巻き爪にはセルフケア・矯正・手術など複数の治療法があり、それぞれにメリットと限界があります。本記事では、形成外科専門医・簗由一郎先生へのインタビューを通じて、巻き爪の原因から治療の選び方、再発を防ぐ考え方までをわかりやすく解説します。

巻き爪(陥入爪)の治療は、保険診療と自費診療が混在しているため、多くの患者さまが「どの治療が自分に合っているのか分からない」と悩まれている印象があります。
例えば、痛みを和らげるワイヤー矯正は有効な方法の一つですが、保険は適用されません。一方で、爪の根本にアプローチする手術は、健康保険を使って受けることができます。
このように、治療法によって特徴や費用が大きく異なりますので、まずはそれぞれの違いを正しく理解することが大切だと考えています。そのうえで、ご自身の症状や生活スタイルに合わせて、適切な治療を選んでいただきたいですね。
巻き爪は「とりあえず治療すれば治る」と思われがちですが、実際には原因や状態によって最適な治療法が異なる疾患です。
矯正治療で改善するケースもあれば、再発を繰り返すケース、さらには手術が適しているケースも存在します。しかし現実には、治療法の違いや限界について十分に理解されていないことも多く、結果として「治療を続けても良くならない」「費用や通院の負担が大きい」と悩む患者さんも少なくありません。
今回は、埼玉医科大学 形成外科専門医であり、巻き爪治療に特化した情報発信を行う簗由一郎先生にインタビューさせていただきました。
巻き爪の原因・症状から、矯正と手術の違い、そして患者さんが本当に知るべき「治療の選び方」について詳しくお話を伺いました。
巻き爪とは?症状と放置リスク

1)巻き爪・陥入爪の違い

「巻き爪」と「陥入爪」は混同されがちですが、厳密には異なる状態を指します。
巻き爪は、爪が内側に丸く湾曲していく形状の変化を意味します。一方、陥入爪は爪の端が皮膚に食い込み、炎症や痛みを引き起こしている状態を指します。
つまり、巻き爪は「形の問題」、陥入爪は「症状(炎症・痛み)の問題」と整理できます【1】。巻き爪が進行すると陥入爪へ移行することが多く、両者は関連した病態として理解することも重要です。
2)主な症状(痛み・炎症・肉芽)

陥入爪(巻き爪)では、以下のような症状がみられます。
・歩行時や靴の圧迫による痛み
・爪の周囲の赤みや腫れ(炎症)
・細菌感染による膿(化膿)
・慢性化した場合の肉芽(赤く盛り上がる組織)の形成
初期は「押すと痛い」「靴に当たると違和感がある」といった軽い症状ですが、進行すると安静時でも痛みが出ることがあります。肉芽が形成されると出血しやすくなり、日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。
3)放置するとどうなるか(悪化・感染)

陥入爪(巻き爪)を放置すると、症状は徐々に悪化していきます。
・炎症の慢性化(腫れや痛みの持続)
・感染の拡大(膿・強い痛み)
・肉芽の増大(出血・治りにくさ)
・歩行障害(かばう歩き方による負担増加)
特に注意が必要なのは、感染が進行するケースです。糖尿病など基礎疾患のある方では、重症化するリスクもあります。
また、「痛い部分だけ爪を切る」といった自己処置は一時的な改善にとどまり、かえって再発や悪化を招くことが多いため注意が必要です。
巻き爪は軽症のうちに適切な対処を行うことで、負担を抑えながら改善できる可能性があります。早めに状態を正しく評価し、適切な治療を選択することが重要です。
巻き爪の原因|なぜ再発するのか

1)深爪・靴・生活習慣
巻き爪の発症には、日常生活の中のささいな習慣が大きく関わっています。
特に多いのが「深爪」です。爪を短く切りすぎると、皮膚が爪の上にかぶさり、爪が内側へ巻き込みやすくなります。
また、先の細い靴やサイズの合わない靴は、つま先に持続的な圧迫をかけ、爪の変形を引き起こします【2】。
さらに、長時間の立ち仕事やスポーツなども足への負担を増やし、巻き爪の進行に関与することがあります。これらは比較的修正可能な要因であり、見直しが重要です。
2)骨格・歩き方・荷重バランス
巻き爪の背景には「改善しづらい要因」も存在します。
代表的なのが生まれ持った性質に影響される骨格や歩き方、足への荷重バランスです。
例えば、足のアーチ構造の崩れ(扁平足など)や外反母趾があると、特定の指に過度な力がかかり、爪が変形しやすくなります。また、歩行時の体重のかけ方に偏りがある場合も、同様に巻き爪の原因となります【2】。
これらはインソールや歩行指導で改善を目指すことは可能ですが、完全にコントロールすることが難しいケースも少なくありません。
3)再発が多い本当の理由
巻き爪が再発しやすい最大の理由は、「原因となる力のかかり方が変わっていない」ことにあります。
矯正治療によって一時的に爪の形を整えても、歩き方や靴、骨格などの条件が同じであれば、再び同じ方向に力が加わり、爪は再び巻いてしまいます。
つまり、巻き爪は「形を直すだけでは不十分」であり、「なぜその形になったのか」を理解することが重要です。
このため、巻き爪治療では
・一時的な改善(矯正)
・原因へのアプローチ(環境改善)
・根本的な対処(手術)
といった複数の視点を組み合わせて考える必要があります。ここを理解していないと、「治療したのにまた再発した」という結果につながりやすくなります。
巻き爪の治療法は3つある
巻き爪治療には、セルフケア・矯正・手術といった複数の選択肢があり、状態に応じて適切に選択することが重要です【1】。
ここではそのポイントを解説します。
1)セルフケア(テーピングなど)

<らせん状にテーピングを巻きつけ陥入改善する方法>
軽度の巻き爪であれば、まずはセルフケアから始めることが可能です。
代表的な方法として、テーピングで皮膚を外側に引っ張り、爪の食い込みを軽減する方法や、コットンを爪の端に挟む方法があり、これらで改善することもあります【3】。
また、爪の切り方も重要で、角を丸く切るのではなく「スクエアカット(四角く切る)」が基本です。
ただし、セルフケアはあくまで初期対応であり、炎症や強い痛みがある場合には無理をせず、医療機関での評価が必要です。
2)矯正治療(器具・サロン・医療)
巻き爪の形を改善する治療として広く行われているのが矯正治療です。
ワイヤー法やプレート法、クリップ式などさまざまな器具があり、爪に適度な力をかけて徐々に平らにしていきます。医療機関だけでなく、専門サロンなどでも行われています。
メリットは、比較的痛みが少なく、日常生活への影響が少ない点です。一方で、多くは保険適用外であり、複数回の通院や継続的なケアが必要になることがあります。
また、原因となる足の環境が変わらない場合、再発する可能性がある点も理解しておく必要があります。

なお、通院前にまず試せる選択肢として、市販の矯正器具があります。簗由一郎先生が開発に携わった「ネイル・エイド」はクリップ式で扱いやすく、自宅でのセルフ矯正が可能です。初期〜中等度の巻き爪であれば、こうした市販器具から始めることで、通院や費用の負担を軽減できる場合があります。

3)手術治療(爪母処置)

巻き爪の根本的な治療として行われるのが手術治療です。
単に食い込んでいる部分の爪を切るだけでは再発しやすいため、通常は「爪母(そうぼ)」と呼ばれる爪を作る組織の一部に処置を行い、爪の幅を狭くする方法が取られます【4】。
この方法により、食い込みの原因となる爪の端が生えなくなるため、再発リスクを大きく下げることが期待できます。
手術は健康保険が適用される場合が多く、特に再発を繰り返すケースや重度の巻き爪では有効な選択肢となります。ただし、処置後のダウンタイムや術後ケアが必要となるため、十分な説明を受けたうえで選択することが重要です。
巻き爪治療は「どれが正解か」ではなく、状態に応じて段階的に選択することが重要です。
【インタビュー】簗由一郎先生が考える巻き爪治療の本質

1) 巻き爪患者はなぜ多いのか
――日々の診療や情報発信を通じて、巻き爪に悩む方は多いでしょうか。
巻き爪で悩んでいる方は、全国に非常に多いと感じています。痛みがあっても「爪のことだから」と我慢している方や、どこに相談すればよいのか分からず、自己処置を続けている方も少なくありません。
巻き爪は、深爪や靴の圧迫だけでなく、足の骨格、歩き方、荷重バランスなども関係します。そのため、年齢や性別を問わず起こり得る身近なトラブルです。
一方で、正しい情報にたどり着けていない患者さまも多く、治療の選択肢を知らないまま悩み続けているケースもあります。まずは「巻き爪は適切に治療できる疾患である」と知っていただくことが大切だと思います。
2) 治療法が広がる一方で起きている問題
――巻き爪矯正など治療の選択肢に関してどうお考えでしょうか。
以前は、病院で爪を切る処置や外科的治療が中心でしたが、現在はワイヤー矯正、プレート矯正、クリップ式器具、サロンでの矯正など、選択肢が広がっています。
これは患者さまにとって良いことです。痛みが少なく、日常生活への影響を抑えながら治療できる方法が増えたからです。
ただし、選択肢が増えたことで、かえって「どれを選べばよいのか分からない」という問題も起きています。特に巻き爪治療は、保険診療と自費診療が混在しています。矯正治療の多くは自費診療で、手術は保険適用となります。
費用、通院回数、再発リスク、治療の目的を理解しないまま始めてしまうと、「思ったより費用がかかった」「何度も再発した」「自分には合っていなかった」と感じることがあります。
3) 患者が知らない「矯正治療の限界」
――矯正治療について、患者さんが知っておくべきことは何でしょうか?
矯正治療は、巻いている爪の形を改善し、痛みを和らげる有効な方法です。手術に比べて体への負担が少なく、まず試す治療としては非常に良い選択肢だと思います。
ただし、矯正治療は万能ではありません。爪の形を一時的に整えることはできますが、巻き爪になった原因が残っていれば再発することがあります。たとえば、足の骨格や歩き方、靴の圧迫、荷重バランスが変わらなければ、爪は再び同じ方向に巻いてしまう可能性があります。
また、矯正治療は保険適用外となることが多く、複数回の通院が必要になる場合もあります。再発すれば、そのたびに費用や時間の負担がかかります。
だからこそ、患者さまには「矯正が悪い」「手術が良い」という単純な話ではなく、それぞれの治療の役割と限界を理解してほしいと思っています。軽度から中等度では矯正治療が合う方もいますし、再発を繰り返す場合には爪母を処理する手術のほうが適していることもあります。
大切なのは、自分の巻き爪がどの段階にあるのか、何を目的に治療するのかを理解したうえで選択することです。患者さまが正しい情報をもとに、ご自身に合った治療を選べることが、巻き爪治療で最も重要だと考えています。
矯正治療のメリット・デメリット
1)メリット(低侵襲・手軽)
矯正治療の最大のメリットは、体への負担が少ないことです。
ワイヤー法やプレート法、クリップ式器具などを用いて、爪に徐々に力をかけることで形状を改善していきます。
多くの場合、麻酔や切開を必要とせず、日常生活への影響も比較的少ないため、「まず試してみる治療」として適しています。痛みの軽減が早期に得られるケースも多く、外見的な改善も期待できます。
また、通院だけでなく市販の器具を用いたセルフケアが可能な点も、患者さんにとっての利点です。
2)デメリット(再発・費用・継続)
一方で、矯正治療にはいくつかの限界もあります。
まず重要なのは「再発の可能性」です。矯正は爪の形を一時的に整える治療であり、原因となる足の環境や力のかかり方が変わらなければ、再び巻いてしまうことがあります【5】。
また、多くの矯正治療は保険適用外であり、複数回の通院が必要になるため、費用負担が大きくなる場合があります。再発すれば、同様の治療を繰り返すことになり、結果として長期的なコストが増えることもあります。
さらに、治療には一定期間の継続が必要であり、途中でやめてしまうと十分な効果が得られないこともあります。
3)向いている患者さま
矯正治療は、すべての巻き爪に適しているわけではありません。軽度〜中等度で炎症が強くない場合に、矯正治療を検討することが一般的です【5】。
以下のようなケースで特に有効と考えられます。
・軽度〜中等度の巻き爪
・強い炎症や感染がない状態
・まずは手術以外の方法で改善を試したい方
・日常生活への影響をできるだけ抑えたい方
一方で、再発を繰り返している場合や、強い痛み・炎症・肉芽を伴うケースでは、矯正だけでは十分な改善が得られないこともあります。その場合は、外科的治療を含めた検討が必要です。
矯正治療は「優れた選択肢の一つ」ですが、万能ではないことを理解したうえで選ぶことが重要です。
手術治療のメリット・デメリット

1)爪母処理とは何か
巻き爪の手術は「食い込んでいる部分の爪を切るだけ」と思われがちですが、実際には爪母(そうぼ)=爪を作る組織に処置を行う点が重要です【6】。
代表的には、爪の端を部分的に切除し、その部分の爪母に薬剤(フェノールなど)や外科的処置を加えて、食い込みの原因となる爪が再び生えないようにする方法が取られます。
このように、原因そのものにアプローチする点が、単なる爪切りや応急処置との大きな違いです。
2)メリットは再発リスクの低さ
巻き爪に対する手術治療は、再発リスクを大きく低減できる方法とされています【4】【7】。
矯正治療が「爪の形を整える治療」であるのに対し、手術は「原因そのものにアプローチする治療」であるため、再発を繰り返すケースや重度の巻き爪では特に有効です。
また、多くの場合は健康保険が適用されるため、長期的に見ると費用面での負担が抑えられるケースもあります。
ただし、すべての症例で再発がゼロになるわけではなく、術式や個人差による影響があることも理解しておく必要があります。
3)手術治療のデメリット
手術治療にもいくつかのデメリットがあります。
・処置後の痛みや創部のケアが必要
・数日〜1週間程度の安静や生活制限が必要になる場合がある
・爪の幅が狭くなるため、見た目が変化する(ただし、多くの場合は日常生活や外見上の問題となることは少なく、過度に心配する必要はありません)
・まれに感染や創傷治癒の遅れが起こる可能性がある
また、「爪を細くする治療」であるため、完全に元の形に戻す治療ではないという点も理解しておく必要があります。
このため、手術はすべての患者に必要なわけではなく、再発を繰り返す場合や重症例に適した治療として位置づけることが重要です。
4)手術への誤解
巻き爪手術に対して、「怖い」「再発する」「大がかりな治療」といったイメージを持つ方は少なくありません。
しかし、その多くは「爪を切るだけの処置」と「爪母処理を伴う手術」が混同されていることによる誤解です【8】。単に爪を切るだけでは再発しやすいのに対し、適切な手術では再発リスクを大きく下げることが期待できます。
また、現在の手術は局所麻酔で行われることが多く、処置時間も比較的短時間で済むケースが一般的です。術後の痛みやケアは必要ですが、過度に恐れる必要はありません。
大切なのは、「怖いから避ける」のではなく、正しい情報をもとに、必要な場合に適切に選択することです。
手術治療は最終手段ではなく、「適応が合えば有効な選択肢の一つ」と理解することが重要です。
簗由一郎先生が考える理想的な治療の流れ(簗先生の提案)

1)セルフケア
――巻き爪治療では最初に行うべきことは何でしょうか?
軽度の巻き爪であれば、まずはセルフケアから始めるのが基本です。テーピングやコットンによる保護、爪の切り方の見直しなどで、症状が改善することもあります。
この段階で重要なのは、「無理をしないこと」です。痛みや炎症が強い場合はセルフケアにこだわらず、早めに医療機関での評価を受けることが大切です。
2)矯正
――セルフケアで改善しない場合はどうなりますか?
次のステップとして、矯正治療を検討します。爪の形を整え、痛みを軽減する方法であり、身体への負担が少ないため多くの方にとって取り組みやすい治療です。
特に、まだ重症化していない段階であれば、矯正によって十分に改善が得られるケースもあります。まずはこの段階で改善を目指すことが合理的だと考えています。

また、矯正と並行して「再発予防」の取り組みも重要です。巻き爪の原因が骨格や歩き方にある場合は、オーダーメイドのインソール作成や歩行指導によって、再発リスクを下げることを目指します。ただし、先天的な骨格や長年の歩行習慣を完全にコントロールすることは難しいケースも多く、この点については医師と十分に相談することをお勧めします。
3)手術
――それでも改善しない場合はどうでしょうか?
矯正治療でも改善が得られない場合や、再発を繰り返す場合には、手術治療を検討する段階になります【4】。
爪母に処置を行うことで、食い込みの原因そのものにアプローチするため、再発リスクを大きく下げることが期待できます。
「手術=最後の手段」と考えられがちですが、適応がある場合には早めに選択したほうが、結果的に患者さんの負担が少なくなるケースもあります。
巻き爪治療は、
「いきなり手術」でも「矯正だけ」でもなく、段階的に考えることが重要です。
なぜ「正しい理解」が最も重要なのか(患者さんへのメッセージ)
1)治療を選ぶのは患者自身
――患者さんに伝えたいことは何でしょうか?
最終的に治療を選択するのは患者さんご自身です。医師は情報や選択肢を提示しますが、「どの治療を選ぶか」は生活スタイルや価値観によって変わります。
だからこそ、まずはそれぞれの治療法の特徴やメリット・デメリットを理解することが重要です。
2)情報不足によるミスマッチ
現在は情報が多い一方で、正確な情報にたどり着くことが難しい状況もあります。
その結果、「矯正なら必ず治ると思っていた」「費用や通院回数を知らずに始めてしまった」「手術は怖いから避けていた」といったミスマッチが起きています。
巻き爪治療は、保険診療と自費診療が混在しているため、なおさら注意が必要です。
巻き爪治療では、症状の程度に応じた適切な治療選択が重要とされています【5】。
正しい理解がないまま治療を続けると、
・再発を繰り返す
・費用や時間の負担が増える
・適切な治療のタイミングを逃す
といったリスクにつながります。
私が巻き爪の専門医として強調するのは、
「どの治療が良いか」ではなく、「自分に合った治療を理解して選ぶこと」です。
巻き爪は適切に向き合えば改善が期待できる疾患です。だからこそ、正しい情報をもとに、ご自身に合った選択をしていただきたいというのが私の想いです。
巻き爪に関するよくある質問
Q1. 巻き爪は自然に治りますか?
巻き爪は自然に改善することは少なく、多くの場合は進行していきます。軽度であればテーピングや爪の切り方の改善で症状が緩和することもありますが、根本的な原因(骨格・歩き方・圧力)が変わらない限り、再発する可能性があります。早期の対処が重要です。
Q2. 巻き爪の矯正治療は本当に効果がありますか?
矯正治療は、爪の形状を改善し痛みを軽減する効果が期待できます。特に軽度〜中等度の巻き爪では有効です。ただし、原因となる足の環境が変わらない場合は再発することがあり、継続的な管理が必要になることもあります。
Q3. 巻き爪はなぜ再発しやすいのですか?
巻き爪は、靴・歩行・骨格などによる「力のかかり方」が大きく関与しています。矯正治療で一時的に形を整えても、同じ環境であれば再び巻いてしまうことがあります。このため、再発予防には生活習慣や足の環境の見直しが重要です。
Q4. 手術をすれば巻き爪は完全に治りますか?
手術では、爪を作る組織(爪母)に処置を行うことで、食い込みの原因となる部分の爪が生えないようにします。これにより再発リスクは大きく低下します。ただし、すべてのケースで完全に再発しないとは限らず、術式や個人差による影響もあります。
Q5. 矯正と手術はどちらを選ぶべきですか?
軽度〜中等度であれば矯正治療から始めることが一般的です。一方で、再発を繰り返す場合や重度の巻き爪では手術が適していることもあります。症状や生活状況に応じて、医師と相談しながら選択することが重要です。
Q6. 市販の巻き爪矯正器具は効果がありますか?
市販の矯正器具でも、適切に使用すれば一定の効果が期待できます。特に初期〜中等度の巻き爪では、痛みの軽減や爪形状の改善が見込まれます。ただし、誤った使用や重度の巻き爪では十分な効果が得られない場合もあるため、症状に応じた判断が重要です。
また、簗由一郎先生が開発に携わった「ネイル・エイド」という器具もあります。クリップ式で扱いやすく、従来のワイヤー法と比較して器具の加工や爪への侵襲を加えず、短時間で装着できる点が特徴です。さらに、取り外した器具を繰り返し使用できるため、患者さんの費用負担や通院負担の軽減にもつながります。
ただし、痛みや炎症を伴う場合や自己処置が難しい場合には、医療機関での診察を受けることが推奨されます。
Q7. 巻き爪はどの診療科を受診すればよいですか?
巻き爪は主に皮膚科または形成外科で対応されています。特に手術や外科的な処置を検討する場合は、形成外科専門医のいる医療機関を受診することが望ましいです。
Q8. 巻き爪を予防する方法はありますか?

正しい爪の切り方(スクエアカット)、足に合った靴やインソールの選択、適切な歩行が重要です。ただし、骨格や体質による影響もあるため、完全に予防することが難しいケースもあります。
まとめ|巻き爪治療で後悔しないために
巻き爪治療には、セルフケア・矯正治療・手術といった複数の選択肢があり、それぞれに役割と限界があります。
軽度であればセルフケアや矯正治療で改善が期待できますが、原因となる足の環境が変わらなければ再発する可能性があります。一方で、手術は爪母にアプローチすることで再発リスクを大きく低減できる方法ですが、すべてのケースで必要というわけではありません。
大切なのは、「どの治療が正しいか」ではなく、自分の状態に合った治療を選ぶことです。
簗由一郎先生が強調するのは、以下の3点です。
・治療は1つではなく、段階的に考えることが重要
・矯正治療は有効だが、再発リスクがあることを理解する
・手術は最終手段ではなく、適応があれば有効な選択肢
巻き爪は、正しい知識をもって向き合えば改善が期待できる疾患です。
だからこそ、情報に振り回されるのではなく、医師と相談しながら、自分にとって納得できる治療を選択していくことが、後悔しないための最も重要なポイントといえるでしょう。
参考文献
本記事の科学的根拠として、以下の査読済み論文・臨床試験を参照しています。
【1】Baran R. Ingrown toenails: a clinical review. J Am Acad Dermatol. 2008.
PMID: 18325663 DOI: 10.1016/j.jaad.2008.01.012
日本語要旨:巻き爪(陥入爪)の原因、分類、症状から保存療法・外科治療までを体系的に整理した総説。靴や爪切り、力学的負荷が関与し、重症度に応じた段階的治療の重要性を示している。
【2】Martinez-Nova A, Sánchez-Rodríguez R, Alonso-Peña D. A new onychocryptosis classification and treatment plan. Foot Ankle Surg. 2007.
PMID: 19925612 DOI: 10.1016/j.fas.2007.02.002
日本語要旨:巻き爪の新しい分類と治療アルゴリズムを提案した研究。重症度に応じて保存療法から外科治療まで適切に選択する重要性を示し、臨床判断の指針となる内容を提示している。
【3】Heidelbaugh JJ, Lee H. Management of the ingrown toenail. Am Fam Physician. 2009.
PMID: 19235497
日本語要旨:巻き爪の診断から保存療法(テーピング・爪切り)および外科治療まで、プライマリケアでの実践的な対応方法をまとめたレビュー。日常診療での管理指針として有用。
【4】Rounding C, Bloomfield S. Surgical treatments for ingrowing toenails. Cochrane Database Syst Rev. 2005.
PMID: 15846620 DOI: 10.1002/14651858.CD001541.pub2
日本語要旨:巻き爪に対する外科的治療(部分切除・フェノール法など)の有効性と再発率を比較したシステマティックレビュー。爪母処理の有効性と再発低減効果を示している。
【5】Eekhof JAH, Van Wijk B, Knuistingh Neven A, et al. Interventions for ingrowing toenails. Cochrane Database Syst Rev. 2012.
PMID: 22513901
日本語要旨:巻き爪に対する保存療法と外科治療の効果を比較し、症状の程度に応じた治療選択の重要性を示したレビュー。患者背景に応じた適切な治療戦略を提案している。
【6】de Berker D. Nail surgery. Br J Dermatol. 2004.
PMID: 15009274 DOI: 10.1111/j.1365-2133.2004.05766.x
日本語要旨:爪手術の基本原理と手技を解説したレビュー。爪母の解剖や処置の意義を示し、巻き爪治療における外科的アプローチの理論的基盤を提示している。
【7】Kim SH, Ko HC, Oh CK, et al. Treatment of ingrown toenail with proximolateral matrix partial excision and matrix phenolization. J Am Acad Dermatol. 2012.
PMID: 22017902 DOI: 10.1016/j.jaad.2011.06.032
日本語要旨:フェノール法を用いた爪母処理の臨床成績を検討した研究。再発率が低く、有効性と安全性が高い治療法であることを示した臨床エビデンス。
【8】Heifetz CJ. Operative management of ingrown toenail. Mo Med. 1945.
PMID: 21007315
日本語要旨:巻き爪に対する外科的治療の基本概念を示した古典論文。爪母処理の重要性を提唱し、現在の手術治療の基盤となる考え方を示している。
本記事で使用している写真・図表は全て簗由一郎先生にご提供いただきました。
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