| 本治療は自由診療であり、症状や疾患によっては適応外のケースがあります。 効果は個人差があり保証できません。 学術論文は、必ずしも治療効果を保証するものではありません。 本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。 治療の適応については医師にご相談ください。 |
| 執筆:ナールス美容医療アカデミー編集長 富本充昭 |
変形性膝関節症をはじめとする整形外科疾患では、従来、膝等の痛みを抑える治療方法として、鎮痛剤の処方やヒアルロン酸注射による「保存療法」、関節を人工関節に置き換える「手術療法」が主なものでした。
その後、2022年12月に、2つの治療の間に位置する新しい治療方法として、血液の自己修復機能を最大限に生かした「PDF-FD (C-PRP)療法」が開発されました。PDF-FD 療法は、今では患者様にとって新しい選択肢として普及しつつあります。
PDF-FD療法は、患者自身の血液から得られる血小板由来成長因子を細胞成分から分離し、凍結乾燥することで安定性と再現性を高めた治療法です。PRP療法の発展形ともいえるこの治療は、炎症制御や組織修復を補助する目的で整形外科領域への応用が進められています。
一方で、「本当に効果があるのか」「変形性膝関節症にどこまで有効なのか」「安全性は確立されているのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、PDF-FD療法に関する整形外科領域の疾患である変形性膝関節症や腱/靭帯・スポーツ障害の治療効果や臨床エビデンス、安全性、適応の考え方を客観的に整理し、治療選択の参考となる情報をお伝えします。
PDF-FD(C-PRP)療法の整形外科領域の位置づけ

1)PDF-FD療法とは?
PDF-FD療法は、Plasma Derived Factors – Freeze Driedの略称で、患者様自身の血液から得られる血漿由来成長因子を活用した治療法です。
PDF-FD療法では、血液から血小板や白血球といった細胞成分を除去(Cell Free)したうえで、成長因子を抽出・濃縮します。
そのため、従来のPRP療法と比べて、炎症反応を引き起こす可能性のある細胞成分の影響を抑えやすい点が特徴です。
PDF-FD療法は、整形外科領域において軟骨や腱・靭帯を「再生させる」ことを目的とする治療ではなく、慢性炎症の制御や、組織修復が起こりやすい環境を整える治療として位置づけられています。
2)成長因子治療としての位置づけ

成長因子とは、細胞の成長や増殖を促す様々なタンパク質の総称です。全部で1万以上もの種類があります。血小板には、PDGF、TGF-β、VEGF など、炎症制御や組織修復に関与する複数の成長因子が含まれています。
これらを利用する治療は一般に「成長因子治療」と位置づけられます。
成長因子には、主に次の3つの効果があります。
- 炎症(腫れや痛み)を抑える効果」

- 傷んだ組織の修復効果

- 軟骨を保護、悪化の予防の効果

3)PRP療法との違い(液体PRP vs 凍結乾燥C-PRP)
PRP(Plasma-Rich Plasma)療法は、採血後に遠心分離を行い、血小板を多く含む血漿を液体のまま当日中に注射する治療法です。

一方、PDF-FD(C-PRP)療法では、PRPからさらに成長因子を中心とした成分を抽出し、凍結乾燥(フリーズドライ)する工程を加えています。

この違いにより、PDF-FD療法には以下のような特性があります。
- 成分のばらつきを抑えやすく、再現性を高めやすい
- 保存が可能なため、治療計画を立てやすい
- 採血と注射を同日に行う必要がなく、患者負担を調整しやすい
整形外科治療では、症状や経過を見ながら段階的に治療を行うことが多いため、計画的に使用できる点はPDF-FD療法の大きな特徴といえます【1】【2】。
4)再生医療との関係
PDF-FD(C-PRP)療法は、成長因子を用いて組織環境の改善を目指す点から、「再生医療的アプローチ」と表現されることがあります。しかし、細胞そのものを体内に投与する治療ではありません。
そのため、日本の法制度上、PDF-FD療法は再生医療等安全性確保法の対象となる再生医療には該当しません。
あくまで、自己血由来成分を用いた成長因子治療として位置づけられます。
これは治療の有効性や安全性の優劣を示すものではなく、治療の性質と法的な分類の違いです。整形外科領域においては、この点を正しく理解したうえで、保存療法の一選択肢として検討されることが重要です。
<参考記事>
PDF-FD(C-PRP)療法とは?効果・安全性・適応疾患をエビデンスで検証
なぜ整形外科疾患にPDF-FD療法が使われるのか

1)整形外科疾患に共通する病態:慢性炎症と修復不全
変形性膝関節症や腱・靭帯障害といった整形外科疾患の多くは、「加齢」や「使いすぎ」だけでなく、慢性的な炎症と組織修復力の低下が背景にあります。
たとえば変形性膝関節症では、軟骨の摩耗だけでなく、滑膜炎や関節内の炎症性サイトカインの持続的な産生が、痛みや可動域制限を長期化させる要因となります。
腱・靭帯障害においても、微細損傷が十分に修復されない状態が続くことで、慢性疼痛や機能低下につながることが知られています。
こうした状態では、整形外科における標準的な保険診療である鎮痛薬やヒアルロン酸注射だけでは十分な改善が得られないケースがあります。
そんな場合には、小さな侵襲で炎症を抑えつつ、修復が起こりやすい環境を整える治療が求められます。
そんな治療が、PRP療法や今回のテーマであるPDF-FD療法です。
2)血漿由来成長因子の役割

血小板には、PDGF(血小板由来成長因子)や TGF-β、VEGF など、組織修復や血管新生、炎症調整に関与する複数の成長因子が含まれています。
これらの成長因子は、次のような作用を通じて、組織が回復しやすい状態を支える役割を果たします。
- 炎症反応の調整
- 組織修復に関わる細胞の活性化
- 血流環境の改善
PDF-FD(C-PRP)療法は、こうした成長因子の働きを利用し、整形外科疾患における症状改善を補助する目的で用いられています。
ただし、これらの作用は主に炎症や修復環境の調整に関するものであり、損傷した軟骨や腱を完全に再生させる治療ではありません。
3)PDF-FD療法が整形外科で注目される理由
整形外科領域では、症状の進行度や患者の年齢、生活背景によって、「すぐに手術を行うべきではないが、保存療法だけでは不十分」という状況が少なくありません。
PDF-FD療法は、次のようなケースにおいて、治療の選択肢を広げる補助的アプローチとして検討されています。
- 手術を回避または先送りしたい場合
- 保存療法の効果が限定的な場合
- 慢性炎症が関与していると考えられる場合
重要なのは、PDF-FD療法を「万能な治療」と捉えるのではなく、整形外科治療の流れの中で、どの段階に適しているかを見極めることです。
適切な症例選択と説明のもとで用いることで、治療戦略の一部として位置づけることが可能になります。
なお、PDF-FD療法は保険適応のない自由診療です。
PDF-FD療法の特徴・メリット

PDF-FD(C-PRP)療法は、従来のPRP療法を基盤としながら、整形外科診療で求められる再現性・計画性・安全性を高めた治療法です。以下では、整形外科領域における主な特徴とメリットを整理します。
1)成分の安定性と再現性が高い
PDF-FD療法では、自分自身の血漿由来成長因子を抽出した後、凍結乾燥(フリーズドライ)を行います。
この工程により、オーダーメイド治療でありながら、成分の劣化やばらつきが抑えられ、治療ごとの成分差が小さくなる点が特徴です。
整形外科では、症状の経過を見ながら治療を繰り返すケースも多く、再現性の高さは大きな利点といえます。
2)保存性が高く、治療計画を立てやすい
液体PRP療法では、採血と注射を同日に行う必要がありますが、PDF-FD療法では製剤を約6か月間も保存できるため、採血と投与のタイミングを分けることが可能です。
これにより、症状や生活状況に合わせた計画的な治療設計が行いやすくなります。
3)自己血由来による高い安全性
PDF-FD療法は患者自身の血液を用いる治療であり、アレルギー反応や免疫学的拒絶反応のリスクが極めて低いと考えられています。
また、細胞成分を除去したCell Free製剤であるため、過剰な炎症反応が起こりにくい点も整形外科領域で評価されています。
4)他の保存療法との併用がしやすい
PDF-FD療法は、ヒアルロン酸注射、リハビリテーション、運動療法などと併用しやすい治療です。
単独で完結する治療ではなく、保存療法全体の中で治療の幅を広げる補助的アプローチとして位置づけることができます。
5)効果の持続期間が長い
効果の持続期間には個人差がありますが、臨床現場では数か月から1年程度、またはそれ以上持続する例が報告されています。ただし、長期効果については、今後さらなる検討が必要とされています。
従来の治療法であるヒアルロン酸を使った保存治療では持続時間が約1週間~2週間です。そのため、通院回数を少なくできる点もメリットです。
PDF-FD療法がおすすめの方

PDF-FD療法はすべての整形外科疾患に適応される治療ではありませんが、以下のようなケースでは検討価値のある選択肢となる可能性があります。
1)軽度〜中等度の変形性膝関節症の方
画像上は高度な変形ではないものの、痛みや違和感が続いている方では、炎症制御や症状緩和を目的としたPDF-FD療法が検討されることがあります。
2)保存療法で十分な改善が得られなかった方
ヒアルロン酸注射や内服薬、リハビリテーションなどの保存療法を行っても、効果が限定的だった方にとって、次の段階の保存的治療として選択肢となる場合があります。
3)手術をすぐには選択したくない方
現時点では手術適応ではない、またはできる限り手術を先送りしたいと考えている方にとって、PDF-FD療法は治療の幅を広げる可能性があります。
4)慢性疼痛や炎症が主な症状の方
腱障害や関節周囲炎など、慢性炎症が関与していると考えられる症状では、成長因子治療による環境改善が検討されることがあります。
5)過度な侵襲を避けたい方
大きな手術や長期の入院を避けたい方にとって、PDF-FD療法は比較的侵襲の少ない治療選択肢の一つです。
PDF-FD療法の整形外科領域の主な適応

PDF-FD療法は、整形外科疾患のすべてに適応される治療ではありませんが、慢性炎症や修復不全が関与していると考えられる疾患において、保存療法の一選択肢として検討されることがあります。
1)変形性膝関節症
変形性膝関節症は、PDF-FD療法が整形外科領域で最も多く検討されている適応の一つです。
とくに、軽度〜中等度の変形性膝関節症において、疼痛や機能低下の改善を目的に用いられることがあります。
PDF-FD療法は、摩耗した軟骨を直接再生させる治療ではありませんが、関節内の炎症反応を調整し、関節環境を整えることで症状改善を補助する役割が期待されています。
一方で、関節変形が高度に進行している場合や、骨変形が著しい症例では、効果が限定的となる可能性があり、手術療法との比較検討が重要です。
2)肩関節疾患(五十肩・腱板周囲炎など)
肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)や腱板周囲炎などの肩関節疾患では、炎症の持続や組織修復の遅れが、痛みや可動域制限の原因となることがあります。
これらの疾患に対しても、PDF-FD療法は、炎症制御や修復環境の改善を目的とした補助的治療として検討されることがあります。
ただし、急性期や強い炎症がある場合は、他の治療を優先することが一般的です。
3)肘関節疾患(テニス肘・ゴルフ肘など)
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)や内側上顆炎(ゴルフ肘)などの肘関節疾患は、腱付着部の微細損傷と慢性炎症が関与する代表的な疾患です。
これらの疾患では、保存療法で十分な改善が得られない場合に、腱周囲の環境を整える目的でPDF-FD療法が検討されることがあります。
慢性化した疼痛に対して、治療選択肢の一つとなる可能性があります。
4)その他の関節・腱・靭帯障害
PDF-FD療法は、以下のような疾患・状態においても検討されることがあります。
- 股関節や足関節の変性疾患
- アキレス腱障害
- 膝蓋腱炎、足底腱膜炎
- スポーツによる慢性的な腱・靭帯障害
いずれの場合も、急性外傷や完全断裂に対する治療ではなく、慢性経過をたどる症例や、保存療法で改善が乏しいケースが対象となります。
5)適応を考えるうえで重要なポイント
PDF-FD療法は、保険診療では十分な改善が得られない症例において、治療選択肢を広げる可能性がある治療法です。
一方、PDF-FD療法は、次の点を理解したうえで、適切な症例選択と十分な説明のもとで行うことが重要です。
- すべての整形外科疾患に適応される治療ではない
- 病態・重症度によって効果が大きく異なる
- 手術療法に代わる万能な治療ではない
- 自由診療であり全額患者負担となる
整形外科領域では、PDF-FD療法を「治療の中心」ではなく、保存療法の幅を広げる補助的選択肢として位置づけることが現実的といえます。
<参考記事>
整形外科クリニックの選び方|失敗しないための7つのポイント【再生医療にも対応】
PDF-FD療法は本当に効果がある?エビデンスを検証する

PDF-FD(C-PRP)療法は、整形外科領域で臨床応用が進みつつある一方、その効果については疾患や重症度、評価指標によって差があることが明らかになっています。
本章では、現時点で得られている整形外科領域の臨床エビデンスを整理します。
1)変形性膝関節症における臨床エビデンス
変形性膝関節症に対しては、凍結乾燥血漿由来因子製剤(PDF-FD/PFC-FD)を
関節内に投与する前向き臨床研究が報告されています。
Ohtsuruらは、早期変形性膝関節症患者に対し、凍結乾燥・非凝固型の血漿由来因子製剤(PFC-FD)を関節内注射し、疼痛スコアおよび機能評価を12か月間追跡しました。その結果、VASや機能スコアの有意な改善が認められ、安全性にも大きな問題はみられなかったと報告しています【3】。
一方で、重症例では改善効果が限定的であり、適応の見極めが重要である点も指摘されています。
2)PDF-FDとPFC-FDの比較から見える短期効果
PDF-FD(血漿由来成長因子)とPFC-FD(血小板由来成長因子)を直接比較した国内前向き研究も報告されています。
戸田・増田らは、変形性膝関節症患者を対象に、PDF-FD群とPFC-FD群の治療4週後の疼痛スコア(VAS)を比較した結果、PDF-FD群で有意な疼痛改善が認められたと報告しました【4】。
この結果は、凍結乾燥製剤の成分構成や設計の違いが、短期的な症状改善に影響する可能性を示唆しています。ただし、本研究は短期評価であり、長期成績や構造的改善を示すものではない点には注意が必要です。
3)PRP療法全体との比較による位置づけ
PRP療法そのものについては、変形性膝関節症を対象とした複数の臨床研究を解析したシステマティックレビューが存在します。Laverらのレビューでは、PRP療法により
疼痛軽減や機能改善が得られる可能性がある一方、調製法、投与回数、評価指標のばらつきが大きく、標準化には課題が残ると結論づけています【5】。
PDF-FD療法は、こうしたPRP療法の知見を基盤に、成分の再現性や保存性を高めたアプローチと位置づけられますが、PRPと同様に「軟骨再生を保証する治療」ではありません。
4)肩・肘・腱障害に関するエビデンスの現状
肩関節や肘関節、腱障害に対するPDF-FD療法単独の大規模臨床研究は、
現時点では限られています。
肘関節領域では、外側上顆炎(テニス肘)に対するPRP注射について、
システマティックレビューおよびメタ解析が行われており、
疼痛や機能スコアが臨床的に意味のある改善を示す可能性が報告されています【6】。
ただし、製剤や投与条件の違いにより結果の一貫性には限界があります。
一方、肩関節の慢性腱板障害に対する二重盲検RCTでは、
PRP注射はプラセボと比較して有意な上乗せ効果を示さなかったと報告されており、
成長因子治療の効果は症例選択や併用療法の影響を強く受けることが示唆されています【7】。
これらの結果から、肩・肘・腱障害に対するPDF-FD療法は、「研究・臨床報告レベル」として慎重に位置づける必要があります。
5)「軟骨再生治療」としての限界
凍結乾燥血漿由来因子製剤が関節軟骨を再生させるかどうかを検討した研究も存在します。
Shirataらは、膝関節内に凍結乾燥PFCを投与した検討において、疼痛やQOL指標の一部に改善がみられた一方、可動域や機械症状の有意な改善は認められなかったと報告しました【8】。
著者らは、その作用が「軟骨再生」というより、抗炎症作用や症状緩和への寄与が大きい可能性を指摘しています。
この知見は、PDF-FD療法を「再生を断言する治療」ではなく、
症状改善を目的とした成長因子治療として捉える重要性を示しています。
6)エビデンスレベルの総合評価
現時点での整形外科領域におけるPDF-FD療法のエビデンスは、以下のように整理できます。
- 変形性膝関節症:
中等度のエビデンス(前向き研究・比較研究あり【3】【4】) - 肩・肘・腱障害:
弱〜中等度のエビデンス(PRP関連研究・症例報告中心【6】【7】)
PDF-FD療法は、整形外科治療において保存療法の選択肢を広げる補助的アプローチとして位置づけることが妥当であり、適応と限界を理解したうえで用いることが重要です。
PDF-FD療法の安全性とリスク

PDF-FD(C-PRP)療法は、自己血由来の成長因子を用いる治療であり、整形外科領域では比較的安全性の高い保存的治療の一つと位置づけられています。
ただし、他のすべての医療行為と同様に、一定のリスクや注意点が存在します。
1)自己血由来治療としての安全性
PDF-FD療法は、患者自身の血液から作製された成長因子製剤を使用します。
そのため、次のようなことが起こる可能性は極めて低いと考えられています。
- アレルギー反応
- 免疫学的拒絶反応
この点は、他人由来成分や人工物を使用する治療と比較した際の大きな特徴の一つです。
また、細胞成分を除去した「Cell Free PRP」であるため、白血球などによる過剰な炎症反応が起こりにくい点も、整形外科領域で評価されているポイントです。
2)想定される副作用・ダウンタイム
PDF-FD療法で報告されている副作用の多くは、注射治療に共通する軽度かつ一過性の反応です。
主に以下のような症状がみられることがあります。
- 注射部位の腫脹・疼痛
- 注射後数日間の違和感や重だるさ
- 一過性の炎症反応
これらの症状は、通常数日以内に自然軽快することがほとんどです。
重篤な合併症や長期的な後遺症が報告されることはまれですが、関節内注射である以上、感染リスクを完全にゼロにすることはできません。
そのため、無菌操作を徹底した環境での施術が不可欠です。
3)注意が必要な方・施術できない場合
以下に該当する方は、PDF-FD療法を受けられない、または慎重な判断が必要となる場合があります。
- 抗がん剤治療を受けている方
- 血液疾患がある方
- 重度の感染症を有する方
- 抗凝固療法を受けている方
- 治療部位に人工関節が埋まっている方
- 治療を部位に明らかな感染や皮膚トラブルがある方
- 医師が安全性の観点から不適当と判断した場合
整形外科領域では、基礎疾患や全身状態が治療結果に影響することも多く、事前の診察と十分な問診が極めて重要です。
4)PDF-FD療法デメリット

PDF-FD療法のデメリットとしは、効果や持続期間に個人差があることや即効性が無い点です。また、自由診療などで全額自己負担となります。
5)医師管理下で行う重要性
PDF-FD療法は自由診療であり、標準治療の一部として位置づけられているわけではありません。
そのため、下記に関して、整形外科医が責任をもって行うことが不可欠です。
- 適応の見極め
- 他の保存療法・手術療法との比較
- 治療効果と限界の説明
とくに変形性膝関節症では、病期や画像所見によって治療選択が大きく異なるため、
「手術を避けたいから」という理由だけで選択すべき治療ではありません。
PDF-FD療法は、医師の管理下で、適切な症例に限定して用いられることで初めて安全性と有用性が担保される治療であることを理解しておく必要があります。
整形外科領域のPDF-FD療法の治療の流れ・回数の目安

PDF-FD(C-PRP)療法は、一般的な注射治療と異なり、事前準備から経過観察までを含めた計画的な治療が重要となります。
ここでは、整形外科で行われる標準的な流れと、治療回数の目安を解説します。
1)診察・カウンセリング
まず、整形外科医による診察を行い、症状、既往歴、画像所見(X線・MRIなど)を総合的に評価します。
- 変形性膝関節症の重症度
- 痛みの原因が炎症・変性によるものか
- 他の保存療法や手術療法との比較
を行い、PDF-FD療法が適応となるかどうかを慎重に判断します。
この段階で、治療効果の限界やリスクについても十分に説明されます。
2)採血
治療が適応と判断された場合、患者自身の血液を必要量採取します。
採血量は一般的な血液検査と大きく変わらず、身体への負担は比較的軽度です。
3)PDF-FD製剤の作製
採取した血液から、血漿由来成長因子を抽出・濃縮し、凍結乾燥(フリーズドライ)工程を経てPDF-FD製剤を作製します。PDF-FD製剤は、採血後、2週間~3週間程度で完成します。
凍結乾燥された製剤は6ヶ月程度保存が可能であり、採血と注射を同日に行う必要がない点が従来の液体PRP療法との大きな違いです
4)投与(関節内・局所注射)
症状に応じて、膝関節、肩関節、肘関節、腱付着部などへ医師が注射によって投与します。
整形外科領域では、正確な投与位置が治療効果や安全性に影響するため、超音波(エコー)ガイド下で行われることもあります。
5)経過観察・アフターケア
注射後は、数日〜数週間にわたり経過観察を行います。
下記などを確認し、必要に応じて運動療法やリハビリテーションを併用することもあります。
- 注射部位の痛みや腫れの有無
- 症状の変化
- 日常生活や運動時の状態
6)治療効果の発現時期と回数の目安
PDF-FD療法の効果発現には個人差がありますが、注射後数週間〜数か月で症状の変化を自覚するケースが多いとされています。
整形外科領域では、次のようなケースがあり、一律の回数は定められていません。
- 1回の投与で経過を見るケース
- 数か月の間隔で複数回投与するケース
症状の程度や経過を踏まえ、医師が適切な回数や間隔を判断します。
重要なのは、PDF-FD療法を「1回で必ず効果が出る治療」と考えず、中長期的な保存療法の一環として捉えることです。
PDF-FD(C-PRP)療法に関するよくある質問

Q1.PDF-FD療法はどのような整形外科疾患に適していますか?
PDF-FD療法は、慢性炎症や修復不全が関与している整形外科疾患において、保存療法の一選択肢として検討されます。代表的な適応は、軽度〜中等度の変形性膝関節症、肩関節周囲炎、テニス肘などの腱障害、スポーツ障害による慢性疼痛などです。
一方、重度の関節変形や完全断裂などでは効果が限定的なため、手術療法が優先される場合もあります。
Q2.PDF-FD療法で関節軟骨は再生しますか?
現時点のエビデンスでは、PDF-FD療法が関節軟骨を再生することを明確に示した臨床データはありません。
研究では、疼痛やQOLの改善が報告されている一方で、可動域や機械症状の有意な改善は認められないケースもあり、主な作用は抗炎症作用や症状緩和と考えられています。
そのため、PDF-FD療法は「軟骨再生治療」ではなく、症状改善を目的とした成長因子治療として理解することが重要です。
Q3.PDF-FD療法は何歳でも受けられますか?
PDF-FD療法に年齢制限はありませんが、症状等に応じて施術の可否を医師が判断します。ご自身が適応になるかどうかは、整形外科の医師にご相談ください。
Q4.効果はどのくらいで実感できますか?何回必要ですか?
効果の実感時期や必要回数には個人差がありますが、注射後数週間〜数か月で症状の変化を感じる方が多いとされています。
1回の投与で経過を見る場合もあれば、数か月おきに複数回行うケースもあり、一律の回数は決まっていません。症状や経過を見ながら、医師が回数や間隔を判断します。
Q5.保険は適用されますか?また、料金はどのくらいですか?
PDF-FD療法は自由診療(保険適用外)です。
そのため、料金はクリニックで異なりますが、2回注射セットで120,000円~200,000円程度です。
費用や治療計画については、事前に十分な説明を受けたうえで検討することが重要です。
Q6.効果の持続期間はどれくらいですか?
効果には個人差がありますが、約1年持続します。また、人によっては、2年持続する方もいます。
Q7.副作用やリスクはありますか?
PDF-FD療法は自己血由来治療であり、アレルギーや拒絶反応のリスクは低いと考えられています。
一方で、注射部位の腫れや痛み、一過性の炎症反応などが生じることがあります。また、関節内注射である以上、感染リスクが完全にゼロになるわけではありません。
そのため、無菌操作と医師による管理が重要です。
Q8.手術の代わりになりますか?
PDF-FD療法は、手術の代替治療ではありません。
保存療法で十分な改善が得られないが、すぐに手術を行うほどではない場合に、治療の選択肢を広げる補助的アプローチとして検討されます。病期によっては、手術が適切な選択となることもあります。
Q9.PDF-FD療法を受ける整形外科はどのように選べば良いですか?
PDF-FD療法を採用しているクリニックで、専門医の有無、治療実績、費用や説明の丁寧さなどを総合的に比較することが大切です。また、再生医療や自由診療は万能ではなく、適応や限界を正しく理解したうえで選択する姿勢も欠かせません。
<参考記事>
整形外科クリニックの選び方|失敗しないための7つのポイント【再生医療にも対応】
まとめ
PDF-FD(C-PRP)療法は、患者自身の血液から得られる成長因子を凍結乾燥し、炎症制御や修復環境の改善を目的として用いられる治療法です。整形外科領域では、変形性膝関節症を中心に、肩や肘、腱障害などの慢性疾患に対する選択肢として検討されています。
現時点のエビデンスからは、PDF-FD療法が関節軟骨を再生させる治療であるとは断言できません。一方で、軽度〜中等度の変形性膝関節症では、疼痛や機能の改善が報告されており、抗炎症作用や症状緩和を通じて生活の質を高める可能性が示唆されています。
肩や肘、腱障害については、PRP関連研究を含めてもエビデンスは限定的であり、研究・臨床報告段階にとどまります。
PDF-FD療法は、手術に代わる万能な治療ではありません。ヒアルロン酸注射など保存療法のみでは十分な改善が得られないものの、直ちに手術を選択する段階ではない患者にとって、治療の幅を広げる補助的アプローチとして位置づけることが重要です。適応や限界を正しく理解し、医師の管理下で慎重に選択することで、PDF-FD療法は整形外科治療における有意義な選択肢となり得ます。
<参照論文>
PMID: 31575111 PMCID: PMC7010512 DOI: 10.31616/asj.2019.0048
日本語要旨:PRP療法は製剤差・投与量・プロトコルの不均一性が臨床の再現性を阻害する。一方、凍結乾燥(FD)は保管性と“オフ・ザ・シェルフ化”を高め、サイト間での品質均一化に寄与し得る。しかし、標準化された製造・品質管理(成分、活性、無菌性等)の枠組み整備が不可欠と論じる。
PMID: 31575111 PMCID: PMC7010512 DOI: 10.31616/asj.2019.0048
日本語要旨:FD-PRPは保存後でもPDGF受容体~ERK経路を介して骨芽細胞増殖を促進し、成長因子活性が保たれ得ることを示した。FD化により保管性を上げつつ、主要GFの機能を維持できる可能性を支持する基礎データ。
PMID: 37380754 PMCID: PMC10598078 DOI: 10.1007/s00167-023-07414-y
日本語要旨:早期膝OAに対するPFC-FD注射の前向き研究。12か月で一定割合に臨床的改善を示し、主な有害事象は注射部位の痛み・腫脹など非重篤が中心。疾患重症度が高い群では反応が乏しい傾向も示され、適応の見極めの重要性が示唆される。
【4】戸田佳孝,増田研一.変形性膝関節症に対する濃縮血小板由来成長因子注射と濃縮血漿由来成長因子注射の4週後の治療成績比較.整形・災害外科.2025;68:285–288.
DOI: 10.18888/se.0000003320
要旨:51例の変形性膝関節症(膝OA)患者に対して,凍結乾燥した濃縮成長因子を血漿由来因子(PDF)と血小板由来因子(PFC)に無作為に分け関節内注射し,4週後の治療成績を比較した。PFC群(n=24)よりPDF群(n=27)の方が治療後の膝の痛みに関するVASが有意に小さく(p<0.001),治療前後でのVAS改善率が有意に大きかった(p<0.001)。以上より,短期的には血漿由来製剤の方が血小板由来製剤よりも膝OAの疼痛を和らげる作用が優れていると予測した。
PMID: 28317389 DOI: 10.1016/j.arthro.2016.09.007
日本語要旨:変形性膝関節症を含む変性軟骨疾患に対するPRP療法の臨床研究を体系的にレビューした論文。多くの研究で疼痛軽減や機能改善が報告されているが、PRPの調製方法、投与回数、評価指標に大きなばらつきがあり、結果の一貫性には限界があると結論づけている。軟骨再生を断言できるエビデンスは不足している。
PMID: 35425843 DOI: 10.1177/23259671221086920
日本語要旨:外側上顆炎(テニス肘)に対するPRP注射の有効性を、臨床的に意味のある最小変化量(MCID)の達成という観点から評価したシステマティックレビューおよびメタ解析。疼痛および機能スコアは多くの解析で改善を示し、MCIDを満たす結果が報告された。一方、製剤の違いや研究デザインのばらつきにより、結果の解釈には注意が必要とされている。
PMID: 23893418 DOI: 10.1177/0363546513496542
日本語要旨:慢性腱板障害患者を対象とした二重盲検ランダム化比較試験。PRP注射と生理食塩水注射を比較し、1年間追跡した結果、両群とも疼痛および機能の改善を認めたが、PRP群が有意に優れる結果は示されなかった。成長因子治療の効果は症例選択や併用療法の影響を強く受ける可能性が示唆された。
日本語要旨:膝OAに対し凍結乾燥PFCの関節内投与を検討。疼痛やQOL指標の一部は改善する一方、機械症状や可動域などは有意に改善しない可能性が示され、作用は“軟骨再生”というより抗炎症・症状緩和の寄与が大きい可能性が議論される。
※記事内容は2026年2月時点の情報に基づいています。最新の治療情報については、各医療機関にお問い合わせください。
【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、医療行為を推奨するものではありません。治療の適応、リスク、費用などについては、必ず医療機関で医師の診察を受け、十分な説明を受けた上でご判断ください。効果には個人差があり、すべての方に同様の結果が得られるとは限りません。
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