「口の中をきれいにすることが、真の健康と美容」──新潟・医療法人社団D&J 平野大輔理事長が語る、”数値で診る”予防歯科

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新潟市で3医院を展開する医療法人社団D&J・平野大輔理事長は「口の中をきれいにすることが真の健康であり美容」と語ります。歯周病と全身疾患の関連、唾液検査による口腔状態の数値化、そして起床直後の歯みがき。予防とメンテナンスを軸に据えた3医院の役割分担とあわせて、その考え方を取材しました。

 

<執筆>

ナールス美容医療アカデミー編集長 富本充昭

富本充昭

 

「体の中で一番汚い場所って言われてるんですよね。なので、そこをきれいにするということが、真の美容や健康であろうと思っております」

 

新潟市で「ひらの歯科医院」「新潟西歯科クリニック」「入船みなと歯科」の3医院を展開する、医療法人社団D&J。その理事長を務める平野大輔先生に、記事で一番に取り上げたいテーマをうかがったとき、返ってきた答えはインプラントでもセラミックでもなく「予防」でした。
歯科医師となって17年。数えきれないほどの口腔内を診てきたなかで、平野先生の関心は「治すこと」から「そもそも失わせないこと」へと移ってきました。背景にあるのは、口腔内の細菌が糖尿病や動脈硬化性心血管疾患、誤嚥性肺炎といった全身の疾患と関連することを示す、この20年ほどの研究の蓄積です。
ただし、平野先生の言う「予防」は、ただ定期的に通院してクリーニングを受けることではありません。唾液検査、細菌検査、口腔機能検査によって口の中の状態を数値化し、客観的な指標を見ながら管理していく——「なるべく数値化して、客観的に見ながら」という言葉に、その姿勢が集約されています。
本記事では、平野理事長の予防に対する考え方と、それを支える科学的根拠、そして役割の異なる3医院それぞれの特徴をご紹介します。あわせて、現時点で「わかっていること」と「まだわかっていないこと」の線引きについても、率直にお伝えします。

 

「口の中をきれいにすることが、真の健康であり美容である」

1)削って治すほど、元の歯の価値がわかった

平野先生は2009年に新潟大学歯学部を卒業後、東京・埼玉の歯科医院で4年間にわたり研鑽を積みました。そして2014年3月、生まれ育った新潟市北区に近い西区坂井東に「ひらの歯科医院」を開院します。2017年5月には医療法人社団D&Jの理事長に就任し、2020年11月に新潟西歯科クリニック、2023年11月に入船みなと歯科と、市内に医院を増やしてこられました。
数多くの治療を手がけるなかで、平野先生の実感として積み重なっていったのが、「治せば治すほど、元の歯の大切さがわかってきた」という感覚でした。むし歯の治療で削った歯は、二度と元には戻りません。削られた歯は弱くなり、年齢を重ねるにつれてさらなる問題を引き起こすリスクが高まっていきます。
だからこそ、力を最も注いでいるのは、治療そのものではなく予防やメンテナンスなのだといいます。

2)17年の臨床で見えてきた「健康な口」と「そうでない口」

「17年くらい歯医者をやってきて、口の中を見ると、健康な人と健康じゃない人が、だいぶ分かるようになってきたんですよ。」

「具体的に、どこを見ているのでしょうか」そう尋ねると、平野先生はいくつかのポイントを挙げてくださいました。
ひとつは唾液の質です。粘稠度が高く、ねばついた唾液の方。次に、歯の根元付近に多数のむし歯が見られる方。こうしたケースでは糖尿病であることが多いそうです。さらに口腔内の乾燥度、そして歯肉の色。「血圧が高い人って、(歯茎が)赤いんですよ」。
ただし平野先生は、この話をするあいだ何度も「もちろん外れることもあるので、一概には言えないんですけど」と言葉を添えられました。これらはあくまで長年の臨床経験に基づく所見であり、診断ではありません。血圧や血糖値について確定的な判断を下すには、歯科ではなく内科的な臨床検査が必要になります。
それでも、と平野先生は続けます。「健康じゃないな、というのは結構わかる感じがしていますね」。口腔内は、全身の状態がにじみ出る場所でもあるのでしょう。

口腔の健康は、口の中だけの問題ではない

「ただの歯なんですけれども、そこから結構いろいろな病気になっているということが、最近わかってきているので」

平野先生が予防を最重要視する最大の理由が、これです。脳血管障害、心筋梗塞、糖尿病——口腔内の細菌と全身疾患との関連については、この20年ほどで研究が大きく進みました。

口腔の健康と全身状態・見た目の関連

1)歯垢1グラムの細菌数は、便1グラムに匹敵する

「体の中で一番汚い場所」という平野先生の表現は、決して誇張ではありません。
体内の細菌数を推計し直した2016年の研究では、部位ごとの細菌濃度が整理されています。それによれば、大腸内容物の細菌濃度はおよそ1ミリリットルあたり10の11乗個。これに対し、歯垢(プラーク)の細菌濃度もまた、およそ10の11乗個とされています。便については、湿重量1グラムあたり約0.9×10の11乗個という値が、14の文献から算出されています【1】。
つまり、歯垢1グラムに含まれる細菌の数は、便1グラムに含まれる細菌の数と、ほぼ同じ桁ということになります。一方、唾液の細菌濃度は1ミリリットルあたり約10の9乗個で、便の約100分の1にあたります。

※ 編集部注:ただし「総数」で見ると事情は異なります。口腔は容積が小さいため、口腔内に存在する細菌の総数は、大腸内の細菌数の1%未満にとどまると同研究は述べています。「濃度は匹敵するが、総数では大腸が上回る」というのが正確な理解です。
また同研究は、歯垢の値については桁を示す概数であるとも注記しています。

歯垢・便・唾液の細菌濃度を比較

そして、この細菌は口の中にとどまり続けるわけではありません。口腔マイクロバイオームに関する総説によれば、唾液には1ミリリットルあたり約10億個の細菌が含まれ、口腔では1日あたり0.75〜1.5リットルの唾液が産生されます。その大部分は、単独で、あるいは飲食物とともに飲み込まれます。つまり口腔内の細菌は、日常的に消化管へと運ばれているのです【2】。
同じ総説は、口腔内の感染が全身の病態につながる主な経路として、一過性の菌血症による感染の拡大、微生物毒素の循環、そして口腔内微生物に対する不利な免疫応答による全身性の炎症という3つの機序を挙げています【2】。

2)歯周病と糖尿病──治療が血糖値を動かす

相関があるだけでなく、治療によって全身の指標が動くことまで確かめられているのが、糖尿病です。
2022年に改訂されたコクラン・システマティックレビューは、35件の無作為化比較試験・計3,249名を組み入れ、歯周炎と糖尿病を併発する患者に対し、歯周ポケット内の器械的清掃による歯周治療を行うことで、血糖コントロールが臨床的に意味のある程度改善すると、中等度の確実性をもって結論づけています。具体的には、治療後3〜4か月の時点でHbA1cの絶対値が0.43%低下し、6か月では0.30%、12か月では0.50%の低下が報告されました【3】。

歯周治療後のHbA1c低下幅

この改訂版では、組み入れられた研究数と参加者数が前版から倍増したことにより、主要アウトカムに関する結論そのものと、その確実性の評価が変更されました。歯周治療と血糖コントロールの関係は、近年になって評価が固まってきた領域なのです。

3)歯周病と動脈硬化性心血管疾患・脳血管障害

平野先生が真っ先に挙げられた「脳血管障害、心筋梗塞」についてはどうでしょうか。
欧州歯周病連盟(EFP)と世界心臓連合(WHF)は2019年に合同ワークショップを開催し、翌2020年にコンセンサスレポートを公表しました。同レポートは、重度の歯周炎と非感染性疾患、とりわけ心血管疾患との独立した関連を支持する相当量のエビデンスが蓄積されているとし、歯周炎が将来の動脈硬化性心血管疾患のリスクを高めることについて、強固な疫学的エビデンスがあるとしています【4】。
さらに2023年には、EFPと世界家庭医療機構欧州部会(WONCA Europe)の合同ワークショップによるコンセンサスレポートが公表されました。ここでは、歯周炎が心血管疾患、糖尿病、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、閉塞性睡眠時無呼吸などと独立して関連することが、歯科医師と家庭医の双方の合意として示されています【5】。
なお、EFPとWONCA Europeが家庭医向けにまとめたサマリーは、先ほどの歯周治療によるHbA1cの0.3〜0.5%の低下について、メトホルミン療法に2剤目の薬剤を追加した場合に得られる低下と同程度だと説明しています。小さく見える数字ですが、歯を清潔に保つことが、薬を1剤増やすことに相当する意味を持ちうるということです。

4)高齢者の誤嚥性肺炎と口腔ケア

口腔と全身の関係を、日本発の研究として最も明確に示したもののひとつが、2002年に報告された多施設研究です。
東北大学を中心とするグループが、日本国内11施設の特別養護老人ホームに入所する高齢者417名を対象に2年間の追跡を行い、毎食後の歯みがきに加えて週1回の歯科専門職によるケアを受けた群と、従来どおりのケアを継続した群とを比較しました。その結果、口腔ケアを実施した群では、肺炎の発症、発熱の発生、そして肺炎による死亡が、いずれも有意に少なかったのです【6】。
口腔内を清潔に保つことが、命に直結しうるのです。この知見は、後述する入船みなと歯科の訪問歯科診療という取り組みの土台にもなっています。

高齢者への継続的な口腔ケア肺炎

5)そして「見た目」へ──口臭という接点

ここまでは健康の話です。では美容とは、どうつながるのでしょうか。
最もわかりやすい接点が、口臭でしょう。2023年に発表されたシステマティックレビューによれば、口臭の80〜90%は口腔内の要因によるもので、舌苔、歯周疾患、不良な口腔清掃習慣が主要因とされています。残る10〜20%が、全身疾患に関連する口腔外の要因に起因します【7】。
興味深いのは、同レビューが口臭に関連する口腔内要因として、舌苔や歯周疾患と並んで「唾液粘稠度の高さ」を挙げている点です【7】。これは、平野先生が診察のなかで着目しておられるポイントとまさに一致します。
歯肉の色、口臭、そして歯を失うことによる口元の変化。いずれも、口腔内の環境という同じ土台の上に乗っています。ホワイトニングやセラミック治療といった審美的なアプローチも、その土台が整っていなければ本来の力を発揮しません。健康と美容は、別々のゴールではないのです。

予防歯科は「3か月に1回通う」ことではない

「予防っていうと、なんとなく3か月に1回とか半年に1回行けばいいんでしょ、と思われがちなんですけども」

1)回数ではなく「状態」を見る

平野先生の予防観を最もよく表しているのが、この一言です。通院の頻度そのものが目的なのではありません。大切なのは、その人の口腔内が今どういう状態にあり、前回と比べてどう変化したかを把握することです。
そのために平野先生が用いるのが、各種の検査です。

2)唾液検査・細菌検査で口腔内を数値化する

「唾液検査とか、PCR検査とか、あとは口腔機能管理検査みたいなものだとか。なるべく数値化して、客観的に見ながらの、細菌数がどのくらい減っているのかとか、そういうのを見ながら予防をやっています。」

唾液検査では、唾液の分泌量や緩衝能、細菌数といった項目を測定します。PCR検査を用いれば、歯周病に関連する特定の細菌の存在や量を調べることもできます。
こうした検査の価値は、口腔内の状態を「なんとなく良くなった気がする」から「細菌数が前回よりこれだけ減った」へと変えるところにあります。患者さんにとっては、自分の努力が数字として返ってくることになります。ブラッシング指導の効果を確認することもできますし、逆に何かが悪化していれば早い段階で気づけます。

口腔状態を数値化して管理する流れ

3)口腔機能検査という視点──噛む、飲み込む、話す

もうひとつ、平野先生が挙げられたのが口腔機能の検査です。
むし歯や歯周病が「歯そのもの」の問題であるのに対し、口腔機能は「口が働けているか」を見るものです。噛む力、舌の動き、飲み込む力、唾液の量、口の中の乾燥度。こうした機能は加齢とともに少しずつ低下していきますが、本人はなかなか自覚できません。
これらを定期的に測定しておくことで、変化の兆しを捉えることができます。とりわけ高齢期においては、この視点が重要な意味を持ちます(後述)。

4)数値化でわかること、わからないこと

ここで、公平を期すために触れておきたいことがあります。
検査による数値化は強力な道具ですが、万能ではありません。う蝕リスクを評価する各種手法の精度を検討した2015年のシステマティックレビューは、5,776件の文献から18件を精査した結果として、これらの手法の妥当性に関するエビデンスは限定的であると結論づけています【8】。
同レビューは、3件以上の研究が存在したのは「過去のう蝕経験」と「唾液中ミュータンスレンサ球菌」の2つのみで、いずれもエビデンスの質は低いと評価しました。そして、精度が十分でない場合には、リスクの高い患者さんを見逃す一方で、リスクがないのに「ある」と誤判定される患者さんも生じうると指摘しています【8】。
つまり、検査結果は絶対的な予言ではありません。数字はあくまで、患者さんと歯科医師が同じものを見ながら話し合うための共通言語であり、そこに臨床的な判断が加わってはじめて意味を持ちます。平野先生が検査の数値と並行して、唾液の質や歯肉の色をご自身の目で確かめ続けておられるのは、おそらくそういうことなのでしょう。

夜の歯みがきと、朝の歯みがき

取材のなかで、筆者が最も驚いたのがこの話でした。

1)睡眠中、口の中で何が起きているのか

「寝ている間って口が乾いて、歯を動かさなかったりするので、細菌が増殖する一番の原因なんですよ。だから夜に磨く意味としては、夜のあいだに増える細菌の母数をなるべく減らしておこう、ということなんです」

就寝前の歯みがきが大切だという話は、多くの方が聞いたことがあるでしょう。その理由が、この「母数を減らす」という考え方です。
睡眠中は唾液の分泌が大きく低下します。唾液には口腔内を洗い流す自浄作用があるため、その分泌が減れば細菌は増えやすくなります。また咀嚼などの口の動きもないため、機械的な清掃効果も働きません。

2)「起きたら、まず歯を磨いてから水を飲む」

ここからが、平野先生の主張の核心です。

「朝起きて、歯も磨かないでお水を飲んじゃうというのは、その菌を飲んでいるようなものなんですよ。だから朝起きたら、歯を磨いてから、いろいろ口の中に入れなきゃいけないんです」

医師から「朝起きたらまず水を一杯」と勧められた経験のある方は多いでしょう。平野先生はそこに、順序をひとつ加えてほしいとおっしゃいます。

「歯医者の、たぶん半分くらいは同じことを言うと思うんですけど。朝起きたら、歯を磨いてから水を飲んでほしい、というところですね」

朝食を食べてから磨くという習慣も「全然間違っちゃいない」し「諸説ある」と前置きしたうえで、平野先生ご自身は「圧倒的に、起きてから歯を磨いて、それからいろいろ飲んだり食べたり」という立場をとっておられます。

3)口臭治療の第一人者・本田俊一先生から学んだこと

この考え方を、平野先生は口臭治療の権威である本田俊一先生から学ばれたといいます。
本田先生は1980年に山口大学農学部獣医学科を卒業後、旧厚生省で検疫業務に携わりながら、大阪大学微生物病研究所で腸管感染症の基礎研究を行った経歴をお持ちです。1989年に大阪大学歯学部へ学士編入し、1993年に卒業。1995年にほんだ歯科を開院し、2000年には「ほんだ式口臭治療」を確立されました。
獣医学と微生物学の素養を持つ歯科医師。その本田先生が熱心に説いていたのが、まさにこの「起床直後の口腔内細菌」の話だったのだそうです。

4)わかっていること、まだ検証されていないこと

ここは、編集部として慎重に線を引いておきたい部分です。
まず、平野先生のロジックの前半——口腔内の細菌が唾液とともに日常的に飲み込まれ、消化管へ移行しているという事実は、前述の口腔マイクロバイオーム総説によって明確に支持されています【2】。この点に議論の余地は少ないでしょう。
一方で、後半——起床直後に歯を磨くことによって全身の健康リスクが下がる、という部分については、それを直接検証した臨床試験は見当たりません。「起床時に磨く群」と「朝食後に磨く群」を比較し、健康アウトカムの差を検証した研究は、現時点では存在しないのです。

さらに、話をもう一段複雑にする研究があります。2021年に大阪大学と新潟大学のグループが発表した研究は、口腔内スプリントを用いたモデルで、睡眠が歯面のバイオフィルムに与える影響を定量的に調べたものです。その結果、睡眠によってバイオフィルムを構成する細菌の「数」自体には有意な変化が生じなかった一方、歯周炎に関連する菌属の相対的な存在比は変化していました【9】。

つまり「寝ているあいだに菌が増える」という説明は、唾液中の細菌については当てはまるものの、歯の表面のバイオフィルムについては、増えるというより「質が変わる」と言うほうが実態に近い可能性があります。なお、この研究の共著者には新潟大学大学院医歯学総合研究科の野杁由一郎教授が名を連ねています。

平野先生自身、「歯医者の中でも意見が分かれるところなんですけど」と率直に語っておられました。生物学的な筋は通っています。しかし、それを直接裏づけるデータはまだありません。起床直後に歯を磨くこと自体に害はなく、試してみる価値のある習慣ではありますが、「これをすれば病気が防げる」と断言できる段階ではない——それが、現時点での正確な整理でしょう。

起床直後の歯磨き

予防を続けた人の30年後

では、予防とメンテナンスを長く続けると、実際どうなるのでしょうか。この問いに、30年という時間軸で答えた研究があります。
スウェーデンで1971年から72年にかけて550名以上を組み入れ、綿密に管理されたプラークコントロール・プログラムを30年間継続した成人集団の追跡結果が、2004年に報告されています。

30年間に失われた歯の数は、年齢層別に0.4本から1.8本ときわめて少ないものでした。しかも歯を失った主な原因は歯根破折であり、歯周炎やむし歯の進行を理由に失われた歯は、全体でわずか21本にとどまっています。新たなむし歯の平均発生数も1.2〜2.1本で、そのおよそ8割は詰め物・被せ物の周囲に生じた二次う蝕でした。歯周組織については、頬側面を除くほとんどの部位でアタッチメントロス(歯を支える組織の喪失)の徴候が認められず、歯と歯のあいだの面ではむしろ改善が見られています【10】。

ただし著者ら自身が、この結果の解釈には注意が必要だと明記しています。30年間の予防・治療がすべてひとつの個人歯科医院で提供されたものであるため、無作為に抽出された集団を対象とした研究と単純に比較することはできない、というのです。
言い換えれば、この数字は「予防を続ければ誰でもこうなる」という保証ではありません。継続的な管理を受け、かつご本人がその価値を理解して高い水準の口腔清掃を維持した場合に到達しうる、ひとつの到達点です。それでも、削って詰めるサイクルを繰り返す人生とのあいだに、これだけの差がありうるという事実は重いといえるでしょう。

なぜ、3つの医院なのか

医療法人社団D&Jは、新潟市内に3つの医院を持っています。それぞれ立地も規模も、力を入れている分野も異なります。

出発点は「ひらの歯科医院」でした。当初は一般歯科から小児歯科、矯正歯科、歯科口腔外科まで幅広く手がける「何でも屋」で、現在はインプラント治療に最も特化した医院となっています。

「患者様が増えてしまって診られなくなったので、車で5分10分くらいのところに新潟西歯科クリニックを作ったんですけど」

2020年11月に開院した新潟西歯科クリニックは、3医院のなかで最も規模が大きい医院です。ここには予防をメインに据えつつ、矯正治療や埋伏歯の抜歯といった歯科口腔外科など、専門性の高い治療が集約されています。
この配置には、平野先生のもうひとつの理念が反映されています。

「僕の理念としては、人を育てよう、なので。入ってきた歯科医師の方が何でも学べる組織にしたかったので」

専門分野ごとに担当する歯科医師を置き、若手が幅広い領域に触れられる環境をつくる——医院を分けたことは、患者さんを受け入れるためであると同時に、人を育てる場をつくるためでもありました。
この理念は、その後さらに形になっています。医療法人社団D&Jは、歯科医療従事者のための教育・トレーニングセンター「ITC(I=入船/T=トレーニング/C=センター)」を設立しました。歯科の現場では「新人が十分なトレーニングを受けられないまま現場に出される」「離職期間のある人が復帰する際に十分な教育を受けられない」といった課題が現実に存在します。ITCは、そこに正面から手を入れる取り組みです。
そして、最後に足りなかったものがありました。

「ひとつ足りなかったのが、訪問歯科治療が足りなかったんですよ」

2023年11月、高齢者の多い地域に3院目となる入船みなと歯科を開院。訪問歯科診療と高齢者歯科を担う拠点としました。近年は土曜日の訪問診療も開始しており、平日の受診が難しかった方にも利用しやすい体制が整えられています(土曜は訪問診療のみで、院内での外来診療は行っていません)。
この判断の重要性は、近年の研究からも裏づけられます。地域在住高齢者2,011名を追跡した日本の研究では、口腔機能の軽微な衰えが蓄積した「オーラルフレイル」に該当する人は全体の16%にのぼり、身体的フレイル2.4倍、サルコペニア2.2倍、要介護状態2.3倍、死亡2.2倍という有意なリスク上昇と関連していました。著者らは、より早期の段階でのオーラルフレイル予防が健康長寿には不可欠であると結論づけています【11】。

なお2024年には、日本老年医学会・日本老年歯科医学会・日本サルコペニア&フレイル学会の3学会合同によるコンセンサスステートメントが公表され、オーラルフレイルの学術的定義と評価方法が整理されました。
ここで示された「オーラルフレイル5項目チェックリスト(OF-5)」は、歯科の専門職がいない場でも評価できるよう開発されたもので、残存歯数の減少、咀嚼困難感、嚥下困難感、口腔乾燥感、滑舌低下(舌口唇運動機能の低下)の5つで構成されます。このうち2つ以上に該当すると、オーラルフレイルと定義されます。この基準で評価すると、地域在住高齢者の約4割が該当し、フレイル、食品摂取の多様性、社会交流、要介護認定、そして死亡と関連することが示されています【12】。先ほどの16%は別の評価方法による数値のため単純には比べられませんが、いずれの基準で見ても、口の衰えは決してまれな状態ではありません。

訪問歯科診療は「通えなくなった人への対応」であると同時に、その人の残りの人生の質を左右する予防でもあるのです。

「大抵の分野、歯科における大抵の分野は、全部網羅できているという感じですね」

「3つを合わせると、歯科の総合病院のようになっていますね。」
私が、そうお伝えすると、平野先生は「あ、そういうことです」と頷かれました。

1)D&Jという名前と、くまの歯医者

ところで、医療法人社団D&Jという名称の由来をご存じでしょうか。
歯科医院は個人事業主として経営されることが多いものです。しかし平野先生は、歯科医師個人の技術に頼るのではなく、組織として社会に貢献できる医院でありたいと考えていました。医療法人化にあたり、二人三脚で歩んでこられた平野大輔先生と、妻・淳子さんの頭文字をとって「D&J」と名づけられましたそうです。
医院のキャラクターは、くま。もともとは創業者である平野先生ご自身がくまに似ていることから生まれたものだそうですが、「くまの歯医者」というキャッチフレーズは新潟で広く浸透し、新しい医院ができるたびに、くまの兄弟が増えてきました。そこには、スタッフみんなが協力し合って「くまの一員になる」という願いも込められているといいます。

3医院の特徴と基本情報

医療法人社団D&Jが展開する3医院それぞれの特徴と、来院に必要な基本情報をまとめます。

1)ひらの歯科医院(本院)

2014年3月開院の本院。公式サイトが掲げるのは「予防・インプラント」で、歯科用CTとマイクロスコープを備えています。診療案内は歯周病、予防歯科、むし歯治療、小児歯科、セラミック治療、ホワイトニング、義歯、インプラント、歯科口腔外科、口臭外来、訪問歯科診療と幅広く対応しています。診療室は全室完全個室で、周囲の目を気にせず受診できます。クラスB滅菌器とハンドピース滅菌器を導入し、治療器具は個別に完全滅菌後、パックのまま治療直前に開封します。第一・第二駐車場あわせて8台です。

ひらの歯科医院(本院)

医院名ひらの歯科医院
開院2014年3月
所在地〒950-2041 新潟県新潟市西区坂井東3-27-8
電話番号025-211-8006
診療時間月曜〜土曜 9:00〜17:00
休診日日曜・祝日
アクセスJR越後線「寺尾駅」より徒歩15分/第一・第二駐車場完備(8台)
診療案内予防歯科/歯周病/むし歯治療/小児歯科/セラミック治療/ホワイトニング/義歯(入れ歯)/インプラント/歯科口腔外科/口臭外来/訪問歯科診療
院内設備全室個室診療室/歯科用CT/マイクロスコープ/クラスB滅菌器
お支払い現金・各種クレジットカード
公式サイトhttps://www.dental-hirano.com/

2)新潟西歯科クリニック

2020年11月開院、3医院で最大規模。予防歯科を軸に、矯正歯科や歯科口腔外科など専門性の高い治療を集約する拠点で、若手歯科医師の育成の場も兼ねています。歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士が連携するチーム医療を掲げ、女性歯科医師も在籍しています。全室完全個室で、肉眼の24倍のマイクロスコープと歯科用CTを備えています。院内はバリアフリー設計でベビーカーや車いすのまま入れ、待合室にはグランドピアノを設置。訪問歯科診療では自宅などへの送迎にも対応しています。

新潟西歯科クリニック

医院名新潟西歯科クリニック
開院2020年11月
所在地〒950-2035 新潟県新潟市西区新通2757-3
電話番号025-378-5302
診療時間月・火・水・金・土 9:00〜17:00(休憩時間なしで診療)
休診日木曜・日曜・祝日(祝日のある週の木曜日は診療)
アクセスJR越後線「新潟大学前駅」より徒歩16分/第1・第2駐車場完備
診療案内予防歯科/歯周病治療/むし歯治療/小児歯科/詰め物・かぶせ物/ホワイトニング/義歯(入れ歯)/インプラント/歯科口腔外科/口臭治療/矯正歯科/訪問歯科診療
院内設備全室完全個室/歯科用CT/マイクロスコープ(肉眼の24倍)/バリアフリー設計(ベビーカー・車いす対応)/おむつ交換台
お支払い現金・各種クレジットカード
公式サイトhttps://www.niigatanishi-dc.jp/

3)入船みなと歯科

2023年11月開院の3院目。高齢者の多い入船地区に根ざし、訪問歯科診療に注力しています。近年は土曜日の訪問診療も開始し、平日の受診が難しい方にも対応できる体制を整えました(土曜は訪問診療のみで外来診療は行いません)。通院が難しくなった方の自宅や施設へ出向き、むし歯・歯周病治療や入れ歯の調整に加え、誤嚥性肺炎の予防にもつながる口腔ケアを継続的に提供しています。院内診療ではセラミック治療やホワイトニングケア、スポーツマウスガード作製にも対応しています。

入船みなと歯科

医院名入船みなと歯科
開院2023年11月
所在地〒951-8006 新潟県新潟市中央区附船町1-4092
電話番号025-378-1980
診療時間月曜〜金曜 9:00〜12:30/13:30〜17:00
休診日土曜・日曜・祝日(土曜は訪問診療のみ実施/院内での外来診療なし)
アクセスJR「新潟駅」より車で約10分/バス停「舟江診療所前」より徒歩1分/駐車場あり
診療案内むし歯・歯周病治療/予防歯科/小児歯科/セラミック治療/ホワイトニング/義歯(入れ歯)/インプラント/歯科口腔外科/矯正歯科/スポーツマウスガード作製/訪問歯科診療
院内設備歯科用CT/マイクロスコープ/バリアフリー設計
お支払い現金・各種クレジットカード
公式サイトhttps://www.irifuneminato-dc.com/

※ 上記はいずれも各医院の公式サイトの記載にもとづきます(2026年8月11日時点)。診療時間・休診日は変更される場合がありますので、受診前に各医院の公式サイトまたはお電話にてご確認ください。
※ 自由診療(セラミック治療、ホワイトニング、インプラント等)は健康保険が適用されず、全額自己負担となります。費用および治療に伴うリスク・副作用については、各医院に直接ご確認ください。

 

富本充昭
MESSAGE
ナールス美容医療アカデミー編集長 富本充昭からのコメント

ナールス美容医療アカデミー

編集長 富本充昭

取材のあいだ、平野先生は何度も「もちろん外れることもあるので」「歯医者の中でも意見が分かれるところなんですけど」と留保を置かれました。ご自身の考えを確信をもって語りながら、断言はされません。この姿勢が強く印象に残っています。
私はもともと製薬会社のMRとして働き、その後、企画・マーケティング部門へ異動、その後20年以上にわたって医学や医療の情報を扱う仕事をしてきました。そのなかで一貫して感じているのは、魔法のように見える治療ほど、その根拠と限界を正直に伝える必要があるということです。予防歯科は、その正反対に見えるかもしれません。地味で、時間がかかり、劇的な変化を約束しません。けれども今回、30年間メンテナンスを続けた人たちの喪失歯が年齢層別に0.4〜1.8本だったという数字を改めて確認したとき、これほど雄弁なデータもないと思いました。
本記事では、平野先生の主張を支える研究を紹介する一方で、まだ検証されていない部分も率直に書きました。とくに「起床直後の歯みがき」は、生物学的な筋は通っていても、それを直接確かめた比較試験がまだありません。それでも書くことにしたのは、確かなことと未確定なことを分けたうえでご自身で判断していただく、その材料をお渡しすることが、私たちの役目だと考えているからです。
読み終えたあと、もし何かひとつ実行できるとしたら。次に歯科医院へ行かれるとき、「今の私の口の中の状態を、数字で知ることはできますか」と尋ねてみてください。予防はそこから始まります。

まとめ|健康と美容は、同じ入口からしか始まらない

当メディアは美容医療を主題としています。その媒体で、なぜ予防歯科という一見地味なテーマを取り上げるのか。理由は、平野理事長の言葉のなかにあります。
口腔内の環境は、全身の健康を左右すると同時に、口臭や歯肉の色、口元の印象といった「見た目」の土台でもあります。歯周病は糖尿病の血糖コントロールや動脈硬化性心血管疾患と関連し【3】【4】【5】、高齢期には誤嚥性肺炎やオーラルフレイルにも関わってきます【6】【11】。一方で口臭の8〜9割は口腔内に原因があります【7】。どれほど優れた審美的治療も、この土台の上にしか成り立ちません。
そして平野理事長が実践するのは、通院回数ではなく「状態」を見る予防です。唾液検査や細菌検査で口腔内を数値化し、客観的な指標を見ながら管理していきます。ただし検査そのものにも精度の限界があり【8】、数値は絶対的な予言ではなく、患者さんと歯科医師が同じものを見ながら話し合うための共通言語である——そう捉えるのが正確でしょう。
新潟市の3医院は、それぞれ役割が異なります。ひらの歯科医院が本院として予防とインプラントを、新潟西歯科クリニックが予防と専門治療、そして人材育成を、入船みなと歯科が訪問歯科診療を担います。3つを合わせて「歯科における大抵の分野を網羅する」という体制は、患者さんを受け入れるためであると同時に、次の世代を育てるための設計でもありました。
今日、口の中をきれいにすること。それが30年後の自分にどれだけの違いをもたらすのか【10】。その問いを持ち帰っていただけたなら、この記事の役目は果たされたことになります。

参考文献(エビデンス)

本記事の科学的根拠として、以下の査読済み論文・レビューを参照しています。
【1】Sender R, Fuchs S, Milo R. Revised estimates for the number of human and bacteria cells in the body. PLoS Biol. 2016;14(8):e1002533.
PMID: 27541692 DOI: 10.1371/journal.pbio.1002533
日本語要旨:ヒト体内の細菌数とヒト細胞数を最新知見から推定し直した論文。部位別の細菌濃度として大腸10^11個/mL、歯垢10^11個/mL、唾液10^9個/mLが示され、便は湿重量1gあたり約0.9×10^11個と算出されています。歯垢1gあたりの細菌数は便1gあたりとほぼ同じ桁ですが、口腔は容積が小さいため細菌の総数は大腸の1%未満にとどまります。
【2】Sedghi L, DiMassa V, Harrington A, Lynch SV, Kapila YL. The oral microbiome: Role of key organisms and complex networks in oral health and disease. Periodontol 2000. 2021;87(1):107-131.
PMID: 34463991 DOI: 10.1111/prd.12393
日本語要旨:口腔マイクロバイオームの総説。口腔内感染が全身病態につながる機序として、一過性菌血症による感染拡大、微生物毒素の循環、口腔内微生物への不利な免疫応答による全身性炎症の3つを挙げています。唾液には1mLあたり10^9個の細菌が含まれ、1日0.75〜1.5Lの唾液の大部分が嚥下されるため、口腔細菌は日常的に消化管へ移行しています。
【3】Simpson TC, Clarkson JE, Worthington HV, MacDonald L, Weldon JC, Needleman I, et al. Treatment of periodontitis for glycaemic control in people with diabetes mellitus. Cochrane Database Syst Rev. 2022;4(4):CD004714.
PMID: 35420698 DOI: 10.1002/14651858.CD004714.pub4
日本語要旨:糖尿病患者における歯周炎治療の効果を検討したコクラン・システマティックレビューの2022年改訂版。35件の無作為化比較試験・計3,249名を組み入れ、歯周ポケット内の器械的清掃による歯周治療が血糖コントロールを臨床的に意味のある程度改善させると、中等度の確実性をもって結論づけています。治療後3〜4か月でHbA1c絶対値0.43%(30研究・2,443名)、6か月で0.30%、12か月で0.50%の低下が報告されました。
【4】Sanz M, Marco Del Castillo A, Jepsen S, Gonzalez-Juanatey JR, D’Aiuto F, Bouchard P, et al. Periodontitis and cardiovascular diseases: Consensus report. J Clin Periodontol. 2020;47(3):268-288.
PMID: 32011025 DOI: 10.1111/jcpe.13189
日本語要旨:欧州歯周病連盟(EFP)と世界心臓連合(WHF)による合同ワークショップのコンセンサスレポート。重度歯周炎と非感染性疾患、とりわけ心血管疾患との独立した関連を支持する相当量のエビデンスが蓄積されているとし、歯周炎が将来の動脈硬化性心血管疾患のリスクを高めることについて強固な疫学的エビデンスがあるとしています。
【5】Herrera D, Sanz M, Shapira L, Brotons C, Chapple I, Frese T, et al. Association between periodontal diseases and cardiovascular diseases, diabetes and respiratory diseases: Consensus report of the Joint Workshop by EFP and WONCA Europe. J Clin Periodontol. 2023;50(6):819-841.
PMID: 36935200 DOI: 10.1111/jcpe.13807
日本語要旨:EFPと世界家庭医療機構欧州部会(WONCA Europe)の合同ワークショップによるコンセンサスレポート。歯周炎が心血管疾患、糖尿病、COPD、閉塞性睡眠時無呼吸などと独立して関連することが、歯科医師と家庭医の双方の合意として示されています。呼吸器疾患との関連機序として、口腔内微生物の誤嚥による肺の炎症の悪化が挙げられています。※本文中の「メトホルミン療法に2剤目を追加した場合と同程度」という記述は、本コンセンサスレポートの家庭医向けサマリー版(Herrera D, Sanz M, Shapira L, et al. Periodontal diseases and cardiovascular diseases, diabetes, and respiratory diseases: Summary of the consensus report by the European Federation of Periodontology and WONCA Europe. Eur J Gen Pract. 2024;30(1):2320120. doi:10.1080/13814788.2024.2320120)に基づきます。
【6】Yoneyama T, Yoshida M, Ohrui T, Mukaiyama H, Okamoto H, Hoshiba K, et al. Oral care reduces pneumonia in older patients in nursing homes. J Am Geriatr Soc. 2002;50(3):430-433.
PMID: 11943036 DOI: 10.1046/j.1532-5415.2002.50106.x
日本語要旨:東北大学を中心とするグループによる、日本国内11施設の特別養護老人ホームに入所する高齢者417名を対象とした2年間の多施設研究。看護師・介護者による毎食後の歯みがき(必要に応じてポビドンヨードによる清拭を併用)に加え、歯科医師または歯科衛生士による週1回の専門的ケアを受けた群では、従来どおりのケアを継続した群と比べ、肺炎の発症、発熱の発生、肺炎による死亡がいずれも有意に少なかったことを報告しています。
【7】Memon MA, Memon HA, Muhammad FE, Fahad S, Siddiqui A, Lee KY, et al. Aetiology and associations of halitosis: A systematic review. Oral Dis. 2023;29(4):1432-1438.
PMID: 35212093 DOI: 10.1111/odi.14172
日本語要旨:口臭の原因を口腔内要因と口腔外要因に分けて評価したシステマティックレビュー。口臭の80〜90%は口腔内要因によるもので、舌苔、歯周疾患、不良な口腔清掃習慣が主要因とされます。唾液粘稠度の高さや歯周病関連菌の増加も、口臭に関連する口腔内要因として抽出されています。
【8】Senneby A, Mejàre I, Sahlin NE, Svensäter G, Rohlin M. Diagnostic accuracy of different caries risk assessment methods. A systematic review. J Dent. 2015;43(12):1385-1393.
PMID: 26493112 DOI: 10.1016/j.jdent.2015.10.011
日本語要旨:う蝕リスクが高い個人を同定する各種手法の精度を評価したシステマティックレビュー。5,776件から18件を精査した結果、手法の妥当性に関するエビデンスは限定的と結論づけています。精度が十分でない場合、リスクの高い患者を見逃す一方、リスクがないのに誤判定される患者も生じうると指摘しています。
【9】Sotozono M, Kuriki N, Asahi Y, Noiri Y, Hayashi M, Motooka D, et al. Impacts of sleep on the characteristics of dental biofilm. Sci Rep. 2021;11:138.
PMID: 33420225 DOI: 10.1038/s41598-020-80541-5
日本語要旨:大阪大学および新潟大学(野杁由一郎教授)らによる共同研究。口腔内スプリントを用いたin situモデルで睡眠が歯面バイオフィルムに及ぼす影響を定量的に検討し、細菌の数自体には有意な変化がなかった一方、歯周炎関連菌属の相対存在比は変化したことを報告しています。
【10】Axelsson P, Nyström B, Lindhe J. The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults. Results after 30 years of maintenance. J Clin Periodontol. 2004;31(9):749-757.
PMID: 15312097 DOI: 10.1111/j.1600-051X.2004.00563.x
日本語要旨:スウェーデンで550名以上を組み入れ、プラークコントロール・プログラムを30年間継続した成人集団の追跡結果。30年間の喪失歯数は年齢コホート別に0.4〜1.8本と少なく、歯周炎やう蝕の進行による喪失はわずか21本でした。ただし著者らは、すべて一つの個人歯科医院で提供された治療であるため、他の縦断研究との比較には注意が必要と明記しています。
【11】Tanaka T, Takahashi K, Hirano H, Kikutani T, Watanabe Y, Ohara Y, et al. Oral frailty as a risk factor for physical frailty and mortality in community-dwelling elderly. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2018;73(12):1661-1667.
PMID: 29161342 DOI: 10.1093/gerona/glx225
日本語要旨:東京大学高齢社会総合研究機構らによる地域在住高齢者の縦断研究(柏スタディ)。65歳以上2,011名のうち16%がオーラルフレイルに該当し、身体的フレイル2.4倍、サルコペニア2.2倍、要介護状態2.3倍、死亡2.2倍のリスク上昇と関連していました。早期段階での予防が健康長寿に不可欠と結論づけています。
【12】Tanaka T, Hirano H, Ikebe K, Ueda T, Iwasaki M, Minakuchi S, et al. Consensus statement on “Oral frailty” from the Japan Geriatrics Society, the Japanese Society of Gerodontology, and the Japanese Association on Sarcopenia and Frailty. Geriatr Gerontol Int. 2024;24(11):1111-1119.
PMID: 39375858 DOI: 10.1111/ggi.14980
日本語要旨:日本老年医学会・日本老年歯科医学会・日本サルコペニア&フレイル学会の3学会合同ワーキンググループによるコンセンサスステートメント(2024年4月1日公表)。定義や評価基準が統一されていなかったオーラルフレイルについて、学術的定義、位置づけ、評価方法を整理し、口腔機能低下症との関係を明確化しました。歯科医療専門職が不在の場でも評価できる「Oral frailty 5-item Checklist(OF-5)」を提示し、残存歯数の減少・咀嚼困難感・嚥下困難感・口腔乾燥感・滑舌低下の5項目のうち2つ以上該当をオーラルフレイルと定義。OF-5で評価した場合、地域在住高齢者の約4割が該当し、フレイル、食品摂取の多様性、社会交流、要介護認定、死亡と関連するとしています。

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