| 本治療は自由診療であり、症状や疾患によっては適応外のケースがあります。 効果は個人差があり保証できません。 学術論文は、必ずしも治療効果を保証するものではありません。 |
再生医療の分野では近年、「自己血由来成分」を用いた治療法が大きな注目を集めています。
その代表がPRP(多血小板血漿)療法ですが、近年はその進化形としてPDF-FD(C-PRP:Cell Free PRP)療法が登場しました。
PDF-FD療法は、自己血から血小板由来成長因子を抽出・濃縮し、細胞成分を除去(Cell Free)したうえで凍結乾燥することで、成分の安定性と再現性を高めた医療技術です。
患部の再生を促しますが、細胞が除去されているので再生医療等安全性確保法上の分類では再生医療に該当しません。
現在、PDF-FD療法は変形性関節症などの整形外科疾患をはじめ、美肌治療(たるみ・ハリ改善)、AGA・薄毛治療、不妊治療など幅広い領域で応用されています。
また、ED(勃起障害)や歯周病などへの応用可能性も期待されており、PPR療法に代わる選択肢として関心が高まっています。
一方で、「本当に効果はあるのか」「安全性は確立されているのか」「PRP療法やPFC-FD療法とは何が違うのか」といった疑問を持つ方も少なくありません。
本記事では、PDF-FD(C-PRP)療法について、作用機序・適応・安全性を医学的エビデンスに基づいて整理し、現時点での正しい位置づけをわかりやすく解説します。
1.PDF-FD(C-PRP)療法とは?

PDF-FD(C-PRP)療法とは、自己血由来の血小板成長因子を活用したPRP(多血小板血漿)療法を改良した成長因子治療の一形態であり、細胞成分を除去(Cell Free)したうえで凍結乾燥(Freeze Dried)する点に特徴があります。
従来のPRP療法が「液体状態でその場使用」を前提としていたのに対し、PDF-FD療法は成分の安定性・再現性・品質均一性を重視した設計となっています【1】。
1)PDF-FD(C-PRP)の正式名称と定義
PDF-FDは、Platelet Derived Factors – Freeze Driedの略称です。
血小板由来成長因子(Platelet Derived Factors)を抽出・加工し、凍結乾燥した製剤を指します。
血小板由来成長因子を含みつつ、血小板そのものや細胞成分を含まないPRP形態であることから、C-PRP(Cell Free PRP)と呼ばれることもあります。
PDF-FD(C-PRP)は「自己血由来・細胞非含有・凍結乾燥PRP製剤」として位置づけられます。
膝関節や肌、毛髪などの再生を促す成長因子治療ですが、細胞を含まないため再生医療に分類されない点が大きな特徴です。
2)PRP療法との違い

PRP療法では、採血後に遠心分離を行い、得られたPRPを液体状態のまま当日中に使用するのが一般的です。
細胞成分を含むため、再生医療等安全性確保法の対象となります。
一方、PDF-FD(C-PRP)療法では、白血球を除去するなど成分を加工・凍結乾燥を行います。
そのため、次のような違いが生じます。
| PRP療法 | PDF-FD療法 | |
| 保存性 | 長期保存が困難 | 凍結乾燥により長期保存が可能 |
| 成分安定性 | 時間経過や温度変化の影響を受けやすい | 成長因子の活性を比較的安定した状態で保持 |
| 再現性 | 採血条件や調製方法によるばらつきが生じやすい | 工程管理により品質の均一化が図られる |
これらの特性により、PDF-FD(C-PRP)療法は、単なるPRP注射ではなく、成長因子を安定的に供給する治療法として精度が向上していると考えられています。また、医療機関にとっても、再生医療の許認可手続きや遠心分離機の導入が不要な点でメリットがあります。
<参考記事>
3)なぜ「凍結乾燥(FD)」するのか?

①成長因子の安定化
血小板由来成長因子(PDGF、TGF-β、VEGF など)は、生理活性が高い一方で、液体状態では失活しやすい性質があります。
凍結乾燥は、これらの成長因子を低温・脱水状態で保存することで、活性低下を抑える目的で用いられます【2】。
②ロット(バッチ)差の低減
PRP療法では、患者の血液状態や調製手技の違いによって、成分量にばらつきが生じる可能性があります。
PDF-FDでは加工工程を標準化することで、ロット(バッチ)間の差を抑制する設計が取られています。
③医療機関間での品質均一性
再生医療では「どこで受けても同じ品質かどうか」が重要な課題です。
凍結乾燥工程を取り入れることで、医療機関ごとの手技差による品質変動を最小限に抑えることが期待されています。
2.PDF-FD療法の作用メカニズム

PDF-FD(C-PRP)療法は、血小板由来成長因子(Platelet-Derived Factors)を中心とした生理活性因子の作用によって、炎症制御や組織修復を促す治療法です。
ここでは、その代表的なメカニズムを整理します。
1)血小板由来成長因子の働き
血小板には、PDGF(血小板由来成長因子)、TGF-β、VEGF、IGF など複数の成長因子が含まれており、これらが相互に作用することで、組織環境の改善に寄与すると考えられています。
①線維芽細胞活性
PDGF や TGF-β は、線維芽細胞の増殖や遊走を促進し、コラーゲンや細胞外マトリックス産生を調整することが知られています。
FD-PRPにおいても、これらの成長因子活性が保持され、細胞増殖シグナルが誘導されることが in vitro 研究で示されています【2】。
②血管新生
VEGF をはじめとする血管新生因子は、新生血管形成を促し、局所の血流や酸素供給を改善する役割を担います。
PRP系治療では、この血管新生作用が組織修復や疼痛軽減の一因になると考えられています。
凍結乾燥された血小板由来因子でも、血管新生関連シグナルが維持される可能性が示唆されており、整形外科や皮膚領域での臨床応用の理論的背景となっています【1】。
③炎症制御
血小板由来成長因子には、炎症性サイトカインの過剰反応を調整し、慢性炎症を抑制する作用があると考えられています。
特に、NF-κB シグナル経路の抑制を介した抗炎症作用が、血小板由来因子製剤で報告されています。
この作用は、変形性関節症や皮膚老化など、「慢性炎症」が関与する疾患での臨床効果を説明する一因とされています【3】。
④組織修復促進
成長因子は、細胞増殖・血管新生・炎症制御を通じて、結果的に組織修復環境を整える方向に働きます。
ただし、これらの作用は「失われた組織を完全に再生する」ことを意味するものではなく、修復過程を補助する生物学的効果として理解する必要があります【4】。
2)Cell Free PRPが持つ特徴
①高濃度化による生理活性
Cell Free PRPは、血小板や細胞成分を除去したうえで、血小板由来因子を濃縮している点が特徴です。
これにより、生理活性因子を比較的安定した濃度で投与できる可能性が示唆されています。
ただし、最適濃度や投与回数については、疾患ごとに確立されているとは言えず、現在も検討段階にあります 。
②自己血由来による免疫学的安全性
Cell Free PRPは自己血由来であるため、理論的にはアレルギー反応や免疫拒絶反応のリスクが低いと考えられています。
実際、Cell Free PRPを用いた臨床研究では、重篤な免疫学的有害事象は少ないと報告されています【5】【6】 。
3)生物学的効果:in vitro / in vivo 研究の概要
基礎研究レベルでは、Cell FreePRPや血小板由来因子製剤が、細胞増殖(線維芽細胞・骨芽細胞)や成長因子受容体シグナル活性化、炎症関連経路の調整といった生物学的効果を示すことが報告されています 。
例えば、骨形成に関与する骨芽細胞を対象とした in vitro 試験では、Cell FreePRPに含まれる血小板由来成長因子(PDGF)が PDGF 受容体(PDGFR)を活性化し、下流の ERK シグナル経路を介して骨芽細胞の増殖を促進することが示されました【2】。
一方で、in vitro / in vivo の結果がそのまま臨床効果を保証するわけではない点も重要です。
臨床における有効性は、疾患の種類、重症度、投与方法によって大きく左右されるため、現時点では「作用機序を裏付ける基礎的根拠」として位置づけるのが妥当と考えられます 。
3.PDF-FD(C-PRP)療法の適応と効果

1)整形外科領域(変形性膝関節症・腱/靭帯・スポーツ障害)



①適応となる疾患・症状
PDF-FD(C-PRP)療法は、血小板由来成長因子による炎症制御や組織修復環境の改善を目的として、以下のような整形外科領域で検討・応用されています。
- 変形性膝関節症(特に軽度〜中等度で、疼痛や機能低下が主症状のケース)
- 腱・靭帯障害(テニス肘、アキレス腱障害、スポーツ障害を含む)
- 慢性的な疼痛や炎症が関与すると考えられる運動器疾患 など
なお、高度な関節変形や器質的破壊が進行した症例では、効果が限定的となる可能性があります。
②期待される効果
整形外科領域においてPDF-FD(C-PRP)療法に期待される主な作用は、以下のような症状緩和・修復補助的効果です。
- 炎症反応の調整
- 組織修復過程のサポート
- 疼痛の軽減
- 機能スコア(歩行・可動域など)の改善
これらは成長因子による生体反応の調整に基づくものであり、
損傷組織を完全に「再生」させる治療ではない点を明確に理解する必要があります。
③臨床エビデンス
整形外科領域は、PDF-FD(C-PRP)に近縁するPFC-FD(凍結乾燥血小板由来因子濃縮物)やFD-PRPにおいて、比較的多くの臨床研究が報告されています。
- 変形性膝関節症(前向き研究)凍結乾燥された血小板由来因子濃縮物(PFC-FD)を用いた前向き研究では、早期〜中等度の変形性膝関節症患者において、疼痛スコアや機能評価の改善が一定期間認められました。一方で、重症例では効果が乏しい傾向も示されています【5】。
- 症状改善と限界を示した報告別の研究では、凍結乾燥血小板由来因子製剤によって疼痛の改善は認められたものの、関節可動域や機械的症状の改善は限定的であり、「軟骨再生」を直接示すエビデンスではないことが指摘されています【4】。
これらの研究は、疼痛緩和や機能改善という臨床的ベネフィットを支持する一方で、一般に「再生医療」という言葉から想起されやすい完全な組織再生を保証するものではないことを示しています。
④エビデンスレベル評価
整形外科領域、とくに変形性膝関節症では、前向き研究や臨床報告の蓄積が比較的多く、一定の臨床的有用性が示唆されています。
- 注意点
- 対象となる疾患の重症度
- 投与回数・間隔
- 評価指標(疼痛、機能、画像所見など)
研究間でばらつきがあり、治療効果の一律な評価は困難である点を理解する必要があります。
⑤向いている人/向かない人
向いている可能性がある人
- 軽度〜中等度の変形性膝関節症で、保存的治療に限界を感じている方
- 慢性的な炎症や疼痛が主体で、手術を避けたい方
向かない可能性がある人
- 高度な関節変形や構造的破壊が進行しているケース
- 即効性や「治癒・再生」を強く期待している方
2)美肌治療(たるみ・肌質改善)

①適応となる悩み・症状
PDF-FD(C-PRP)療法は、血小板由来成長因子による皮膚環境の改善を目的として、以下のような美容医療・皮膚科領域で応用されています。
- 皮膚のたるみ・ハリ低下
- 小じわ
- 肌のキメ低下、乾燥などの肌質変化
- レーザー・外科治療後の創傷治癒補助
- 真皮機能低下が関与すると考えられる加齢性変化 など
フェイスリフトや高周波・超音波治療の代替治療ではなく、根本的な肌質改善治療として位置づけられます。
②期待される効果
美肌治療領域においてPDF-FD(C-PRP)療法に期待される作用は、以下のような皮膚の質的改善です。
- 線維芽細胞活性を介した真皮環境の調整
- 血管新生・血流改善による皮膚代謝のサポート
- 慢性炎症の調整による肌コンディションの安定化
- 創傷治癒過程の補助による肌質改善
これらは、皮膚を内側から支える環境を整える作用と考えられており、即時的なたるみ改善や若返りを保証するものではありません。
③臨床エビデンス(代表研究)
美容医療領域では、PDF-FD(C-PRP)そのものに限定した大規模臨床試験はまだ少なく、主にCell Free Platelet Products(血小板由来因子製剤、血小板ライセート等)に関する研究が参考になります。
- 血小板由来因子製剤と皮膚老化(機序+臨床)血小板由来成長因子を含むライセート製剤は、in vitro / in vivo 研究および臨床評価において、皮膚老化に関与する炎症経路(NF-κB)を調整し、皮膚構造の改善に寄与する可能性が示されています【3】。
本研究では、血小板由来因子製剤が皮膚細胞の機能維持や老化関連変化の抑制に関与する可能性が示唆されていますが、美容医療としての最終的な効果は治療条件や個人差に大きく左右される点が強調されています。
- PRP/成長因子製剤の皮膚応用に関する総説凍結乾燥PRPや血小板由来因子製剤は、皮膚の創傷治癒や組織修復を補助する目的で研究されており、真皮再構築を直接証明するものではないが、環境改善を介した間接的効果が期待されています【1】。
④エビデンスレベル評価
- 基礎研究や小規模臨床研究は存在する
- 評価指標(皮膚厚、弾力性、満足度など)が統一されていない
- 大規模ランダム化比較試験(RCT)は限定的
そのため、美肌治療領域では「科学的根拠が蓄積途中の補助的治療」としての位置づけが妥当と考えられます。
⑤向いている人/向かない人
向いている可能性がある人
- 肌のハリ低下や質感の変化を感じている方
- レーザーや注入治療後の肌質改善を補助的に行いたい方
- 自己血由来成分による治療を希望する方
向かない可能性がある人
- 即効性のあるリフトアップ効果を期待している方
- 明確なシワ消失や若返りを目的とする方
3)AGA・薄毛治療

①適応となる疾患・症状
PDF-FD(C-PRP)療法は、血小板由来成長因子による毛包周囲環境の改善を目的として、主に以下のような薄毛・脱毛症に対して検討されています。
- 男性型脱毛症(AGA)
- 女性のびまん性脱毛(FAGA)の一部
- 既存治療で十分な効果が得られない症例の補助療法
なお、円形脱毛症など自己免疫性疾患による脱毛は、適応外となるケースがあります。
②期待される効果
AGA・薄毛領域においてPDF-FD(C-PRP)療法に期待される主な作用は、以下のような毛包機能を取り巻く環境改善です。
- 毛包周囲の血流改善
- 成長因子による毛包幹細胞の活性サポート
- 毛周期(成長期)の維持・延長への関与
- 炎症性環境の調整
これらは、毛髪を新たに生み出す治療ではなく、
既存の毛包機能を維持・補助する方向で作用する可能性があると考えられています。
③臨床エビデンス(代表研究)
AGA領域では、PDF-FD(C-PRP)に直接限定した大規模臨床試験は現時点で多くありませんが、PRP治療全体としてはランダム化比較試験(RCT)やメタ解析が複数報告されています。
- AGAに対するPRP治療のメタ解析(RCT統合)複数のランダム化比較試験を統合したメタ解析では、PRP治療を受けた群で毛髪密度や毛髪径の改善が認められたと報告されています。
一方で、調製法や投与回数のばらつきが大きく、結果の解釈には注意が必要とされています【7】。
この点で、PDF-FD(C-PRP)療法は、成長因子を細胞成分から分離し、凍結乾燥によって品質の均一化・再現性向上を目指すアプローチとして位置づけられますが、AGAにおける直接的比較データは今後の課題です。
④既存AGA治療との併用可能性
臨床現場では、以下のような既存AGA治療と併用されるケースがあります。
- 外用ミノキシジル
- 内服フィナステリド/デュタステリド
ただし、併用効果を検証した高品質な臨床研究は限定的であり、併用が必ずしも相加的効果をもたらすと保証するものではありません。
治療選択は医師の判断のもと、個別に検討される必要があります。
⑤エビデンスレベル評価
- PRP治療としてのRCT・メタ解析は存在
- 一方で、製剤調製法・投与条件の違いが大きい
- PDF-FD(C-PRP)に特化した臨床データは現時点で限定的
そのため、AGA領域では「一定の科学的根拠はあるが、確立治療とは言えない補助的選択肢」として位置づけるのが妥当です。
⑥向いている人/向かない人
向いている可能性がある人
- AGA初期〜中期で、毛包機能が残存していると考えられる方
- 薬物治療と併せて毛包環境改善を補助的に行いたい方
- 自己血由来治療に関心がある方
向かない可能性がある人
- 毛包が著しく萎縮・消失している進行期AGA
- 即時的な発毛や明確な毛量増加を期待している方
<参考記事>
【2025年最新版】AGAのPRP治療とは?効果・安全性・他治療との違いを徹底解説
4)不妊治療領域
①適応となる疾患・症状
PDF-FD(C-PRP)療法は、血小板由来成長因子による子宮内環境の改善を目的として、主に以下のような不妊治療領域で研究・臨床応用が検討されています。
- 薄い子宮内膜(Thin Endometrium)
- 反復着床不全(RIF:Recurrent Implantation Failure)
- 体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)において、子宮内膜環境が妊娠成立の障壁となっていると考えられるケース
なお、すべての不妊症に適応される治療ではなく、生殖補助医療(ART)の補助的手段として検討される位置づけです。
②期待される効果
不妊治療領域においてPDF-FD(C-PRP)療法に期待される作用は、以下のような着床環境の改善です。
- 子宮内膜における血管新生の促進
- 成長因子による内膜修復・再生環境のサポート
- 慢性炎症の調整による内膜受容能(receptivity)の改善
- 内膜厚の増加や質的改善への関与
これらは、妊娠を直接成立させる治療ではなく、
着床に適した内膜環境を整える補助的作用として理解する必要があります。
③臨床エビデンス
不妊治療領域では、PDF-FD(C-PRP)そのものに限定した大規模RCTは存在せず、
主にPRP療法全般に関する前向き研究・レビュー論文がエビデンスの中心となります。
- 子宮内PRP注入に関する作用機序と臨床研究のレビュー子宮内にPRPを投与することで、血管新生、炎症制御、細胞増殖を介した子宮内膜の厚みや機能改善が示唆されています。ただし、妊娠率や出生率に関しては研究間で結果が一致していない点が指摘されています【8】。
本レビューでは、PRP治療による内膜厚の改善は比較的一貫して報告されている一方で、妊娠転帰(妊娠率・出生率)への影響は限定的または不確実であることが強調されています。
④エビデンスレベル評価
- 前向き研究や症例報告は存在
- 研究デザインや対象が不均一
- 大規模ランダム化比較試験(RCT)は不足
そのため、不妊治療領域におけるPDF-FD(C-PRP)療法は、「研究段階にある補助的治療」として位置づけるのが妥当です。
⑤向いている人/向かない人(簡潔)
向いている可能性がある人
- 薄い子宮内膜や反復着床不全が指摘されている方
- 標準的な生殖補助医療を行っても結果が得られにくい方
- 補助的治療として新たな選択肢を検討している方
向かない可能性がある人
- 不妊原因が卵子・精子の質、染色体異常などに主に起因する場合
- 短期間で妊娠成立を強く期待している方
4.可能性が期待できるPDF-FD(C-PRP)療法の適応と効果
本章で扱う領域はいずれも確立した適応ではなく研究・検討段階です。
また、記載内容は「可能性が示唆されている段階」「臨床報告レベル」に限定します。
治療効果を保証するものではなく、また自由診療となります。
1)ED(勃起障害)
①適応となる疾患・症状
PDF-FD(C-PRP)療法は、血管内皮機能や神経・組織環境の改善を目的として、以下のようなEDに対して研究されています。
- 軽度〜中等度の勃起障害(ED)
- 血流障害や加齢変化が関与すると考えられるED
- PDE5阻害薬(内服薬)の効果が不十分な症例の補助療法
なお、重度EDや器質的障害が主体の症例では、適応外となる可能性があります。
②期待される効果
ED領域で期待されている作用は、以下のような勃起機能を取り巻く環境改善です。
- 血管新生・血流改善のサポート
- 神経・内皮機能の回復補助
- 炎症制御を介した組織環境の調整
これらは、勃起機能を直接回復させる治療ではなく、勃起に関与する生理環境を補助的に整える可能性として位置づけられています。
③臨床エビデンス
EDに対するPRP治療では、二重盲検ランダム化比較試験(RCT*が報告されていますが、結果は一貫していません。
- 改善を示唆したRCTPRP注射を行った群で、勃起機能スコアの改善が報告されています【9】。
- 有意差を示さなかったRCT一方、別の二重盲検RCTでは、PRP群とプラセボ群の間で有意差が認められませんでした【10】。
このように、有効性を支持する報告と否定的な報告が混在しており、結論は確立していません。
④エビデンスレベル評価
- RCTは存在するが結果が一貫しない
- 症例数・評価期間が限定的
- 投与方法・回数の標準化が未確立
⑤向いている人/向かない人
向いている可能性がある人
- 軽度〜中等度のEDで、補助的治療を検討している方
向かない可能性がある人
- 重度EDや外科的治療が必要なケース
- 明確な勃起回復を保証してほしい方
2)歯周病
①適応となる疾患・症状
PDF-FD(C-PRP)療法は、歯周組織再生を目的として、以下のような歯科領域で研究されています。
また、一部で臨床応用されています。
- 慢性歯周炎
- 歯周外科治療後の組織修復補助
- 骨欠損や歯肉退縮を伴うケース
なお、歯周病治療の標準治療(スケーリング等)を代替するものではありません。
②期待される効果
歯周病領域では、以下のような組織修復補助効果が期待されています。
- 歯周組織の修復環境改善
- 血管新生・炎症制御
- 骨・歯肉再生の補助的作用
③臨床エビデンス
血小板由来製剤を用いた歯周治療については、アンブレラレビューが報告されています【11】。
同レビューでは、歯周組織改善を示唆する結果がある一方で、研究の質や異質性が高く、確立した結論には至っていないとされています。
④エビデンスレベル評価
- 改善を示唆する研究は存在
- 治療手技・評価指標が不統一
- 長期予後データが不足
⑤向いている人/向かない人
向いている可能性がある人
- 歯周外科後の組織修復を補助的に行いたい方
向かない可能性がある人
- 標準歯周治療を受けていない方
- 短期間での明確な再生を期待する方
3)慢性創傷
①適応となる疾患・症状
PDF-FD(C-PRP)療法は、創傷治癒が遷延する以下のような病態で研究されています。
- 難治性潰瘍
- 糖尿病性足潰瘍
- 術後創傷治癒遅延
②期待される効果
慢性創傷において期待されるのは、以下のような創傷治癒環境の改善です。
- 成長因子による細胞増殖サポート
- 血管新生促進
- 炎症制御による治癒遷延の改善補助
③臨床エビデンス
PRPを含む血小板製剤は、慢性創傷治療において治癒期間短縮の可能性が報告されていますが、製剤・手法により結果は異なります【1】。
④エビデンスレベル評価
- 症例報告・小規模研究が中心
- PDF-FD(C-PRP)特異的データは不足
⑤向いている人/向かない人(簡潔)
向いている可能性がある人
- 標準治療で改善が乏しい慢性創傷の補助療法を検討する方
向かない可能性がある人
- 感染が制御されていない創傷
- 即時的治癒を期待する方
6.PDF-FD療法とPFC-FD療法の違い
PDF-FD療法とPFC-FD療法は、いずれも患者自身の血液から得られた血小板由来成長因子を濃縮・凍結乾燥(フリーズドライ)して投与する治療法であり、再生医療的アプローチとしての目的や基本概念は共通しています。
一方で、製剤設計・加工工程・活性化方法において明確な違いが存在し、とくに 塩化カルシウム(CaCl₂)を使用するか否かは、両者を区別する重要なポイントです。
1)基本概念と名称の違い
いずれも血小板由来成長因子(PDGF、TGF-β、VEGF 等)が主成分であり、「血漿由来」「血小板由来」という表現差は、概念整理・ブランド定義の違いと考えられます。
| 項目 | PDF-FD療法 | PFC-FD療法 |
| 名称 | Plasma Derived Factor – Freeze Dry | Platelet-derived Factor Concentrate – Freeze Dry |
| 抽出部位 | 血漿分画 | Pure-PRP/LR-PRP |
| 提供元 | 株式会社Waqoo | セルソース株式会 |
2)最大の違い:塩化カルシウム(CaCl₂)の使用有無
①PDF-FD療法:塩化Caフリー
PDF-FD療法では、塩化カルシウムを用いずに成長因子製剤を作製します。
- 血小板を化学的に強制活性化しない
- 凍結乾燥・再溶解後、生体内環境で自然に成長因子が作用
- 成長因子の放出が比較的マイルドかつ持続的になる可能性
このためPDF-FDは、
「生体本来の修復プロセスを補助する設計」として位置づけられることが多く、炎症反応を最小限に抑えたいケースで選択されることがあります。
②PFC-FD療法:塩化Caを使用
PFC-FD療法では、製造工程において塩化カルシウム(CaCl₂)を使用し、血小板を意図的に活性化させたうえで成長因子を抽出・濃縮します。
- CaCl₂により血小板が活性化
- 成長因子の即時的な放出を促進
- 製剤としての再現性・成分安定性を高めやすい
この特性からPFC-FDは、
「成長因子を明確に・一定量投与する設計」という側面が強いと考えられています。
3)塩化Ca使用の有無が意味するもの
いずれかが「優れている」というものではなく、目的・適応・医師の治療設計によって選択されるべき違いです。
| 観点 | PDF-FD(Caフリー) | PFC-FD(Ca使用) |
| 血小板活性化 | 生体内で自然に起こる | 製造段階で人工的に誘導 |
| 成長因子放出 | 比較的緩徐・持続的 | 比較的即時的 |
| 炎症反応 | 抑えられる可能性 | 一過性炎症が出る場合あり |
| 設計思想 | 生理的修復補助 | 成長因子投与の明確化 |
| 向く場面 | 炎症を抑えたいケース | 即効性・再現性重視 |
4)共通する特徴(PDF-FD/PFC-FD共通)
①安全性
- 自己血由来のため、アレルギー・免疫拒絶のリスクは極めて低い
- 報告される副作用は注射部位反応が中心
②利便性
- 凍結乾燥製剤のため長期保存(目安:約6か月)が可能
- 治療計画に応じた柔軟な投与が可能
③保険・費用
- 自由診療(保険適用外)
- 費用は製剤仕様・医療機関により異なる(目安:2回で150,000円~200,000円)
5)医療現場での実際の説明と注意点
臨床現場では、PDF-FDとPFC-FDについて、
- 「治療目的はほぼ同じ」
- 「製剤設計・活性化方法に違いがある」
と説明されることが一般的です。
患者にとって重要なのは、名称やブランドよりも
- 塩化Caの使用有無を含めた製剤設計
- どの疾患・どの状態に適しているか
- 十分な説明と同意(インフォームド・コンセント
です。
7.PDF-FD(C-PRP)療法の治療の流れ・施術回数・効果実感までの目安

PDF-FD(C-PRP)療法は、通常のPRP療法と比較して製剤工程を伴う治療であるため、治療の流れ・スケジュールを正しく理解することが重要です。
1)治療の基本的な流れ
①診察・カウンセリング
- 症状・既往歴・内服薬の確認
- 適応可否の判断(適応外となるケースの説明)
- 自由診療・研究段階治療であることの説明
- 治療目的・限界・リスクの共有(インフォームド・コンセント)
この段階で「効果を保証する治療ではない」ことが必ず説明されます。
②採血
- 患者自身の血液を採取
- 採血量は45cc
③成分抽出・凍結乾燥(PDF-FD製剤作製)
- 血小板由来成長因子を抽出
- 塩化カルシウムを使用せず(Caフリー)製剤化
- 無菌管理下で凍結乾燥(フリーズドライ)
この工程により、
- 成分の安定化
- 保存性・再現性の向上が図られます。
④保管
- 凍結乾燥製剤として一定期間保存が可能
- 一般的には約6か月前後が目安とされます(※医療機関・製剤仕様により異なる)
⑤再溶解・投与(注射)
- 治療当日に製剤を再溶解
- 関節内、皮下、皮内、患部などへ注射
注射方法・部位は、疾患や目的により異なります。
2)施術回数・治療間隔の目安
PDF-FD(C-PRP)療法には、標準化された回数・間隔は確立されていません。
以下は、あくまで臨床現場での一般的な目安です。
- 1回投与で経過観察
- 症状に応じて数か月後に追加投与を検討
- 年1〜数回の範囲で治療計画を立てるケースが多い
疾患(整形外科・美容・AGA・不妊など)によって最適回数は異なります。
3)効果実感までの期間の目安
PDF-FD(C-PRP)療法は、即効性を期待する治療ではありません。
- 注射直後:一過性の違和感・軽度炎症反応が出ることあり
- 数週間〜数か月:症状の変化や改善を感じ始めるケース
- 中長期的(数か月以上):効果の持続や変化を評価
効果の現れ方・持続期間には個人差が大きいことを理解する必要があります。
4)ダウンタイム・日常生活への影響
- 注射当日は激しい運動を控えることが推奨される
- 入浴・洗顔・メイクは、部位により制限が異なる
- 通常、長期のダウンタイムは不要とされる
関節内注射や部位によっては、一時的な安静が必要な場合があります。
5)他治療との併用について
PDF-FD(C-PRP)療法は、以下のような治療と併用されることがあります。
- 整形外科:リハビリ、保存療法
- 美容医療:レーザー・高周波・注入治療の補助
- AGA:ミノキシジル・フィナステリド等
- 不妊:ART(体外受精など)の補助
ただし、併用効果が必ず高まると保証されているわけではありません。
併用可否は、医師の判断が必要です。
6)治療を受ける前に確認すべきポイント
- 適応疾患・研究段階であることの説明があるか
- 塩化Caフリーであること(PDF-FDの特徴)が明確か
- 保存期間・投与回数・費用が明示されているか
- 再生医療等安全性確保法への対応体制があるか
8.PDF-FD療法に関するよくある質問

Q1.PRP療法とPDF-FD療法の効果の違いは何ですか?
結論として、作用の本質は共通していますが、製剤の安定性・再現性に違いがあります。
PRP療法は、血小板を含む血漿を液体のまま当日使用する治療です。
一方、C-PRP(Cell Free PRP)であるPDF-FD療法は、細胞成分を除去し、成長因子のみを抽出・凍結乾燥した製剤を用います。
美容医療領域における比較研究では、PRPと無細胞PRP(C-PRP)の臨床効果に有意差は認められなかったと報告されています【12】。
このことから、効果の優劣というより、製剤の再現性・保存性・治療計画の立てやすさがC-PRP(PDF-FD)の特徴と考えられます。
なお、いずれの治療も効果を保証するものではありません。
Q2.PDF-FD療法はどのくらいで効果を感じますか?
PDF-FD療法は即効性を目的とした治療ではありません。
- 数週間〜数か月かけて、疼痛の軽減、肌質の変化、症状の緩和などを徐々に実感するケースがあります。
効果の出方・持続期間には個人差が大きいため、短期間での判断は推奨されません。
Q3.PDF-FD療法は何回受ける必要がありますか?
標準化された回数は確立されていません。
- 1回投与後に経過観察
- 症状や目的に応じて数か月後に追加投与
- 年1回〜数回の範囲で行われることが多い
回数は、疾患の種類(整形外科・美容・AGAなど)によって異なります。
Q4.PDF-FD療法とPFC-FD療法では、どちらがより効果的ですか?
結論から言うと、現時点で明確な優劣を断定することは困難です。
整形外科領域、とくに変形性膝関節症においては、PDF-FD療法とPFC-FD療法を直接比較した臨床研究が国内で報告されています【13】。
2025年に発表された前向き研究では、治療4週後の疼痛評価(VAS)においてPDF-FD群の方がPFC-FD群より有意な改善を示したと報告されており、短期的な疼痛軽減効果に関しては、PDF-FDが優位である可能性が示唆されています。
一方で、この研究は評価期間が短期(4週間)であり、長期的な効果や関節構造への影響を示すものではありません。また、症例数も限定的であるため、この結果のみで一般化することはできないと考えられます。
さらに重要な点として、美容医療、AGA、不妊、EDなど他の領域では、PDF-FDとPFC-FDを直接比較した臨床エビデンスは現時点では存在していません。
これらの分野では、PRPやCell Free PRP全体としての報告はあるものの、製剤間の優劣を判断できるデータは不足しています。
以上を踏まえると、
- 整形外科領域では、少数ながら直接比較エビデンスが存在する
- 他の領域では比較エビデンスがなく、推測の域を出ない
- 現時点では「どちらが優れている」と断定することはできない
というのが、医学的に妥当な結論です。
PDF-FD療法とPFC-FD療法は、作用機序や設計思想(塩化Caの使用有無など)に違いはあるものの、疾患の種類、重症度、治療目的によって使い分けを検討すべき治療選択肢であり、優劣ではなく適応の見極めが重要といえるでしょう。
Q5.PDF-FD療法は保険適用されますか?
どの疾患に適応する場合も保険適用外(自由診療) です。
費用は医療機関・製剤仕様・投与部位によって異なります。
Q6.PDF-FD療法は安全ですか?
PDF-FD療法は、自己血由来成分を用いる治療であるため、アレルギー反応や免疫拒絶のリスクは理論的に低いと考えられています。
一方で、以下の点は理解が必要です。
- 注射部位の腫れ・痛みなどの一過性反応
- 感染リスク(無菌管理が重要)
- 医療行為である以上、リスクがゼロではない
治療を受ける際は、適切に運用されている医療機関かを確認することが重要です。
Q7.PRPよりPDF-FDの方が痛みは少ないですか?
PDF-FD(C-PRP)は細胞成分を含まないため、炎症反応が比較的軽減される可能性が指摘されています。
ただし、痛みの感じ方は
- 注射部位
- 手技
- 個人差
に大きく左右されるため、必ずしも痛みが少ないと断定はできません。
Q8.PDF-FD療法の効果が出にくい人はいますか?
以下のような場合、PDF-FD療法の効果が限定的となる可能性があります。
- 組織の変性や構造破壊が高度に進行しているケース(高度な関節変形、毛包消失など)
- 基礎疾患(重度の糖尿病、血液疾患など)が強く影響している場合
- 治療目的と適応が合致していない場合
- 即効性や「治癒・再生」を強く期待している場合
PDF-FD療法は環境改善を目的とした補助的治療であり、
すべての症例に有効とは限りません。
9.まとめ
PDF-FD(C-PRP)療法は、患者自身の血液から血小板由来成長因子を抽出し、細胞成分を除去(Cell Free)したうえで凍結乾燥する再生医療的アプローチです。
PRP療法と同様に成長因子の働きを活用しますが、保存性や再現性を高める設計により、計画的な治療が可能となっています。
適応は、変形性膝関節症などの整形外科領域、たるみ改善や肌質改善などの美肌治療、AGA・薄毛、不妊治療など幅広く検討されています。
整形外科領域では比較的エビデンスの蓄積が進んでいる一方、美容・AGA・不妊分野では研究段階の要素も多く、補助的治療としての位置づけが妥当です。
また、EDや歯周病、慢性創傷といった分野では、現時点では「可能性が示唆されている段階」であり、慎重な解釈が求められます。
安全性の面では自己血由来であることからアレルギーリスクは低いと考えられますが、注射に伴う一過性の反応や感染管理の重要性は無視できません。さらに、適切な管理体制で実施されているかの確認も重要です。
PDF-FD(C-PRP)療法は「治す」「再生する」ことを保証する治療ではありませんが、症状や環境を整えるための選択肢の一つとして、医師の十分な説明と理解のもとで検討する価値のある医療的選択肢の一つといえるでしょう。
<参照論文>
【1】Andia I, Perez-Valle A, Del Amo C, Maffulli N. Freeze-Drying of Platelet-Rich Plasma: The Quest for Standardization. Int J Mol Sci. 2020;21(18):6904.
PMID: 31575111 PMCID: PMC7010512 DOI: 10.31616/asj.2019.0048
日本語要旨:PRP療法は製剤差・投与量・プロトコルの不均一性が臨床の再現性を阻害する。
一方、凍結乾燥(FD)は保管性と“オフ・ザ・シェルフ化”を高め、サイト間での品質均一化に寄与し得る。
しかし、標準化された製造・品質管理(成分、活性、無菌性等)の枠組み整備が不可欠と論じる。
【2】Kinoshita H, Orita S, Inage K, et al. Freeze-Dried Platelet-Rich Plasma Induces Osteoblast Proliferation via Platelet-Derived Growth Factor Receptor-Mediated Signal Transduction. Asian Spine J. 2020;14(1):1-8.
PMID: 31575111 PMCID: PMC7010512 DOI: 10.31616/asj.2019.0048
日本語要旨:FD-PRPは保存後でもPDGF受容体~ERK経路を介して骨芽細胞増殖を促進し、成長因子活性が保たれ得ることを示した。FD化により保管性を上げつつ、主要GFの機能を維持できる可能性を支持する基礎データ。
【3】Li T, Lu H, Zhou L, et al. Growth factors-based platelet lysate rejuvenates skin against ageing through NF-κB signalling pathway: In vitro and in vivo mechanistic and clinical studies. Cell Prolif. 2022;55(4):e13212.
PMID: 35274780 PMCID: PMC9055903 DOI: 10.1111/cpr.13212
日本語要旨:血小板ライセート(細胞成分を除いた“因子”中心の製剤)が、細胞・動物モデルで老化関連変化を抑制し、臨床(後ろ向き)でも皮膚外観の改善が示されたと報告。機序としてNF-κB経路抑制などを提示している。
【4】Shirata T, Kato Y. Can intra-articular injection of freeze-dried platelet-derived factor concentrate regenerate articular cartilage in the knee joint? Regen Ther. 2019;11:5-7.
PMID: 31193113 PMCID: PMC6517792 DOI: 10.1016/j.reth.2019.03.005
日本語要旨:膝OAに対し凍結乾燥PFCの関節内投与を検討。疼痛やQOL指標の一部は改善する一方、機械症状や可動域などは有意に改善しない可能性が示され、作用は“軟骨再生”というより抗炎症・症状緩和の寄与が大きい可能性が議論される。
【5】Ohtsuru T, Otsuji M, Nakanishi J, et al. Freeze-dried noncoagulating platelet-derived factor concentrate is a safe and effective treatment for early knee osteoarthritis. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 20
PMID: 37380754 PMCID: PMC10598078 DOI: 10.1007/s00167-023-07414-y
日本語要旨:早期膝OAに対するPFC-FD注射の前向き研究。12か月で一定割合に臨床的改善を示し、主な有害事象は注射部位の痛み・腫脹など非重篤が中心。疾患重症度が高い群では反応が乏しい傾向も示され、適応の見極めの重要性が示唆される。
【6】Koga T, Nakatani Y, Ohba S, et al. Clinical Safety Assessment of Autologous Freeze-Drying Platelet-Rich Plasma for Bone Regeneration in Maxillary Sinus Floor Augmentation: A Pilot Study. J Clin Med. 2021;10(8):1678.
PMID: 33919726 PMCID: PMC8070716 DOI: 10.3390/jcm10081678
日本語要旨:自家FD-PRP(濃縮FD-PRP)を上顎洞底挙上術の骨造成に併用した少数例パイロット。重篤な全身合併症や過度の炎症反応などは認めず、手技に伴う通常範囲の経過で安全に実施できたと報告。小規模単群で有効性は今後の検討課題。
【7】 Zhang XX, Ji YX, Zhou MC, et al. Platelet-Rich Plasma for Androgenetic Alopecia: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. J Cutan Med Surg. 2023;27(5):504-508.
PMID: 37533146 DOI: 10.1177/12034754231191461
日本語要旨:AGAに対するPRPのRCTを統合し、一定期間で毛髪密度の改善を示す解析。重篤な有害事象は少ない一方、研究間の異質性(調製法・回数・評価指標)が課題として残る。
【8】Mouanness M, Ali-Bynom S, Jackman J, Seckin S, Merhi Z. Use of Intra-uterine Injection of Platelet-rich Plasma (PRP) for Endometrial Receptivity and Thickness: a Literature Review of the Mechanisms of Action. Reprod Sci. 2021;28(6):1659-1670.
PMID: 33886116 DOI: 10.1007/s43032-021-00579-2
日本語要旨:薄い子宮内膜や反復着床不全に対する子宮内PRP投与について、考え得る作用機序(血管新生、炎症制御、内膜修復など)と臨床研究を整理。内膜厚の改善は示唆される一方、妊娠転帰は研究により結果が割れ、標準化された試験が必要とされる。
【9】Poulios E, Mykoniatis I, Pyrgidis N, et al. Platelet-Rich Plasma (PRP) Improves Erectile Function: A Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled Clinical Trial. J Sex Med. 2021;18(5):926-935.
PMID: 33906807 DOI: 10.1016/j.jsxm.2021.03.008
日本語要旨:EDに対する陰茎海綿体内PRP注射の二重盲検RCT。勃起機能指標の改善が報告され、治療選択肢としての可能性が示唆された。一方、症例数や追跡期間などの制約があり、追加の高品質研究が必要と結論。
【10】Masterson TA, Molina M, Ledesma B, et al. Platelet-rich Plasma for the Treatment of Erectile Dysfunction: A Prospective, Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Clinical Trial. J Urol. 2023;210(1):154-161.
PMID: 37120727 PMCID: PMC10330773 DOI: 10.1097/JU.0000000000003481
日本語要旨:軽~中等度EDでPRPとプラセボを比較した二重盲検RCT。安全性は概ね良好だが、主要評価で群間差を示さなかった。ED領域は結果が一貫せず、適応・投与法・評価時期の最適化が課題であることを示す。
【11】Ardila CM, et al. Clinical Efficacy of Platelet Derivatives in Periodontal Tissue Regeneration: An Umbrella Review. Int J Dent. 2023;2023:1099013.
PMID: 37435111 PMCID: PMC10332916 DOI: 10.1155/2023/1099013
日本語要旨:歯周欠損や歯肉退縮に対する血小板由来製剤(PRP/PRF等)のシステマティックレビュー群を統合評価。一定の臨床改善が示唆される一方、研究品質や異質性により結論は限定的で、標準化と高品質試験の必要性が強調される。
【12】Hirose Y, Fujita C, Aoki A, et al. A comparative study on the influences of platelet-rich plasma vs its derived cytokines on skin rejuvenation.European Journal of Plastic Surgery. 2023.
DOI: 10.1007/s00238-023-02063-3.
日本語要旨:本研究は、PRP(高濃度血小板血漿)療法とその誘導因子(無細胞 PRP, PRP-C)療法を比較した実臨床研究である。1,340例の肌老化治療症例を対象に、PRP と無細胞 PRP の肌理改善・弾力性改善・小じわ改善を 8 週間にわたり評価した。その結果、両群とも統計的に肌の状態が改善したものの、PRP 群と無細胞 PRP 群の間で有意差は認められなかった。これらの結果は、両療法が肌老化治療において類似した臨床効果を示す可能性を示唆している。効果持続や長期成績についてはさらなる研究が必要である。
【13】戸田佳孝,増田研一.変形性膝関節症に対する濃縮血小板由来成長因子注射と濃縮血漿由来成長因子注射の4週後の治療成績比較.整形・災害外科.2025;68:285–288.
DOI: 10.18888/se.0000003320
日本語要旨:51例の変形性膝関節症(膝OA)患者に対して,凍結乾燥した濃縮成長因子を血漿由来因子(PDF)と血小板由来因子(PFC)に無作為に分け関節内注射し,4週後の治療成績を比較した。PFC群(n=24)よりPDF群(n=27)の方が治療後の膝の痛みに関するVASが有意に小さく(p<0.001),治療前後でのVAS改善率が有意に大きかった(p<0.001)。以上より,短期的には血漿由来製剤の方が血小板由来製剤よりも膝OAの疼痛を和らげる作用が優れていると予測した。
SNS Share
\ この記事をシェアする /

