京都駅前 まつたに乳腺・形成外科クリニックでは、乳腺専門医と形成外科専門医の両資格を持つ松谷崇弘院長が、標準治療を土台に乳房の形にも配慮した乳がん手術を日帰りで行っています。部分切除から全摘+インプラント乳房再建まで、治療の考え方と流れ、注意点を院長への取材をもとに解説します。
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乳がんの日帰り手術を行う京都駅前 まつたに乳腺・形成外科クリニックの記事アイキャッチ】
乳がんの手術というと、1週間前後入院するものと考える方が多いのではないでしょうか。しかし欧米では、日帰りや短期滞在での乳がん手術が広く行われています。
京都駅八条口から徒歩30秒の「京都駅前 まつたに乳腺・形成外科クリニック」は、乳房部分切除術から乳房全摘術+インプラントによる乳房再建まで、乳がん手術を日帰りで行うクリニックです。院長の松谷崇弘先生は、乳腺専門医と形成外科専門医の両方の資格を持つ医師です。標準治療を土台に、がんを治すことと乳房の形をできるだけ保つことの両方を、一人の医師が最初から見据えて治療計画を立てます。
本記事では松谷院長への取材をもとに、同院の乳がん治療の考え方、日帰り手術の特徴と流れ、術後の生活、そしてリスクや限界までを解説します。
乳がん手術は「日帰り」でもできる?

※写真はイメージです
1)日本では入院が一般的、欧米では日帰り・短期滞在も広く実施
日本では、乳がんの手術を受けると1週間前後入院するのが一般的です。手厚い医療保険制度のもとで、術後しばらくは病院で過ごすことが「安心」と受け止められてきた背景があります。
一方、米国や欧州では、日帰りや短期滞在での乳がん手術が広く行われています。乳がんの日帰り手術に関する研究をまとめた系統的レビューでは、日帰り手術は安全で、合併症の発生率も入院手術と同等、患者さんの満足度も高いと結論づけています【1】。ただし、このレビューが対象とした11件の研究はすべて観察研究で、無作為化比較試験はなく、さらなる研究が必要とも述べています。
米国の単一施設が、術後の回復を早める取り組み(ERAS)を導入した前後で乳房切除術の成績を比べた研究では、当日に退院した患者さんの割合が7.2%から58.6%に増えました。それでも術後の合併症は増えず、導入後のほうが少なかったと報告されています(導入後32.9%、導入前52.4%)【2】。
2)日帰り手術を支える条件
もちろん、誰でも日帰りにできるわけではありません。安全に日帰り手術を行うには、次のような条件がそろう必要があります。
- 心臓や肺などに大きな持病がなく、全身状態が安定している
- 手術時間が比較的短く、体への負担が抑えられる術式である
- 麻酔からの回復を確認したうえで、安全に帰宅できる
- 帰宅後に困ったとき、クリニックへ相談できる体制がある
国内では、乳がん手術を日帰りで行う医療機関はまだ多くありません。日帰り手術を行う施設でも、対象を早期のがんや一部のタイプに限ることが少なくありません。
![]() 「日帰り手術は、翌日から社会生活に送る事が最大の目的です。特に高齢者様は、入院生活で筋力の低下がみられる場合があります。一人ひとりの社会的背景状況に合った手段を考えることが大切です。」 |
京都駅前 まつたに乳腺・形成外科クリニックとは

1)クリニックの5つの特徴
① 乳腺専門医×形成外科専門医の院長が診療
院長の松谷崇弘先生は、日本乳癌学会の乳腺専門医と、日本形成外科学会の形成外科専門医の両方の資格を持っています。松谷院長への取材によると、2026年10月時点で両方の資格を持つ医師は国内に7名、さらに日本外科学会の外科専門医を加えた3つの資格を持つ医師は4名とのことです。
松谷院長自身は「トリプル資格保持にこだわっている訳ではない」と話します。それでも、乳房再建を見越した乳がん治療、乳房の変形をできるだけ抑える乳房部分切除など、乳腺外科と形成外科が重なり合う領域を一人で担えることが、同院の強みです。
② 検診から治療・術後管理・乳房再建まで
乳がん検診、乳がんの診断と治療、術後の管理、乳房再建までを一つのクリニックで行います。同じ医師が、最初の検査から治療後の経過まで継続して診療します。
③ 乳がん手術は日帰りで
乳房部分切除術から、乳房全摘術+シリコンインプラントによる乳房再建まで、乳がん外科的治療を日帰りで行います。ご高齢の方でも、全身状態や持病、帰宅後の支援体制などの条件が整えば、日帰りで手術を受けられる場合があります。
④ 検査時の心理的な負担に配慮
診察では触診を行わず、エコー(超音波)とマンモグラフィを用いて診断します。マンモグラフィは女性技師が担当し、院長以外のスタッフは全員女性です。検査時には女性スタッフが付き添い、中待合は女性患者さん専用のエリアです。火曜・木曜の午前は、女性医師が診療を担当しています。

⑤ 京都駅八条口から徒歩30秒
JR京都駅の八条口(南側)から徒歩1分です。京都府内だけでなく、静岡県など遠方から手術を受けに来る方もいます。
2)院長プロフィール

| 項目 | 内容 |
| 氏名 | 松谷 崇弘(まつたに たかひろ)先生/京都駅前 まつたに乳腺・形成外科クリニック 院長 |
| 資格 | 医学博士/日本乳癌学会 乳腺専門医・乳腺指導医/日本形成外科学会 専門医/日本外科学会 外科専門医/がん治療認定医/マンモグラフィ読影認定医 |
| 所属学会 | 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会 評議員 |
| 経歴 | 2001年 大阪医科大学 医学部 卒業/京都大学医学部附属病院(外科)臨床研修 2003年 大阪医科大学 大学院 医学研究科 2005年 大阪大学 大学院 医学研究科 免疫動態学 2007年 大阪医科大学 形成外科 2009年 星ヶ丘厚生年金病院 形成外科 2010年 城山病院 形成外科 2012年 加藤乳腺クリニック 乳腺外科 2016年 康生会 武田病院 乳腺外科・形成外科 2022年 京都駅前 まつたに乳腺・形成外科クリニック 開院 |
| 実績 | 検診 100,000例/乳がん執刀 1000例/乳房再建 300例/抗がん剤治療 500例(2012年4月〜2026年8月) |
3)基本情報
| 項目 | 内容 |
| 医院名 | 医療法人 歩実花会 京都駅前 まつたに乳腺・形成外科クリニック |
| 所在地 | 〒601-8002 京都市南区東九条上殿田町53-1 第一土木ビル5階 |
| アクセス | JR京都駅 八条口(南側)より徒歩1 |
| 電話番号 | 075-671-5678 |
| 診療科目 | 乳腺外科/形成外科/美容外科/美容皮膚科/腫瘍内科/外科 |
| 診療時間 | 月・火・金 9:00〜12:00、13:00〜16:00、16:30〜19:00/木・土 9:00〜12:00、13:00〜16:00/水 9:00〜12:00 |
| 休診日 | 日曜日・祝日 |
| 女性医師の診療 | 火曜・木曜 午前 |
| 予約 | Web予約・LINE予約・電話(予約料金は不要) |
| 公式サイト | 京都駅前 まつたに乳腺・形成外科クリニック |

同院の乳がん治療の考え方
1)土台は標準治療――「魔法のような治療はない」
乳がん治療で患者さんに説明しているリスクや限界について尋ねると、松谷院長の答えは明快でした。
![]() 「乳がんの治療に、魔法のような手術手技も薬もありません。忠実に標準治療を行えば、標準的な結果が得られる。それ以上でも以下でもないんです」 |
標準治療とは、臨床試験などの科学的根拠にもとづいて、現時点で最も推奨される治療のことです。国内では日本乳癌学会の診療ガイドラインがその指針となっています【3】。
開業医として一人で診療するからこそ、独りよがりの治療にならないよう、標準治療を必ず判断の基準に置く。それが松谷院長の基本姿勢です。同院の乳がん治療は、保険診療の範囲で、標準治療に沿って行われます。
2)最小限の切除で、根治性を保つ

乳がんの手術では「がんを取り残さないこと」と「乳房をできるだけ残すこと」の両立が課題になります。
松谷院長自身も、2012年4月〜2020年12月に同一術者として執刀したStage IVを除く原発性乳がん324例を後方視的に解析し、オンコプラスティックサージャリーにおける局所再発危険因子を検討しています。解析では、術式選択や乳房再建、腫瘍直上皮膚の切除、断端陽性の有無などの局所治療因子と局所再発との有意な関連は認められず、年齢、T・N分類、ホルモン受容体、Ki-67、核異型度などの患者・腫瘍背景因子が局所再発と関連しました【4】。ただし、単一術者324例の後方視的解析であり、断端陽性例では追加切除や放射線照射などの追加治療が行われているため、「切除範囲を狭くしても一律に安全」という意味ではありません。
たくさん切除すれば安心かというと、そうではありません。米国の大規模な臨床試験(NSABP B-06)では、乳房部分切除術(温存手術)と乳房全摘術を20年にわたって比べ、生存率に差はありませんでした。また温存手術に放射線治療を加えることで、同じ側の乳房での再発が大きく減ることも示されています【5】。イタリアの臨床試験でも、温存手術と乳房切除術の20年後の死亡率は同等でした【6】。
このように、適切に患者さんを選んだ早期乳がんでは、乳房部分切除術+術後放射線治療と乳房切除術で、長期の生存率に大きな差がないことが無作為化比較試験で示されています。ただし、それは切除した組織の断端(切り口)にがんが残っていないことが大前提です。
切除の範囲についても、「広く切るほど安全」ではないことがわかっています。米国の外科腫瘍学会と放射線腫瘍学会の合同ガイドラインは、33研究・28,162例の解析にもとづき、切除断端にがんが露出していなければ十分(no ink on tumor)という基準を示しました。一方で、断端にがんが露出している場合は、同じ側の乳房での再発リスクが少なくとも2倍になります【7】。
![]() 「取らなすぎれば、結局は取り残しになります。標準治療の枠組みのなかで、どこまでを最小限の切除とするか。そこは私たちの経験にもとづく判断です」 |
3)リンパ節の手術も「必要な分だけ」に
脇の下(腋窩)のリンパ節の手術も、縮小する方向に進んでいます。
米国のACOSOG Z0011試験では、センチネルリンパ節(がんが最初に転移するリンパ節)に1〜2個の転移がある温存手術の患者さんで、腋窩のリンパ節をまとめて切除する手術(腋窩郭清)を省略しても、10年生存率は劣りませんでした(省略群86.3%、郭清群83.6%)【8】。
さらにドイツ・オーストリアで行われたINSEMA試験では、条件を満たす早期乳がんの温存手術で、センチネルリンパ節生検そのものを省略しても、5年浸潤性無病生存率は非劣性でした(省略群91.9%、生検群91.7%)【9】。ただし腋窩での再発はわずかに多く(1.0%と0.3%)、すべての方で一律に省略できる段階ではありません。
![]() 「不安だから、とりあえず多めに取っておく。そういう時代は、もう終わりにしましょう。今の乳がん治療では、脇のリンパ節の手術も省略する流れになっています。たくさん取ればよいというわけではありません。必要な分だけを切除して乳房の変形を来たさなければ、より良い形態の乳房が残りますし、どうしても全摘を避けられない場合は、乳房再建すればいいんです」 |
4)手術は治療の一部――トータルで考える
松谷院長は、乳がんの手術を「局所治療の一環」と位置づけています。乳房を残すか、全摘するかは、乳がん治療の一部にすぎません。
乳がんの治療は、手術に加えて、ホルモン療法、抗がん剤、分子標的薬といった薬物療法や放射線治療を組み合わせて行います。がんのタイプや進行度に合わせて、治療全体をどう組み立てるかが大切です。同院では、薬物療法も含めて治療全体を管理します。
![]() 「乳がんの治療は、手術だけで完結するものではありません。手術はあくまで局所治療の一つです。がんの性質や進行度を踏まえ、必要に応じてホルモン療法や抗がん剤、放射線治療も組み合わせながら、治療全体を考えていきます。」 |
5)変形のしやすさは、ステージだけでは決まらない
乳房部分切除術のあとに乳房がどれくらい変形するかは、がんのステージだけでは決まりません。がんが乳房の下側にあるのか、乳首の真下にあるのか、デコルテに近い位置にあるのかによって、変形の程度はまったく違います。
乳房の大きさも影響します。同院では「乳房が小さめの方にとっては、乳がんが1cmでも、著しい変形を来たす場合がある」と説明しています。温存手術で形が大きく損なわれる場合は、乳房全摘術と乳房再建を組み合わせる選択肢もあります。
がんの治療と乳房の形の両方を考えながら手術を計画する考え方を、オンコプラスティックサージャリーといいます。ただし松谷院長は、目的はあくまでがんの治療であり、形を整えるのはその延長だと考えています。必ず乳房がきれいになることを前提とした治療ではない点も、あらかじめ理解しておくことが大切です。
![]() 「乳房の変形は、がんの大きさやステージだけで決まるわけではありません。がんの位置や乳房の大きさによっても変わります。がんを適切に切除することを優先しながら、手術後の乳房形態にも配慮し、必要であれば乳房再建も含めて検討します。」 |
同院の日帰り乳がん手術の特徴

1)部分切除から全摘+インプラント同時再建まで日帰りで
同院では、乳房部分切除術だけでなく、乳房全摘術、さらに全摘と同時にシリコンインプラントで乳房を再建する手術まで、日帰りで行います。ご自身のお腹や背中の組織を血管ごと移植する再建(自家組織再建)は対象外です。
乳房切除と同時に人工物で再建する手術を当日退院で行った研究をまとめた系統的レビューでは、4研究・574例を解析し、合併症の発生率は当日退院33%、入院34%と同等でした。再手術や再入院の増加も報告されていません【10】。米国の大学病院が乳房切除+同時再建の当日退院プロトコルを1年間運用した報告もあります【11】。
2)手術時間と麻酔、帰宅まで
同院で行う乳がん手術は、1〜1.5時間で終わります。大半の手術は局所麻酔で行うことができ、全身麻酔の場合も日帰りで行います。手術後は2〜3時間ほど院内で経過を観察し、体調を確認してから帰宅します。
3)80代でも、条件が整えば日帰りで
同院では、86歳の方の日帰り手術を行った実績があります。ただし、日帰りが可能かどうかは年齢だけで決まるものではありません。全身状態、心臓や肺などの持病(併存疾患)、手術の方法、帰宅後に付き添える家族などの支援体制を踏まえて、一人ひとり判断します。
![]() 「90歳のおばあちゃんが1週間入院したら、足が弱って立てなくなることもあるんです。ですから当院では、86歳の方でも日帰りでお帰りいただいています。もちろん、心臓に問題がないなど、持病の状態が安定していることが前提です。今日も午前中に80代の方の手術を行い、その日のうちにお帰りいただきました。標準治療の枠組みのなかで、最小限の組織切除で治療する。その究極のかたちが日帰り乳がん手術だと考えています」 |
高齢の方は、入院をきっかけに歩行や身の回りの動作が衰え、退院後も元の生活に戻りにくくなることが知られています(入院関連機能障害)【12】。そのため、適切な患者さんでは、入院期間を短くすることが生活機能の維持につながる可能性があります。ただし、乳がんの日帰り手術によって機能の低下を直接防げることを示した研究ではありません。
4)仕事や家庭を長く離れられない方に
自営業の方や、非常勤・パートで働く方など、1週間も仕事を休めない方は少なくありません。日帰り手術は、入院による仕事や家庭への影響を抑えやすい選択肢になり得ます。
一方で、ご高齢の一人暮らしの方など、帰宅後の生活に不安がある場合もあります。日帰りが適しているかどうかは、ご家族の状況も含めて事前に相談したうえで決めていきます。
![]() 「仕事や家庭の事情で、長く入院できない方もいらっしゃいます。日帰り手術は、そのような方にとって一つの選択肢になります。当院で手術を受けられた患者様全員が、手術当日に帰宅されます。当日から普段通りの活動をなさいます。職場復帰は、体調に合わせて調整してください。女性医師でしたが、両側全摘後日の4日後から普通にお仕事なさっておられました。」 |
乳腺外科と形成外科を一人の医師が担うメリット

1)診療科をまたがず、最初から両方を見据えた説明を受けられる
一般的な総合病院では、乳がんの治療は乳腺外科、乳房の形や再建は形成外科と、別々の診療科が担当します。両科が連携して治療を進めますが、患者さんは二つの診療科を受診し、それぞれから説明を受けることが一般的です。
同院では、がんの治療と乳房の形の両方を見据えた説明を、最初から一人の医師から受けられます。
2)「どこまで切るか」と「どんな形になるか」を一貫して判断できる
診療科が分かれている場合も、乳腺外科と形成外科が連携して治療方針を検討します。一方、同院では一人の医師が両方の専門性を持つため、切除範囲と術後の形を一つの診療計画として相談しやすい点が特徴です。松谷院長は、ご自身の経験を次のように話します。
![]() 「できるだけ大きめに取りたいとか、できるだけ取らないで欲しいとか、乳腺外科医と形成外科医が互いに拮抗する世界なんです。両方の視点を一人で持っていれば、そこを最初から一つの計画として考えられます」 |
3)担当医が変わらない
大きな病院では、異動などで担当医が変わることもあります。同院では、検診から手術、術後のフォローまで、同じ医師が継続して診療します。
4)多くの専門家で診る体制という選択肢もある
一方で、松谷院長は、複数の専門家が話し合って治療方針を決める総合病院の体制にも大切な価値があると話します。どちらが良いということではなく、ご自身の考え方に合った医療機関を選ぶことが大切です。役割の違いとしてご覧ください。
| 観点 | 複数の診療科で分担する体制(総合病院など) | 京都駅前 まつたに乳腺・形成外科クリニック |
| 担当する医師 | 乳腺外科・形成外科などの専門医が分担 | 乳腺専門医・形成外科専門医の院長が一貫して担当 |
| 治療方針の決め方 | 複数の専門家で協議して決定 | 標準治療を基準に、院長が両方の視点から計画 |
| 入院 | 入院での手術が一般的 | 原則として日帰り |
| 向いている方 | 多くの専門家に関わってほしい方 | 治療と乳房の形を一人の医師に相談したい方 |
乳房温存手術・乳房切除術・乳房再建の違い
乳がんの手術は、がんの大きさや広がり、乳房の大きさ、ご本人の希望などから選びます。同院で行う主な手術は次のとおりです。
| 手術 | 主な対象・特徴 |
| 乳房部分切除術(乳房温存手術) | 同院では主に腫瘍径3cm以下を一つの目安とし、乳房内の広がり、離れた場所に複数のがんがないか、腫瘍と乳房の大きさのバランス、術後の放射線治療が可能か、十分な切除と整容性の両立が可能かなどを踏まえて適応を判断。3cmを超えても、術前薬物療法でがんが小さくなった場合などに適応となることがある。術後に放射線治療を組み合わせる |
| 乳房切除術(全摘) | 乳房内の広い範囲にがんがある、2つ以上のがんが離れた場所にある、温存手術では乳房が大きく変形することが予想される場合など。進行したがんでは、術前薬物療法後の状態も含めて術式を判断する |
| 皮下乳腺全摘術 | 乳輪・乳頭や皮膚を残して乳腺を切除する方法(乳輪乳頭温存皮下乳腺全摘術/皮膚温存皮下乳腺全摘術)。同院では、全摘が必要な症例の多くをこの方法で対応 |
| 乳房再建 | 全摘と同時にシリコンインプラントで再建する方法(保険適用)。同院では脂肪注入による乳房再建にも対応 |
どの手術が適しているかは、検査結果をもとに医師と相談して決めます。乳房再建を希望するかどうかも、手術前に相談しておくことが大切です。
診察から手術、術後フォローまでの流れ


| ステップ | 内容 |
| 1. 予約 | Web予約・LINE予約・電話で予約します。 |
| 2. 診察・画像検査 | エコーとマンモグラフィで乳房の状態を調べます。触診は行いません。 |
| 3. 精密検査・診断 | 必要に応じて組織を採取する検査などを行い、乳がんかどうか、どのようなタイプかを診断します。 |
| 4. 治療方針の相談 | 検査結果をもとに、手術の方法、乳房再建の有無、薬物療法などを相談します。 |
| 5. 手術(日帰り) | 手術は1〜1.5時間ほど。術後2〜3時間の経過観察のあと帰宅します。 |
| 6. 術後のフォロー | 傷の状態や病理検査の結果を確認し、必要に応じて放射線治療や薬物療法へ進みます。 |
術後の生活と注意点
同院では、経過が良好であれば、手術の翌日から日常生活に戻ることを基本としています。ただし、仕事に復帰する時期は、手術の方法や仕事の内容、体調によって異なります。
腕を大きく動かす作業や、重い荷物の積み下ろしなどは、術後1週間ほどを目安に控えるよう説明しています。具体的な時期は医師の指示に従ってください。社会生活を送るうえで、術後に安静を徹底するのは現実的ではありません。日常生活の範囲で、できることを続けながら回復を目指します。
症例紹介
同院で日帰りの乳がん手術を受けた方の症例を紹介します。治療の内容や経過、術後の乳房の形には個人差があります。
1)症例1:40代・乳房部分切除術(術式)
【症例写真:術前・術後(クリニックよりご提供)】
| 項目 | 内容 |
| 年代・性別 | 40代・女性 |
| 診断 | 乳がん(病期Stage I・ルミナールタイプ:) |
| 治療内容 | 乳房部分切除術+放射線治療 |
| 麻酔・手術時間 | 全身麻酔/約1時間 |
| 入院の有無 | 日帰り(術後4時間の経過観察後に帰宅) |
| 術後の経過 | 写真撮影時期:術後6か月 |
| 費用の目安 | 保険診療(3割負担で約12万円。高額療養費制度の対象) |
| 主なリスク・副作用 | 出血、感染、漿液腫、傷の痛みやひきつれ、乳房の変形 |
リスク・限界・再発について
乳がんの手術にはリスクが伴います。手術を受ける前に、次のような点を理解しておくことが大切です。
- 出血、感染、傷の痛みやひきつれ、皮下に液体がたまる(漿液腫)などの合併症が起こることがあります
- 切除した組織の断端にがんが残っていた場合、追加の切除や乳房切除術が必要になることがあります
- 手術後も、局所の再発や他の臓器への転移が起こる可能性はゼロではありません
- インプラントによる再建では、被膜拘縮や破損などにより、将来、入れ替えや追加の手術が必要になることがあります
- 乳房の形を考慮した手術であっても、術後の乳房の形が必ずきれいになることを約束するものではありません
- 全身状態やご家族の状況によっては、日帰りではなく入院での手術が適している場合もあります
標準治療を行えば、標準的な結果が得られる。逆にいえば、それ以上の結果を約束できる治療はありません。こうした限界も含めて説明を受け、納得したうえで治療を選ぶことが大切です。
費用について
同院の乳がん治療は、保険診療を基本としています。乳がんの手術、全摘と同時に行うシリコンインプラントによる乳房再建は、いずれも保険適用です。
自己負担額は、手術の内容や検査、薬物療法の有無によって異なります。医療費が高額になった場合は、高額療養費制度により、ひと月の自己負担額に上限が設けられます。具体的な費用は、受診時にクリニックへご確認ください。
こんな方に
- 仕事や家庭の事情で、長く入院することが難しい
- 乳がんの治療と乳房の形について、一人の医師にまとめて相談したい
- 乳房全摘と同時に、インプラントによる乳房再建を考えている
- ご高齢のご家族が、入院によって体力が落ちることを心配している
- 検査時の恥ずかしさや心理的な負担をできるだけ減らしたい
日帰り手術が適しているかどうかは、診察と検査の結果をもとに判断します。
京都駅前 まつたに乳腺・形成外科クリニックの乳がん治療に関するよくある質問
Q1. 日帰りで帰宅して、不安はありませんか?
手術後は2〜3時間ほど院内で経過を観察し、体調を確認してから帰宅します。同院の乳がん手術は1〜1.5時間で終わります。適切な患者選択と術後支援体制のもとでは、当日退院が選択肢になることがあります。欧米では日帰りや短期滞在での手術も広く行われており、観察研究を中心に安全性を示す報告があります【1】【10】。
Q2. 高齢でも日帰りで手術を受けられますか?
80代の方でも、日帰りで手術を受けられる場合があります。同院では86歳の方の日帰り手術も行っています。ただし、年齢だけでなく、全身状態や持病、手術の方法、帰宅後の支援体制などを踏まえて個別に判断します。ご家族の状況も含めて、事前に相談して決めます。
Q3. 仕事はいつから再開できますか?
同院では、経過が良好であれば、手術の翌日から日常生活に戻ることを基本としています。仕事に復帰する時期は、手術の方法や仕事の内容、体調によって異なります。腕を大きく動かす作業や重い荷物の積み下ろしは、術後1週間ほどを目安に控え、医師の指示に従ってください。
Q4. 温存手術と全摘は、どちらがよいですか?
適切に患者さんを選んだ早期乳がんでは、温存手術+放射線治療と全摘で、長期の生存率に大きな差がないことが無作為化比較試験で示されています【5】【6】。がんの大きさや位置、乳房の大きさによって術後の変形の程度が変わるため、検査結果をもとに医師と相談して決めます。
Q5. 乳房再建は、手術と同時にできますか?
同院では、乳房全摘と同時にシリコンインプラントで乳房を再建する手術を、日帰りで行っています(保険適用)。お腹や背中の組織を血管ごと移植する再建(自家組織再建)は行っていません。
Q6. クリニックでも標準的な乳がん治療を受けられますか?
同院では、日本乳癌学会の診療ガイドラインに沿った標準治療を基本としています【3】。乳がんの治療では、病期やがんのタイプ、必要な薬物療法・放射線治療、持病などによって、必要な診療体制が異なります。必要に応じて、連携する医療機関での治療も含めて検討します。
院長からのメッセージ

「乳がんの治療に、魔法のような治療はありません。だからこそ私は、標準治療を土台に、必要な分だけを切除し、乳房の形まで見据えて治療を組み立てています。
乳がんの手術は、多くの場合、入院しなくても受けられます。仕事や家庭の事情で長く休めない方、ご高齢で入院による体力の低下が心配な方も、まずはご相談ください。がんの治療と乳房の形、その両方を、最初から一緒に考えていきましょう。」
まとめ|治すことと、形を残すことを一人の医師が考える

乳がんの手術は、入院して受けるものとは限りません。欧米では日帰りや短期滞在での手術も広く行われ、適切に患者さんを選び、術後の支援体制を整えれば安全に行えることが、観察研究を中心に報告されています。
京都駅前 まつたに乳腺・形成外科クリニックでは、乳腺専門医と形成外科専門医の両方の資格を持つ松谷崇弘院長が、標準治療を土台に、必要な分だけを切除し、乳房の形まで見据えて治療を計画します。乳房部分切除術から、全摘+インプラントによる同時再建まで、日帰りで行います。
どの治療が適しているかは、がんの状態や全身状態、生活の事情によって変わります。リスクや限界も含めて医師から説明を受け、納得したうえで治療を選びましょう。
*本記事の情報は執筆時点のものです。診療時間・治療内容は変更される場合があります。最新情報は公式サイトまたはクリニックに直接ご確認ください。
参考文献(エビデンス)
本記事の科学的根拠として、以下の文献を参照しています。
【1】Marla S, Stallard S. Systematic review of day surgery for breast cancer. Int J Surg. 2009;7(4):318-323.
PMID: 19427922 DOI: 10.1016/j.ijsu.2009.04.015
日本語要旨:乳がんに対する日帰り手術の利点と欠点を検討した系統的レビュー。無作為化比較試験は見つからず、11件の観察研究を対象とした。日帰り手術は安全で合併症の発生率は同等、患者満足度や心理面の状態も良好と結論づけている。一方で、無作為化比較試験によるエビデンスがなく、さらなる研究が必要とも述べている。
【2】Jogerst K, Thomas O, Kosiorek HE, Gray R, Cronin P, Casey W 3rd, Rebecca A, Craner R, Young-Fadok T, Pockaj B. Same-Day Discharge After Mastectomy: Breast Cancer Surgery in the Era of ERAS®. Ann Surg Oncol. 2020;27(9):3436-3445.
PMID: 32221736 DOI: 10.1245/s10434-020-08386-w
日本語要旨:米国の単一施設で、術後回復強化プロトコル(ERAS)導入前347例と導入後140例の乳房切除術を比較した研究。当日退院の割合は導入前7.2%から導入後58.6%に増加し、術後合併症は導入後32.9%、導入前52.4%で、当日退院の増加による合併症の増加はみられなかった。
【3】日本乳癌学会 編. 乳癌診療ガイドライン 2026年版(第6版). 金原出版; 2026.
ISBN: 978-4-307-20511-5
日本語要旨:日本乳癌学会による乳がん診療の指針。手術療法、放射線療法、薬物療法などについて、科学的根拠にもとづく推奨を示している。2026年6月発行の最新版(第6版)。
【4】松谷崇弘. Oncoplastic breast surgeryにおける局所再発危険因子―必要最小限の組織切除のあり方―. Oncoplastic Breast Surgery. 2021;6(3):52-59.
DOI: 10.20699/jopbs.6.3_52
日本語要旨:2012年4月〜2020年12月に同一術者が執刀したStage IVを除く原発性乳がん324例を対象に、オンコプラスティックサージャリー後の局所再発危険因子を後方視的に解析した原著論文。観察期間中央値は1,474日(約4年)で、局所再発は15例(4.63%)だった。術式選択、乳房再建、腫瘍直上皮膚切除、断端陽性などの局所治療因子と局所再発には有意な関連を認めず、年齢(45歳未満)、T・N分類、ホルモン受容体陰性、Ki-67値20%以上、核異型度(Grade 3)などの患者・腫瘍背景因子と、抗がん剤治療の有無との関連が示された。断端陽性例には原則として追加切除を行い、追加切除が行えない場合にはboost照射を行っており、最小限切除の適用には個別判断が必要である。
【5】Fisher B, Anderson S, Bryant J, Margolese RG, Deutsch M, Fisher ER, Jeong JH, Wolmark N. Twenty-year follow-up of a randomized trial comparing total mastectomy, lumpectomy, and lumpectomy plus irradiation for the treatment of invasive breast cancer. N Engl J Med. 2002;347(16):1233-1241.
PMID: 12393820 DOI: 10.1056/NEJMoa022152
日本語要旨:米国のNSABP B-06試験の20年追跡結果。浸潤性乳がんに対し、乳房全摘術、乳房部分切除術、乳房部分切除術+放射線治療を比較した無作為化比較試験で、無病生存率・全生存率に有意差はなかった。放射線治療の追加により、同側乳房内再発が大きく減少した。
【6】Veronesi U, Cascinelli N, Mariani L, Greco M, Saccozzi R, Luini A, et al. Twenty-year follow-up of a randomized study comparing breast-conserving surgery with radical mastectomy for early breast cancer. N Engl J Med. 2002;347(16):1227-1232.
PMID: 12393819 DOI: 10.1056/NEJMoa020989
日本語要旨:イタリア・ミラノで行われた早期乳がんの無作為化比較試験の20年追跡結果。乳房温存手術(四分円切除+放射線治療)と定型的乳房切除術で、20年後の全死亡率は同等だった。
【7】Moran MS, Schnitt SJ, Giuliano AE, Harris JR, Khan SA, Horton J, Klimberg S, Chavez-MacGregor M, Freedman G, Houssami N, Johnson PL, Morrow M. Society of Surgical Oncology-American Society for Radiation Oncology consensus guideline on margins for breast-conserving surgery with whole-breast irradiation in stages I and II invasive breast cancer. Ann Surg Oncol. 2014;21(3):704-716.
PMID: 24515565 DOI: 10.1245/s10434-014-3481-4
日本語要旨:米国外科腫瘍学会と米国放射線腫瘍学会による、ステージI・IIの浸潤性乳がんの乳房温存手術における切除断端の合同ガイドライン。33研究・28,162例のメタ解析にもとづき、断端陽性(がんが断端に露出)では同側乳房内再発リスクが少なくとも2倍になる一方、断端にがんが露出していなければ十分(no ink on tumor)とし、それ以上広い断端を確保しても再発は減らないとした。
【8】Giuliano AE, Ballman KV, McCall L, Beitsch PD, Brennan MB, Kelemen PR, Ollila DW, Hansen NM, Whitworth PW, Blumencranz PW, Leitch AM, Saha S, Hunt KK, Morrow M. Effect of Axillary Dissection vs No Axillary Dissection on 10-Year Overall Survival Among Women With Invasive Breast Cancer and Sentinel Node Metastasis: The ACOSOG Z0011 (Alliance) Randomized Clinical Trial. JAMA. 2017;318(10):918-926.
PMID: 28898379 DOI: 10.1001/jama.2017.11470
日本語要旨:センチネルリンパ節に1〜2個の転移を認め、乳房温存手術と全乳房照射を受けた患者を対象に、腋窩郭清の有無を比較した無作為化比較試験の10年成績。10年全生存率は郭清省略群86.3%、郭清群83.6%で、郭清省略群の非劣性が示された。
【9】Reimer T, Stachs A, Veselinovic K, et al. Axillary Surgery in Breast Cancer — Primary Results of the INSEMA Trial. N Engl J Med. 2025;392(11):1051-1064.
PMID: 39665649 DOI: 10.1056/NEJMoa2412063
日本語要旨:ドイツ・オーストリアで行われたINSEMA試験の主要結果。臨床的にリンパ節転移を認めない早期乳がんで乳房温存手術を受ける患者を、センチネルリンパ節生検あり群と腋窩手術省略群に無作為に割り付けた。5年浸潤性無病生存率は省略群91.9%、生検群91.7%で、省略群の非劣性が示された。腋窩再発は省略群1.0%、生検群0.3%だった。
【10】Marxen T, Shauly O, Losken A. The Safety of Same-day Discharge after Immediate Alloplastic Breast Reconstruction: A Systematic Review. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2022;10(7):e4448.
PMID: 35924002 DOI: 10.1097/GOX.0000000000004448
日本語要旨:乳房切除と同時に人工物(インプラント等)で乳房再建を行った患者の当日退院の安全性を検討した系統的レビュー。4研究・574例(当日退院289例、1泊入院285例)を解析し、全合併症の発生率は当日退院33%、入院34%で、感染・漿液腫・血腫の発生率も同等だった。再手術や再入院の増加はいずれの研究でも報告されていない。
【11】Specht MC, Kelly BN, Tomczyk E, Ford OA, Webster AJ, Smith BL, Gadd MA, Colwell AS, Liao EC. One-Year Experience of Same-Day Mastectomy and Breast Reconstruction Protocol. Ann Surg Oncol. 2022;29(9):5711-5719.
PMID: 35543905 DOI: 10.1245/s10434-022-11859-9
日本語要旨:米国の大学病院(マサチューセッツ総合病院)で、乳房切除+乳房再建の当日退院プロトコルを導入し、導入前(2016〜17年457例)と導入後(2020〜21年428例)を比較した報告。入院時間の中央値は24.6時間から5.5時間に短縮し、30日以内の予定外再入院は3.7%と5.1%で有意差はなかった。
【12】Covinsky KE, Pierluissi E, Johnston CB. Hospitalization-associated disability: “She was probably able to ambulate, but I’m not sure”. JAMA. 2011;306(16):1782-1793.
PMID: 22028354 DOI: 10.1001/jama.2011.1556
日本語要旨:高齢者が急性疾患で入院した際に、日常生活動作の能力を長期的に失う「入院関連機能障害」の疫学と予防を論じたレビュー。乳がん手術に限った研究ではないが、高齢者にとって入院そのものが機能低下のリスクとなることを示している。
※本記事は医療に関する情報提供を目的としたものであり、診断・治療方針の決定は必ず医療機関での診察に基づいて行ってください。
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