ハイドロキノンはシミや肝斑の治療に使われる医薬品または化粧品の成分で、医薬部外品の美白成分としては認可されていません。メリットは美白作用の高い点ですが、副作用のデメリットがあります。そのため専門医に指導の下、正しく使うことが大切です。本ハイドロキノンのシミへの効果や安全性、正しい使い方をご紹介します。
■経歴
桜蔭高校 卒業
東京女子医科大学 卒業
東京女子医科大学病院 皮膚科入局
シロノクリニック 勤務
早稲田南門eクリニック 勤務
ナチュラルハーモニークリニック表参道 院長代
ミュゼプラチナム 『ミュゼのお肌の相談医』
■専門
美容皮膚科・美容内科
■所属学会
日本抗加齢医学会専門医
日本レーザー医学会認定医
日本皮膚科学会正会員
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1.シミ対策にハイドロキノンを試したいあなたへ
ハイドロキノンは、シミや肝斑などの肌悩みに働きかける成分です。しかし、日本では厚生労働省が定めている、医薬部外品の美白成分として承認はされていないので、化粧品として扱われています。
従来は医薬品として、医師の管理下でのみ使用できましたが、現在では薬局やオンライン販売でも購入ができるようになりました。ただし、高濃度のハイドロキノンは、医師からの処方のみです。
ハイドロキノンの美白作用の高さには定評があり、その有効性を示す医学論文も多くあります。そのため、アメリカでは肝斑治療の標準薬となっています。
一方で、副作用もあるため使い方には注意が必要で、特に高濃度のものはより気を付けなければいけません。EUでは2001年に化粧品原料として、ハイドロキノンの配合が禁止されたほどです。
本記事では、ハイドロキノンの働きと併せて、副作用と使用方法についてご紹介します。シミなどの肌悩みにハイドロキノンの使用を検討していた方は、ぜひ参考にしてください。
<参考記事>
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2.ハイドロキノンの特徴と働き
近年、シミや肝斑などの肌悩みの改善を目的に、皮膚科のみならず美容クリニックでもハイドロキノンによる治療を取り入れています。ハイドロキノンの特徴と働きについてご紹介します。
1)ハイドロキノンとは?
ハイドロキノンとは、麦芽、コーヒー、紅茶など、天然にも含まれている成分で、欧米では古くから美白剤の一種として使用されてきました。日本では2002年に認可され、それ以降は皮膚科や美容クリニックなどの医療機関をはじめ、薬局やオンライン販売など市販の化粧品としても販売されています。
2)ハイドロキノンの働き・メカニズム
ハイドロキノンの働き
ハイドロキノンには、シミのもととなるメラニン色素を作り出すメラノサイトを減少させる作用に期待できます。
また、シミだけではなく肝斑やニキビ跡など、色素沈着を改善する働きもあり、これらの症状を治療する際にも、ハイドロキノンを配合した外用薬が用いられます。
ただし、進行中のニキビへ使用すると、さらに症状が悪化する恐れがあるため、ニキビ改善目的での使用は避けましょう。
ハイドロキノンのメカニズム
ハイドロキノンには、シミの原因となる酵素・チロシナーゼを阻害する作用に期待できます。それにより、メラニン色素の生成が減少し、シミができにくくなるのです。
ちなみに、同じシミ予防に作用がある成分としてビタミンC誘導体がありますが、ビタミンC誘導体とハイドロキノンでは作用が異なります。ビタミンC誘導体は、メラニンの生成を予防してシミを増やさない働きがあるのに対し、ハイドロキノンはメラニンの生成を予防するだけではなく、すでにできているシミを減少させる作用にも期待できます。
3)ハイドロキノン製剤
高濃度のハイドロキノンは肌への刺激が強すぎるため、かぶれなどを起こすリスクがあります。
しかし、ハイドロキノン製剤は肌へ負担がかからない程度にハイドロキノンを調整し、作られています。
ハイドロキノン製剤は、市販薬と皮膚科における処方薬の2通りの入手方法があり、違いはハイドロキノンの濃度になります。
一般的にはハイドロキノン濃度4%が推奨されており、市販薬のハイドロキノン製剤は濃度4%のものが多いですが、皮膚科における処方薬は濃度5%〜10%で、市販薬に比べて高濃度です。
なお、日本の化粧品においては、ハイドロキノン濃度は具体的に定められていないため、ハイドロキノン濃度が高い市販薬が販売されている場合もあります。
ハイドロキノン濃度が肌に合わなかった場合、紅斑や接触皮膚炎などの副作用が強く現れる恐れがあるため、高濃度のハイドロキノン製剤を希望する方は、皮膚科で処方してもらいましょう。
3.ハイドロキノンの効果
ハイドロキノンがもたらす効果についてご説明します。
1)ハイドロキノンが効果的な肌悩み・病気は?
シミにはいくつか種類がありますが、シミにはハイドロキノンの働きが発揮する種類と、効果が出にくい種類があります。
ハイドロキノンが効果的な肌悩み・病気
ハイドロキノンの作用が期待できる肌悩み、病気は次の通りです。
肌悩み・疾患名 | 症状・特徴 |
老人性色素沈着 | 症状:茶褐色のシミが肌に定着する 特徴:加齢や紫外線のダメージにより、肌のターンオーバーが滞り、肌表面に色素沈着する |
肝斑 | 症状:両頬、顎、鼻の下に薄茶色のシミとして定着する 特徴:左右対称、同じ形、大きさで現れる |
炎症性色素沈着 | 症状:炎症をきっかけにメラニン色素が蓄積されシミとして定着する 特徴:ニキビ、湿疹、虫さされ傷、やけどなどの炎症によるものと、摩擦や毛抜きによる刺激、ピーリング、刺激の強い化粧品の使用によるものとに分類される |
ハイドロキノンがあまり向かない肌悩み・病気
ハイドロキノンの効果があまり期待できない肌悩み、病気は次の通りです。
肌悩み・疾患名 | 症状・特徴 |
そばかす(雀卵斑) | 症状:シミの一種で、多くは鼻を中心に茶薄色の小さな斑点が現れるが、肩や腕、手に現れるケースもある 特徴:主な原因は遺伝とされているが、紫外線によって現れ、徐々に色が濃くなるケースもある。遺伝が原因である場合は3歳頃から現れはじめる |
老人性疣贅 | 症状:シミがわずかにいぼ状に盛り上がった状態 特徴:多くの場合が40歳以降に現れはじめ、60代では8割程度、80代はほぼすべての方に現れる。顔、頭部、前胸部、背部に現れるケースが多いが、手のひらと足の裏以外の部位ならばどこにでも現れる |
扁平母斑(茶あざ) | 症状:コーヒー牛乳のような茶色のシミが肌に定着する 特徴:体幹や手、顔に現れる。先天性であるケースが多いが、思春期になって突然現れる場合もある |
2)老人性色素沈着への効果
ハイドロキノンは、加齢や紫外線によるダメージで肌に定着するシミや老人性色素沈着への働きが期待できます。
ただし、ハイドロキノンを使用したとしても、シミが目立ちにくくなる程度で、完全に消えるとは限りません。
また、ハイドロキノンの使用を中止すると、ハイドロキノンを使用する前と同様、シミが目立ちやすくなります。
3)肝斑への効果
紫外線や摩擦などのダメージが原因の一般的なシミとは異なる肝斑は、女性ホルモンが大きく影響しており、左右対称にほぼ同じ大きさで、両頬、顎、鼻の下に薄茶色のシミとして定着します。
肝斑の改善にもハイドロキノンは用いられており、肌再生を促すトレチノインと併用して治療が進められます。なお、ハイドロキノンとトレチノイン、内服薬との併用により、肝斑がほとんど目立たない状態まで改善が見込めます。
4)炎症性色素沈着への効果
炎症性色素沈着とは、ニキビや湿疹、毛抜きによる刺激などによる炎症で生じたシミのことをいいます。ハイドロキノンの使用により、シミがメイクで隠せる程度にまで薄くなる可能性があります。
また、肌再生機能が備わっているトレチノインと併用すると、ハイドロキノンの浸透力が増して、さらに美白作用が高まります。
5)ハイドロキノンはトレチノインと併用すると効果アップ
ハイドロキノン自体に高い浸透力はありませんが、ビタミンA誘導体のトレチノインとの併用により、ハイドロキノンの浸透力が高まり、美白作用を高めることができます。
トレチノインは古い角質を剥がしたり、表皮の細胞分裂を促したりと、皮膚再生能力に優れています。結果として肌の代謝が高まり、シミができにくい肌へと導かれて、美白作用が高まるといわれています。
ハイドロキノンとトレチノインを併用する際は、以下の順序に沿って使用しましょう。
- メイクを落とす
- 化粧水を肌になじませる
- 適量のトレチノインを指先に取り、シミが気になる箇所へ塗布する
- 2分〜3分経過し、トレチノインが乾いたことを確認してから、ハイドロキノンをシミが気になる箇所の周辺→シミが気になる箇所の順に塗布する
- 美容液や保湿クリームを塗布する
なお、トレチノインもハイドロキノン同様、3カ月の使用期間が推奨されています。長期間使用すると、肌トラブルの原因となるので、使用期間はしっかり守りましょう。
4.ハイドロキノンの副作用と対処法
シミ改善に働きかけてくれるハイドロキノンですが、副作用のリスクがあることでも知られています。安全性を高め、リスクを最小限に抑えるためにも、副作用の症状と対処法について理解しましょう。
1)紅斑や接触皮膚炎
ハイドロキノンの使用で、真皮層の血管が充血して生じる紅斑や、特定の物資へのアレルギー反応で生じる接触皮膚炎を引き起こすことがあります。
ハイドロキノン使用後に、かゆみや赤みなどの症状が見られた場合は、すぐに使用を中止して皮膚科を受診しましょう。
なお、ハイドロキノンをはじめて使用する方は、紅斑や接触皮膚炎を発症しやすい傾向にあります。少量の使用から開始し、徐々に使用量を増やしていくようにしましょう。
2)白斑
長期に渡りハイドロキノンを使用していると、肌のメラニン色素生成の働きが低下して肌の色素が部分的抜け、白斑を引き起こす恐れがあります。ハイドロキノンを使用する場合は、医師から指示を受けた期間のみ使用しましょう。
もしも白斑が生じた場合は、次の方法で治療します。
- ステロイド外用療の使用
- 活性型ビタミンD3外用薬の使用
- タクロリムス軟膏の使用
- PUVA療法
- ナローバンドUVB照射療法
白斑と思われる症状が見られたら、使用を中止して皮膚科を受診しましょう。
<参考記事>
紫外線治療とは?アトピー性皮膚炎など皮膚の病気に有効な光線療法
3)ハイドロキノンによるがんのリスク
海外で実施された動物実験の結果、濃度5%のハイドロキノンには発がん性リスクがあると疑われています。
しかし、皮膚科で処方するハイドロキノンの場合は、肌の状態に適した濃度で調剤されているので、発がんリスクは低いとされています。
安全性を確保するためにも、用法・用量を守って使用しましょう。
4)その他の副作用
ハイドロキノンの強い作用により、肌にヒリヒリとした痛みが生じるなどの違和感を覚える恐れがあります。肌に違和感を覚えた場合は、使用を中止して患部を冷やしましょう。
数日経過しても症状が落ち着かない場合は、アレルギー反応を起こしている恐れがあるので、皮膚科の受診をおすすめします。
5.ハイドロキノンの使い方
ハイドロキノンにはシミを改善して美白作用を促す反面、正しい方法で使用しなければ、肌に強いダメージを与える副作用があります。
ハイドロキノンの正しい使い方についてご紹介します。
1)医師に処方してもらおう
ハイドロキノンのリスクをできるだけ抑え、ハイドロキノンが本来持つ働きを高めるためには、皮膚科で医師から処方してもらいましょう。皮膚科では、診察時に肌の状態を確認した上で、ハイドロキノン濃度を調整して処方するので、かぶれや赤み、肌の一部が白くなる症状(白斑)などの肌トラブルを避けながら使用できます。
また、ハイドロキノンが肌に適していなかった場合でも、医師からの処方箋であれば、適切な処置を受けられます。
2)使用期間は?
ハイドロキノンを長期間使い続けていると、紫外線による色素沈着を助長する恐れがあります。また、継続的に使用すると思ったような作用が得られにくくなるので、多くのクリニックが使用期間の目安を3カ月と設定しています。3ヶ月以上使用する場合は医師と相談の上、使用することになります。
3)紫外線対策して使おう
ハイドロキノン製剤を使用後の肌は、紫外線によるダメージを受けやすい状態です。ハイドロキノン製剤を使用した場合は、肌の炎症を防ぐためにも必ず日焼け止めクリームなどで紫外線対策を行いましょう。
<参考記事>
紫外線対策こそエイジングケア!日焼けダメージの肌老化を防ぐ対策
6.ハイドロキノンに関するよくある質問
Q1.ハイドロキノンの皮膚科での効果は何ですか?
ハイドロキノンの効果は、新しくシミができるのを防ぐこととすでにできているシミを薄くするという2つに大別されます。
皮膚科で処方されるハイドロキノンも同じです。
Q2.ハイドロキノンはずっと続けて使えますか?
ハイドロキノンをずっと続けて使用すると耐性ができてしまい、効果が得られなくなる場合があります。
そのため、長く使う場合は医師と相談して適切な投薬期間と休薬期間を設定することが望ましい使い方です。
Q3.ハイドロキノンだけを使っても効果ありますか?
ハイドロキノンは単体でも十分に美白効果を発揮しますが、化粧品やトレチノインとの併用でより効果が高まります。
保湿化粧品でターンオーバーを整えることで、シミの改善効果が高まることが期待できます。
Q4.ハイドロキノンはどれくらいで効果が出る?
ハイドロキノンは、使用後約3ヶ月でシミが薄くなります。
ハイドロキノンだけで、シミが完全には消えることは少ないですが、他の外用薬よりは高い効果が期待できます。
Q5.ハイドロキノンは毛穴にどんな効果があるのですか?
ハイドロキノンは、色素沈着が原因のメラニン毛穴の改善が期待できます。
しかし、乾燥が原因の毛穴やすり鉢毛穴、たるみ毛穴などには効果は期待できません。
7.まとめ
ハイドロキノンの働きや副作用についてご紹介しました。
ハイドロキノンは21世紀のはじめから、化粧品成分として使われるとともに、シミやニキビ跡などの治療に用いられてきました。メラニン色素の生成を抑えることで、肌へ美白作用をもたらしますが、刺激も強いため副作用に注意が必要です。使用の際は十分な理解とともに、皮膚科医など医師の指導の下に使うことをおすすめします。
本記事「医師監修|ハイドロキノンは美白効果と安全性を考えて使おう!」が、ナールス美容医療アカデミー読者さまのお役に立てれば幸いです。
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