されています。 |
| PDGF-AA/PDGF-BB (血小板由来成長因子) | 毛包の成長と維持を支える重要な因子で、毛包周囲組織の修復や細胞増殖を促し、発毛を支える基盤づくりに寄与するとされています。 |
| TGF-β1(トランスフォーミング増殖因子β1) | 炎症反応の調節や細胞増殖の制御を通じて、頭皮環境の安定化・慢性炎症の抑制に関与する可能性があります。 |
4.AGA・女性の薄毛に対するPDF-FD療法の効果

PDF-FD療法は、自己血液由来の成長因子を用いて毛包環境の改善を目指す治療であ
り、発毛を直接保証する治療ではなく、毛包機能をサポートする補助的治療として位置づけられます。
ここでは、臨床現場で評価される主な効果指標をもとに、その特徴を整理します。
1)抜け毛の減少と毛周期の安定化
AGAや女性の薄毛では、成長期(アナゲン期)の短縮や休止期(テロゲン期)への移行が早まることが問題となります。
PDF-FD療法では、成長因子による毛包周囲環境の改善を通じて、臨床現場で患者が下記の変化を自覚するケースが報告されています。
- 抜け毛量の減少
- 毛周期の安定化
- 初期脱毛の落ち着き
特に、内服薬や外用薬で進行抑制を行っている患者において、補助的に用いられるケースが多く見られます。
2)毛髪のハリ・コシ・毛径の改善
PDF-FD療法は、毛包や毛乳頭の活動を支えることで、細く弱った毛髪の質的改善を目指す治療です。
臨床的には、次のような「見た目の改善」を効果指標とすることが一般的です。
- 毛髪1本1本のハリ・コシの向上
- 毛径の増加によるボリューム感の改善
- スタイリング時の変化の実感
これは、毛包が完全に失われていない症例、特に女性のびまん性薄毛において評価されやすい傾向があります。
3)治療回数と効果実感の目安
PDF-FD療法は、1回で完結する治療ではなく、複数回の継続治療を前提としています。
一般的には、下記のような治療計画が立てられることが多く、効果の実感には数か月単位を要するケースが一般的です。
- 2〜4週間に1回の間隔
- 3〜5回程度を1クール
これは、毛周期の性質上、短期間での即効性を期待する治療ではないことを理解する必要があります。
4)AGAと女性の薄毛で異なる評価ポイント

PDF-FD療法の効果評価は、AGAと女性の薄毛でやや異なります。
①AGAの場合
- 抜け毛の進行抑制
- 毛髪の質改善
- 内服薬・外用薬との併用効果
②女性の薄毛の場合
- 分け目や頭頂部の透け感改善
- 毛髪密度の体感的向上
- 毛包機能の回復サポート
特に女性では、毛包が消失していない症例が多いため、毛包環境改善型治療との相性が良いと考えられています。
女性の薄毛を対象とした比較試験では、PRPと外用ミノキシジルのいずれも一定の改善を示し、副作用は局所反応中心でした【6】。
5)効果に個人差がある理由と注意点
PDF-FD療法の効果には個人差があり、以下の要因が影響します。
- 薄毛の進行度・原因
- 年齢・ホルモン状態
- 既存治療(内服薬・外用薬)の有無
- 頭皮環境・生活習慣
また、本治療は効果を保証するものではなく、医師の診察・適応判断のもとで行われる必要があります。
5.PDF-FD療法の安全性と副作用

PDF-FD療法は、患者自身の血液から抽出した成長因子を用いる治療であり、安全性に配慮された治療として位置づけられています。
一方で、医療行為である以上、事前に理解しておくべき副作用や注意点も存在します。
また、日本において保険適用外の自由診療であり、医薬品医療機器等法上の承認治療ではありません。
そのため、治療内容や管理体制は医療機関ごとに異なり、十分な説明と同意のもとで実施されることが重要です。
1)自己血液由来治療としての安全性
PDF-FD療法は100%自己血液由来成分を使用するため、他家由来成分を用いる治療と比較して、
- 免疫学的拒絶反応
- アレルギー反応
といったリスクが低いと考えられています。
また、製造工程において無細胞化処理が行われており、細胞移植を伴う再生医療とは異なる位置づけの治療です。
なお、PRP療法のRCTを統合した解析では、重篤な有害事象は少なく、主な副作用は注入部位の局所反応に限られていました【7】。
PDF-FD療法においても、安全性確保のための無菌操作と適応判断が不可欠です。
2)考えられる副作用・リスク
PDF-FD療法で報告される副作用の多くは、注射・採血に伴う一般的なものです。
- 注入部位の赤み・腫れ・痛み
- 内出血や皮下出血
- 採血部位の違和感や疼痛
これらは多くの場合、一時的で自然に軽快するとされています。
また、治療初期に一時的な抜け毛増加(初期反応)を自覚するケースもありますが、すべての方に起こるわけではなく、個人差があります。
3)感染症対策と事前検査の重要性
PDF-FD療法では、加工工程に入る前に感染症検査(HIV・HBV・HCV・梅毒など)が実施されます。
これにより、患者本人および医療従事者の安全を確保するとともに、製剤の品質管理が行われています。
また、無菌操作・適切な保管管理が治療の安全性に直結するため、十分な知識と管理体制を備えた医療機関で受けることが重要です。
4)治療を受けられない・注意が必要なケース

以下に該当する場合、PDF-FD療法が適さない、または慎重な判断が必要となることがあります。
- 感染症検査で陽性反応が認められた場合
- 抗がん剤治療中など、全身状態に配慮が必要な場合
- 重度の皮膚疾患や炎症が頭皮にある場合
- 妊娠中や授乳中
適応の可否は、必ず医師の診察と判断に基づいて決定されます。
5)効果保証がない点への理解
PDF-FD療法は、効果を保証する治療ではありません。
薄毛の原因や進行度、体質、既存治療の有無などにより、得られる効果には個人差があります。
そのため、下記の点について、事前に十分な説明を受け、納得したうえで治療を選択することが重要です。
- 治療目的
- 期待できる効果の範囲
- 費用・回数・併用治療
6.PDF-FD療法が向いている人・向いていない人
PDF-FD療法は、すべての薄毛に万能な治療ではなく、薄毛の原因や進行度によって適応が分かれる治療法です。
ここでは、臨床的に「向いているケース」と「効果が限定的と考えられるケース」を整理します。
1)AGA初期〜中期の方

PDF-FD療法は、毛包がまだ残存しているAGA初期〜中期の方に向いていると考えられています。
具体的には、次のようケースです。
- 抜け毛が増えてきたが完全な脱毛には至っていない
- 髪が細くなり、ハリ・コシの低下を感じている
- 内服薬・外用薬で進行抑制を行いながら、補助的治療を検討している
AGAでは毛包のミニチュア化が進行しますが、完全に消失する前であれば、毛包環境を改善する治療との併用が検討されることがあります。
2)女性のびまん性薄毛の方

女性の薄毛の多くは、頭部全体の毛量が均等に減少するびまん性脱毛症やFAGAです。
このタイプでは、毛包自体が完全に失われていないケースが多く、PDF-FD療法との相性が比較的良いと考えられています。
向いているとされるのは、次のような方です。
- 分け目や頭頂部の透け感が気になる
- 加齢やホルモンバランスの変化による薄毛
- 内服薬に抵抗があり、頭皮環境改善を重視したい
特に女性の場合、毛髪の「量」よりも「質」改善を実感しやすい点が、評価ポイントとなります。
3)効果が限定的なケース
一方で、以下のようなケースでは、PDF-FD療法の効果が限定的となる可能性があります。
- 長期間進行し、毛包がほぼ消失している重度AGA
- 明らかな瘢痕性脱毛症(円形脱毛症の一部、外傷後など)
- 生活習慣・基礎疾患が強く影響している場合
これらのケースでは、成長因子を補っても反応する毛包が少ないため、
植毛治療や他の治療法が検討されることがあります。
また、即効性や確実な発毛を期待する方にとっては、PDF-FD療法は期待と現実のギャップが生じやすい治療である点も理解が必要です。
7.他の薄毛治療との比較
AGA治療は大きく 内服薬・外用薬・注入治療・植毛の4種類に整理され、一般的には内服薬/外用薬が第一選択、十分な効果が得られない場合に注入治療、進行例で植毛が検討されます。
1)フィナステリド・デュタステリド
フィナステリドには内服と外用があります。デュタステリドは内服のみです。
AGAの原因物質DHT産生を抑えることで、「抜け毛の進行を止める」を主目的とする原因経路に介入する治療です。
一方、PDF-FD療法は、自己血液由来の成長因子で「毛包環境を支える」=環境改善・多因子サポートし、補助的治療として併用される位置づけにあります。
①メリット
- 進行抑制の“軸”になりやすく、治療方針を立てやすい
- 服用継続により効果を評価しやすい(※個人差あり)
②デメリット/注意点
- 使用を中止すると逆戻りしやすく、継続負担(経済的・心理的)が課題と整理されています。
- 内服薬では副作用(性機能関連など)が懸念になり、治療躊躇の要因になり得る、
2)ミノキシジル(外用薬・内服薬)
ミノキシジルには、外用薬内服薬があります。
血管拡張・血流改善を介して、毛母細胞の活性化=「毛を強く太く」を狙う治療です。
PRPとミノキシジルを併用した治療では、単独治療と比較して毛髪密度や患者満足度が向上する傾向が報告されています【8】。また、男性AGAでは、外用ミノキシジル5%が2%やプラセボより有効であることがRCTで示されています【9】。
ミノキシジルは、主に血流面からのアプローチですが、PDF-FD療法は、成長因子群により、血流を含む複数経路から毛包環境全体を支える治療です。
①メリット
- 外用は導入しやすく、治療の選択肢として普及
- 血流改善を介した「毛の質」改善が期待されることがある(※個人差)
②デメリット/注意点
- 内服・外用ともに、停止すると逆戻りが起こり得るため、継続性が課題とされています。
- 体質・濃度・使用法で刺激感などが出る場合があるため医師・薬剤師の指導が望ましい
3)他の注入治療(幹細胞培養液上清液・エクソソームなど)
幹細胞培養液上清液・エクソソーム などを頭皮へ注入し、毛包環境の改善や発毛促進を期待する治療群です。
多くは、画一的に作成・製造された製品ですので成分の種類や割合・濃度は必ずしも患者個人に合うかどうかはわかりません。
一方、PDF-FD療法は、自己血液由来の濃縮成長因子を用いる設計で、免疫学的適合性の観点で患者個人に適合しやすいと言えます。
①メリット
- 内服/外用で十分な効果が得られない場合の“次の選択肢”になり得る
- 目的に応じてメニュー設計が可能(施設差あり)
②デメリット/注意点
- 既存の注入治療は「他家の成長因子」を使うことが一般的で、自分に適合した成長因子を用いるのが難しいと整理されています。
- 同様に発毛効果には課題があり得る点、さらに感染リスクや免疫反応の懸念があります。
4)自毛植毛
自分自身の健康な毛根を薄毛部位へ移植し、見た目の回復を目指す治療です。
PDF-FD療法との違い(要点)
外科的に“毛根を移す”ことで比較的高い生着率が報告されています。そのため、自毛を増やすことが可能です。自毛植毛ではFUTやFUEといった術式が用いられ、それぞれに特徴があることが術式比較研究で報告されています【10】。
自毛植毛の有効性は術式や医師技量、患者条件に左右されます。
一方PDF-FD療法は、毛包環境を整え“今ある毛包の力を支える”補助的・段階的なアプローチです。植毛にPRPを併用した場合、毛包生着や初期発毛反応が改善する可能性が示唆されていますが、エビデンスの一般化には注意が必要とされています【11】。
①メリット
- 進行例でも“毛量の見た目”を改善しやすい選択肢になり得る
- 移植毛は定着すれば一定の改善が期待される(※個人差・術式差あり)
②デメリット/注意点(資料の論点)
- 高額になりがち
- ダウンタイムや手術リスク、デザイン・医師技量の影響を受けるため慎重な比較が必要
<参考記事>
8.PDF-FD療法・PRP療法が受けられるおすすめのクリニック

本章では、AGA・女性の薄毛治療において再生医療系治療を提供している代表的な医療機関を紹介します。
治療内容・適応・費用は院ごとに異なるため、必ず医師の診察を受けたうえで判断しましょう。
1)湘南美容クリニック

湘南美容クリニックは、全国に多数の院を展開する大手美容クリニックで、グループの湘南AGAクリニックがAGA・女性の薄毛治療においてPRP系治療(CPRP療法)を含む再生医療アプローチを提供しています。
症例数の多さと治療データの蓄積を背景に、内服薬・外用薬・注入治療を組み合わせた段階的かつ包括的な薄毛治療プランが特徴です。
再生医療系治療を含め、標準治療から段階的に検討したい方におすすめです。
<特徴>
- AGA・女性薄毛の双方に対応
- 全国規模で通いやすく、転院・継続治療がしやすい
- 再生医療系治療を含む幅広い選択肢から提案
<参考記事>
湘南AGAクリニックのC-PRPメソセラピー(PDF-FD)の効果や特徴は?口コミ・評判も紹介
2)ゴリラクリニック

男性専門の美容医療クリニックとして、CPRP療法をはじめ、内服薬・外用薬・注入治療を組み合わせた男性AGAに特化した治療設計が特徴です。
忙しい男性でも通院しやすいよう、診療フローや治療計画が整理されており、継続治療を前提とした管理体制が整っています。
男性AGAを専門的に、効率よく治療したい方におすすめです。
特徴
- 男性専門クリニック
- 医師による経過管理と治療方針の見直し
- 男性特有の薄毛進行パターンを考慮した提案
<参考記事>
ゴリラクリニックのC-PRPメソセラピーの効果・特徴・口コミを徹底解説【AGA治療】
3)美容外科・美容皮膚科フローラクリニック池袋院
再生医療・注入治療に力を入れているクリニックで、PDF-FD療法をはじめ、HARG+療法、iPSファクター注射など、複数の再生医療的アプローチを採用しています。
画一的な治療ではなく、薄毛の原因・進行度・性別を踏まえ、医師主導で治療法を組み合わせるオーダーメイド治療が特徴です。
AGAだけでなく、女性のびまん性薄毛に対する注入治療の選択肢が多い点も強みといえます。
再生医療の選択肢を比較しながら、自分に合った治療を選びたい方におすすめです。
特徴
- PDF-FD療法・PRP・HARG+・iPSファクター注射に対応
- AGA・女性の薄毛の両方に対応
- 少人数制で丁寧なカウンセリング・治療設計
9.PDF-FD療法のAGA・女性の薄毛治療に関するよくある質問
Q1.PDF-FD療法はAGAと女性の薄毛、どちらにも効果がありますか?
PDF-FD療法は、自己血液由来の成長因子を用いて毛包環境の改善を目指す治療で、AGA(男性型脱毛症)と女性のびまん性薄毛の双方に適応されるケースがあります。
ただし、薄毛の原因や進行度によって効果には個人差があるため、医師の診察が重要です。
Q2.PDF-FD療法とPRP療法の違いは何ですか?
PRP療法は採血後すぐに血小板を濃縮して注入するのに対し、PDF-FD療法は血漿由来成長因子を凍結乾燥(FD化)して安定化させた製剤を使用します。これにより、成分の再現性・保存性・濃度の安定性が高い点が特徴とされています。
Q3.何回くらい治療を受けると効果を実感できますか?
一般的には3〜5回程度の治療を目安に、抜け毛の減少や毛髪のハリ・コシの変化を実感する方が多いとされています。ただし、毛周期や薄毛の進行度によって必要回数は異なり、複数回治療を前提とした計画が立てられることが一般的です。
Q4.PDF-FD療法の副作用や安全性は大丈夫ですか?
自己血液由来成分を使用するため、重篤な副作用のリスクは低いと考えられています。一方で、注入部位の赤み、腫れ、内出血、軽度の痛みなどが一時的に起こることがあります。安全性を確保するため、無菌操作や適切な管理体制を備えた医療機関で受けることが重要です。
Q5.PDF-FD療法は保険診療の対象になりますか?
いいえ、PDF-FD療法は保険適用外(自由診療)です。AGAや女性の薄毛治療は美容・生活の質改善を目的とするため、公的医療保険は適用されません。そのため、治療内容や費用に十分納得したうえで選択することが大切です。
Q6.PDF-FD療法の料金相場はどれくらいですか?
PDF-FD療法は自由診療(自費診療)となり、2回セットで10数万円〜20万円程度が一般的な目安です。
治療回数や使用量、クリニックの方針によって費用は異なるため、事前に総額や治療計画を確認しましょう。
Q7.内服薬やミノキシジル治療と併用できますか?
多くのケースで併用は可能です。
PDF-FD療法は毛包環境の改善や再生促進を目的とし、内服薬や外用薬は脱毛の進行抑制を担います。そのため、医師の判断のもとで複合治療として併用されることも多い治療法です。
10.まとめ
AGAや女性の薄毛は、ホルモンバランスや遺伝、加齢、生活習慣などが複雑に関与するため、単一の治療で根本的に解決できるものではありません。
そのため、薄毛の原因や進行度に応じて、内服薬・外用薬・注入治療・植毛といった治療法を適切に選択し、必要に応じて組み合わせることが重要です。
PDF-FD療法は、患者自身の血液から抽出・濃縮した成長因子を用いて毛包環境の改善を目指す再生医療的アプローチで、内服薬や外用薬とは異なる作用機序を持ちます。
発毛を直接保証する治療ではありませんが、毛包が残存しているAGA初期〜中期や女性のびまん性薄毛において、既存治療を補完する選択肢として検討されるケースがあります。
一方で、効果には個人差があり、進行度や体質によっては十分な改善が得られない場合もあります。安全性や費用、治療回数を含め、必ず医師の診察を受けたうえで、自身に合った治療計画を立てることが、後悔しない薄毛治療につながるでしょう。
<参照論文>
【1】Kaufman KD, Olsen EA, Whiting D, et al.Finasteride in the treatment of men with androgenetic alopecia.J Am Acad Dermatol. 1998;39(4 Pt 1):578-589.
PMID: 9777765 DOI: 10.1016/S0190-9622(98)70007-6
日本語要旨:男性AGA患者を対象に、フィナステリド1mg/日投与の有効性と安全性を検証した大規模ランダム化比較試験。毛髪数、写真評価、医師評価の複数指標で有意な改善を示し、AGA治療におけるDHT抑制の有効性を確立した代表的研究。副作用は一定頻度で認められるものの、多くは軽度で可逆的と報告され、現在のAGA薬物療法の基盤となっている。
【2】Lucky AW, Piacquadio DJ, Ditre CM, et al.A randomized, placebo-controlled trial of 5% and 2% topical minoxidil solutions in the treatment of female pattern hair loss.J Am Acad Dermatol. 2004;50(4):541-553.
PMID: 15034503 DOI: 10.1016/j.jaad.2003.06.014
日本語要旨:女性型脱毛症(FPHL)患者を対象に、外用ミノキシジル5%・2%とプラセボを比較したRCT。毛髪数・被験者自己評価・医師評価のいずれにおいても5%群が最も良好な結果を示した。女性薄毛治療において外用ミノキシジルが第一選択薬とされる科学的根拠を提供した研究であり、再生医療系治療はこれら標準治療を補完する位置づけとして議論される。
【3】Andia I, Maffulli N.Freeze-Drying of Platelet-Rich Plasma: The Quest for Standardization.Int J Mol Sci. 2020;21(18):6904.
PMID: 32962283 DOI: 10.3390/ijms21186904
日本語要旨:PRP(多血小板血漿)の凍結乾燥(フリーズドライ)技術に焦点を当て、成分の安定性・保存性・再現性の観点から標準化の必要性を論じた総説。PRPに含まれるPDGF、VEGF、IGF、TGF-βなどの成長因子は、調製法や保存条件によって活性が変動することが指摘されており、凍結乾燥はこれらの生理活性を維持しつつ長期保存を可能にする手法として紹介されている。再生医療分野における品質管理の重要性を強調しており、PDF-FD療法におけるFD(凍結乾燥)処理の理論的背景・妥当性の根拠となる。
【4】Gentile P, Garcovich S, Bielli A, et al.The Effect of Platelet-Rich Plasma in Hair Regrowth: A Randomized Placebo-Controlled Trial.Stem Cells Transl Med. 2015;4(11):1317–1323.
PMID: 26400925 DOI: 10.5966/sctm.2015-0107
日本語要旨:このランダム化比較試験は、AGA患者におけるPRP(多血小板血漿)注入の効果をプラセボ注入と比較した臨床研究です。PRP群では、毛髪密度、毛径、成長期毛の割合などの複数の毛髪パラメータが有意に改善したと報告されており、毛包への血流改善や 毛乳頭細胞の活性化といった作用機序の可能性が示唆されています。治療関連の有害事象は軽度の局所反応に限られ、安全性プロファイルも比較的良好と評価されました。これは、PRP療法が毛包環境の改善を通じて発毛をサポートする可能性を示す代表的なRCTであり、PDF-FD療法などの再生医療的アプローチの機序の根拠となる。
【5】Li M, Qu K, Lei Q, Chen M, Bian D.Effectiveness of Platelet-Rich Plasma in the Treatment of Androgenic Alopecia: A Meta-Analysis.Aesthetic Plast Surg. 2024;48(5):977-984.
PMID: 37644190 DOI: 10.1007/s00266-023-03603-9
日本語要旨:AGAに対するPRP療法の臨床研究を統合したメタ解析。毛髪密度や毛径の改善が示された一方、PRPの調製方法・注入回数・評価指標にばらつきがあり、効果の再現性や標準化が今後の課題と結論付けている。PDF-FD療法が「再現性・安定性」を強調する根拠として有用。
【6】Bruce AJ, Pincelli TP, Heckman MG, et al.A Randomized, Controlled Pilot Trial Comparing Platelet-Rich Plasma to Topical Minoxidil Foam for Treatment of Androgenic Alopecia in Women.Dermatol Surg. 2020;46(6):826-832.
PMID: 31574029 DOI: 10.1097/DSS.0000000000002168
日本語要旨:女性AGAを対象にPRPと外用ミノキシジルを比較したパイロットRCT。両治療ともに一定の改善を示し、副作用は局所反応中心であった。PDF-FD療法の直接的な研究ではないが、女性薄毛領域における再生医療的治療の位置づけを検討する際の重要な比較研究である。
【7】Zhang XX, Ji YX, Zhou MC, et al.Platelet-Rich Plasma for Androgenetic Alopecia: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials.J Cutan Med Surg. 2023;27(5):504-508.
PMID: 37533146 DOI: 10.1177/12034754231191461
日本語要旨:AGAに対するPRPのRCTを統合した系統的レビュー。一定期間で毛髪密度の改善を認め、重篤な有害事象は少ないと報告。一方で、治療プロトコルの不均一性が臨床応用上の制限として指摘されている。
【8】Xiao C, Zhang GH, Li HQ, et al.Meta-Analysis of Efficacy of Platelet-Rich Plasma Combined with Minoxidil for Androgenetic Alopecia.Aesthetic Plast Surg.2024;48(21):4554-4566.
PMID: 38789807 DOI: 10.1007/s00266-024-04054-6
日本語要旨:PRPとミノキシジル併用療法を単独治療と比較したメタ解析。毛髪密度、毛径、患者満足度で併用群が有利となる傾向を示した。再生医療系治療が標準治療を「代替」するのではなく「補完」する位置づけであることを裏付ける。
【9】Olsen EA, Dunlap FE, Funicella T, et al.A randomized clinical trial of 5% topical minoxidil versus 2% topical minoxidil and placebo in the treatment of androgenetic alopecia in men.J Am Acad Dermatol. 2002;47(3):377-385.
PMID: 12196747 DOI: 10.1067/mjd.2002.124088
日本語要旨:男性AGA患者を対象に、外用ミノキシジル5%・2%・プラセボを比較したRCT。5%製剤が最も高い有効性を示し、現在の外用治療の標準的根拠となっている。
【10】Pontes LT, Ruston A, de Moraes AM.Strip Harvesting Follicular Unit Transplantation Versus Follicular Unit Excision.Dermatol Surg. 2024;50(9):851-854.
PMID: 38748590 DOI: 10.1097/DSS.0000000000004230
日本語要旨:FUTとFUEを同一患者で比較し、採取毛包の特性や毛包あたりの毛数を検討した研究。いずれの方法も生着率は比較的高いとされる。
【11】Sindhusen S, Tawanwongsri W, Eden C.Efficacy of Platelet-Rich Plasma as an Adjunct to Hair Transplantation: A Systematic Review.Cureus. 2025;17(10):e94116.
PMID: 41069573 DOI: 10.7759/cureus.94116
日本語要旨:自毛植毛にPRPを併用した臨床研究を系統的にレビュー。毛包生着や初期発毛反応の改善が示唆された一方、研究数や方法の不均一性から、一般化には注意が必要と結論付けている。
※記事内容は2026年1月時点の情報に基づいています。最新の治療情報については、各医療機関にお問い合わせください。
【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、医療行為を推奨するものではありません。治療の適応、リスク、費用などについては、必ず医療機関で医師の診察を受け、十分な説明を受けた上でご判断ください。効果には個人差があり、すべての方に同様の結果が得られるとは限りません。
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