| 本治療は自由診療であり、症状や疾患によっては適応外のケースがあります。 効果は個人差があり保証できません。 学術論文は、必ずしも治療効果を保証するものではありません。 本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。 治療の適応については医師にご相談ください。 |
| 執筆:ナールス美容医療アカデミー編集長 富本充昭 |
ED(勃起不全)は男性のQOLに大きな影響を及ぼすだけでなく、心血管疾患のリスク指標となる可能性も指摘されています。
EDの治療法は多様化しつつあり、従来の薬物療法に加えて、近年は再生医療を応用したアプローチが注目されています。
その代表例が PRP療法やその進化系のPDF-FD療法 です。
PDF-FD療法は患者自身の血液から抽出した血小板由来の成長因子をフリーズドライ加工し、高純度・高濃度で注入する成長因子をより安定的に活用することを目的として開発された治療アプローチとして注目されています。
製剤に含まれる成長因子が血管新生や血管内皮機能の改善、組織修復にプラスに関与する可能性があると考えられています。
そのため、陰茎への血流改善や海綿体機能の回復を目指す点が期待されていますが、その科学的エビデンスや安全性はどこまで確立されているのでしょうか。
本記事では、PDF-FD療法の基本的仕組み、EDに対する効果評価、PRP療法との比較、リスク・副作用、選択時の注意点まで詳しく解説します。
最新の臨床データや再生医療の専門知識を元に、信頼性の高い情報を提供します。
ED治療の現状と再生医療的アプローチへの注目

1)ED(勃起不全)の主な原因と増加背景

ED(勃起不全)は、十分な勃起を得られない、または維持できない状態を指し、加齢とともに有病率が上昇することが知られています【1】【2】。
原因は単一ではなく、血管性、神経性、内分泌性、心因性など、複数の要因が複雑に関与します。
また、EDは単なる性機能の問題ではなく、全身の血管障害の早期サインとなる可能性も指摘されています【1】。
近年特に増加しているのが、動脈硬化や糖尿病、高血圧、脂質異常症などに伴う血管性EDです。
これらは陰茎海綿体への血流低下を招き、勃起の硬さや持続力を低下させます。また、喫煙、肥満、運動不足、睡眠不足、慢性的なストレスといった生活習慣の乱れもEDリスクを高める要因とされています。
さらに、前立腺手術後の神経障害や、加齢に伴う男性ホルモンの低下もEDの一因となります。このようにEDは、単なる性機能の問題ではなく、全身の血管や代謝、神経の健康状態を反映する疾患として捉えられています。
2)内服薬(PDE5阻害薬)の役割と限界
現在のED治療における第一選択は、バイアグラ®やシアリス®などのPDE5阻害薬です。
これらの薬剤は、陰茎海綿体の血管を拡張し、性的刺激があった際の血流を一時的に増加させることで勃起を補助します。
PDE5阻害薬は現在のED治療の第一選択とされ、高い有効性が確認されています【3】【4】。
即効性があり、多くの患者で効果が期待できる一方で、PDE5阻害薬は血管や神経の状態そのものを改善する治療ではありません。
そのため、十分な効果が得られない患者も存在します【4】。
また、服用を中止すれば効果は持続せず、加齢や基礎疾患の進行により「以前より効きにくくなった」と感じるケースも少なくありません。
さらに、頭痛やほてりなどの副作用、硝酸薬との併用禁忌といった制限があり、すべての患者に適応できるわけではない点も課題です。こうした背景から、薬に依存せず、勃起機能低下の背景にある要因へアプローチする治療への関心が高まっています。
3)再生医療的アプローチ(PRP・PDF-FD)がED治療で注目される理由
近年、ED治療の分野では、PRP療法をはじめとする血小板由来因子を活用した治療が注目されています【5】。
PRP療法は、患者自身の血液から血小板を濃縮し、そこに含まれる成長因子の働きによって血管新生や組織修復を促すことを目的とした治療で、再生医療的アプローチとして研究が進められてきました。
一方で、PDF-FD療法は、PRP由来の成長因子を抽出・加工した製剤を用いる治療であり、再生医療等安全性確保法に基づく「再生医療」には該当しません。
法的・制度的には再生医療ではなく、成長因子を利用した治療的アプローチです。
それでもPRPやPDF-FDがED治療で注目される理由は、血流改善や血管機能の回復を目指し、勃起機能低下の背景にある組織環境へ働きかける点にあります。
これは、勃起を一時的に補助する薬物療法とは異なる作用機序であり、特に血管性EDにおいて新たな選択肢として関心が高まっています。
ただし、これらの治療は即効性や万能性を持つものではなく、効果や位置づけについては慎重な理解が必要です。
また、これらの治療は標準化や長期的有効性の検証が十分とはいえず、さらなる研究が求められています【5】。
PDF-FD療法とは何か

1)PDF-FD療法の定義と開発背景
PDF-FDはPlasma-Derived Factors – Freeze-Dried(血漿由来因子の凍結乾燥)を意味します。
PDF-FD療法とは、血漿由来成長因子(Plasma Derived Factors)を抽出・加工し、フリーズドライ(Freeze-Dry)化した製剤を用いる治療法です。
もともとPRP療法(多血小板血漿療法)で用いられてきた成長因子の働きに着目し、その有効成分をより安定的・均一に活用する目的で開発されました。
このような製剤設計は、治療品質のばらつきを抑える可能性があります【6】。
また、凍結乾燥した血小板由来因子製剤は、EDを対象としたものではありませんが、臨床研究において良好な安全性が報告されています【7】。
なお、PDF-FD療法は再生医療等安全性確保法に基づく「再生医療」には該当しません。
細胞を移植・培養・加工する治療ではなく、あくまで成長因子を利用した治療的アプローチという位置づけになります。
そのため、制度上の再生医療と混同しない正確な理解が必要です。
2)多血小板血漿由来成長因子の役割

多血小板血漿には、組織修復や血管新生に関与する複数の成長因子が含まれています。
代表的なものには、下記のようなものがあります。
| 成長因子 | はたらき(EDとの関係を中心に) |
| 血小板由来成長因子(PDGF) | 血管や結合組織の修復を促す。陰茎海綿体の組織環境を整え、血流改善を支える基盤づくりに関与すると考えられている。 |
| 血管内皮増殖因子(VEGF) | 血管内皮細胞の増殖を促し、血管新生や微小循環の改善に関与。血管性EDにおいて血流環境を整える役割が期待される。 |
| 線維芽細胞増殖因子(FGF) | 血管・神経・結合組織の修復を幅広く支援。海綿体組織の弾力性や機能維持に関与する可能性がある。 |
| インスリン様成長因子(IGF) | 細胞の生存や修復を促進。加齢や血流低下に伴う組織機能低下の補助的改善に関与すると考えられる。 |
| トランスフォーミング成長因子β(TGF-β) | 組織修復や炎症調整に関与。過剰な線維化を防ぎつつ、組織の恒常性維持を支える役割が示唆されている。 |
| 上皮成長因子(EGF) | 細胞増殖や修復を促進。血管・上皮組織の回復を間接的に支え、勃起機能に必要な組織環境の維持に関与する可能性がある。 |
これらの成長因子は、損傷した組織の修復や血流改善を促す働きを持つとされ、EDにおいては陰茎海綿体の血管機能や組織環境の改善に関与する可能性が示唆されています。PDF-FD療法では、こうした成長因子を効率的に活用することを目的としています。
3)フリーズドライ加工による技術的特徴
PDF-FD療法の大きな特徴は、成長因子をフリーズドライ加工する点にあります。
これにより、次のような利点が期待されます。
- 成長因子の安定性が高まる
- 品質のばらつきが抑えられる
- 保存や取り扱いがしやすくなる
PRP療法では、採血当日に作製・注入する必要があり、成分濃度や品質に個人差が生じやすい点が課題とされてきました。
PDF-FD療法は、当日は採血だけ行い、2週間程度後に精製して製剤化します。
このプロセスで、PRP療法の課題である成分濃度や品質に個人差の課題を改善しました。
4)PRP療法との関係と位置づけ
PDF-FD療法は、PRP療法と同じく自己血液由来の成長因子の作用に着目した治療です。PRP療法が「血液由来成分をそのまま用いる治療」であるのに対し、PDF-FD療法は「有効成分を抽出・加工した製剤を用いる治療」という点で異なります。
そのため、PDF-FD療法は、次の位置づけになります。
- PRP療法の考え方を応用した治療
- 製剤に細胞を含まないため再生医療ではない
ED治療においては、薬物療法とは異なる作用機序を持つ新たな選択肢として検討されています。
しかし、まだエビデンスの集積が不十分であり、評価が確立しているとは言えません。
そのため、効果や限界については慎重な評価が必要です。
<参考記事>
PDF-FD(C-PRP)療法とは?効果・安全性・適応疾患をエビデンスで検証
PRP療法とPDF-FD療法の違い
1)PRP療法とは何か(Platelet-Rich Plasma)
PRP療法とは、「Platelet-Rich Plasma(多血小板血漿)」の略で、患者自身の血液から血小板を高濃度に含む血漿成分を抽出し、そのまま注入する治療法です。
血小板には、PDGF、VEGF、FGF などの成長因子が豊富に含まれており、これらが組織修復や血管新生に関与すると考えられています。
ED治療においては、陰茎海綿体にPRPを注入することで、血流環境や組織機能の改善を目指す試みが行われてきました。
二重盲検ランダム化比較試験では、PRP注射による勃起機能の改善が示唆されています【8】。
メタアナリシスでは有効性が概ね支持される一方、研究手法の違いによるばらつきが課題とされています【9】。
ただし、研究規模はまだ限定的であり、標準治療として確立されているわけではありません。
別のランダム化比較試験では、プラセボとの間に有意差が認められなかったとの報告もあります【10】。
このようにPRP療法は再生医療的アプローチとして研究対象となってきた治療ですが、効果や適応については現在も研究段階にあります。
2)PDF-FD療法とは何か(Plasma-Derived Factors – Freeze-Dried)
PDF-FDは、「Plasma-Derived Factors – Freeze-Dried(血漿由来因子の凍結乾燥)」を意味します。
PRP療法が「血小板そのものを多く含む血漿」を用いるのに対し、PDF-FD療法では、血漿中に含まれる生理活性因子(血漿由来因子)を抽出・加工した製剤を使用します。
重要な点として、PDF-FDは血小板製剤ではなく、細胞成分を含まない加工製剤であり、細胞移植や再生を行う治療ではありません。
そのため、PDF-FD療法は再生医療等安全性確保法上の再生医療には該当しません。
3)「血小板由来」と「血漿由来」の本質的な違い
PRP療法とPDF-FD療法の最も重要な違いは、作用の主体となる成分の由来にあります。
PRP療法では、
- 血小板そのもの
- 血小板が放出する成長因子
が主役となります。
一方、PDF-FD療法では、
- 血漿中に存在する成長因子
- サイトカインや調整因子
といった血漿由来因子そのものが治療の主体です。
この違いにより、PDF-FD療法は、次のような特徴を持ち、PRP療法とは治療コンセプトそのものが異なるといえます。
- 製剤の細胞を含まない
- 製剤として加工・管理されている
- 成分のばらつきを抑えやすい
- 保管期間が長い
4)治療特性・再現性・位置づけの違い
PRP療法は、採血当日に作製・注入することが一般的であり、血小板数や成長因子濃度に個人差が生じやすいという課題があります。
一方、PDF-FD療法では、血漿由来因子を抽出・凍結乾燥することで、品質の安定性や再現性を重視した設計がなされています。
ED治療における位置づけとしては、
- PRP療法:再生医療の1つとして研究されてきた治療
- PDF-FD療法:再生医療ではないが、再生医療の考え方を応用した成長因子治療
- エビデンスと実績では、PRP療法の方が多い
という整理が適切です。
いずれも薬物療法とは異なる作用機序を持つ一方で、効果や適応については慎重な評価が必要であり、万能な治療ではありません。
5)ED治療における選択の考え方
PRP療法とPDF-FD療法は、「どちらが優れているか」という単純な比較はできません。
- 治療目的
- 患者の状態や希望
- 安全性・再現性の考え方
などによって選択が分かれる治療です。
特にPDF-FD療法は、再生医療と誤認されやすい治療であるため、その位置づけを正しく理解したうえで、医師の説明を受けることが重要です。
<PRP療法とPDF-FD療法の違い
| PRP療法 | PDF-FD療法 | |
| 保存性 | 長期保存が困難 | 凍結乾燥により長期保存が可能 |
| 成分安定性 | 時間経過や温度変化の影響を受けやすい | 成長因子の活性を比較的安定した状態で保持 |
| 再現性 | 採血条件や調製方法によるばらつきが生じやすい | 工程管理により品質の均一化が図られる |
EDに対するPDF-FD療法の作用メカニズムと期待される効果

1)血漿由来因子(Plasma-Derived Factors)による作用の考え方
PDF-FD療法で用いられるPDF-FDは、血小板そのものではなく、血漿中に含まれる生理活性因子(血漿由来因子)を抽出し、凍結乾燥した製剤です。
ここでいう血漿由来因子には、血小板由来成長因子に加え、血漿中に存在するサイトカインや成長因子、調整因子などが含まれます。
これらの因子は、組織修復や血管機能の維持に関与するとされており、EDにおいては陰茎海綿体の血流環境や組織の恒常性に影響を与える可能性が考えられています。
PDF-FD療法は、これらの因子を局所に届けることで、勃起機能低下の背景にある環境改善を目指す治療アプローチです。
2)陰茎海綿体における血流・血管機能への影響

勃起は、陰茎海綿体への血流増加と血管拡張が適切に起こることで成立します。
EDの多くは、この血流調節機構が十分に機能しなくなることで発症します。
血漿由来因子に含まれる成長因子などには、次の作用があると考えられています。
- 血管内皮機能の維持
- 血管反応性の改善
- 微小循環環境の調整
PDF-FD療法では、こうした作用を通じて、陰茎海綿体の血流環境を整えることが期待されている点が特徴です。
これは、性的刺激時の血流を一時的に増加させるPDE5阻害薬とは異なり、勃起に必要な土台となる血管環境へのアプローチと位置づけられます。
3)組織環境の改善と勃起機能への間接的影響
EDは単なる血流低下だけでなく、海綿体組織の線維化や弾力低下、神経機能の変化など、組織レベルの変化が関与することがあります。
血漿由来因子は、こうした組織環境の維持・修復に関与する可能性が示唆されています。
PDF-FD療法は、細胞を移植・再生させる治療ではありませんが、組織の修復過程を支える因子を補うことで、勃起機能の回復を間接的に後押しする可能性があります。
この点が、「再生医療ではないが、再生医療的な考え方を背景に持つ治療」と表現される理由です。
4)PRP療法の研究知見を踏まえた理論的期待

ED領域では、PRP療法に関するランダム化比較試験やメタ解析において、勃起機能スコア(IIEF)の改善が示唆されています【8】【9】。
PDF-FD療法は、こうしたPRP研究で注目されてきた有効因子を、より安定的に活用することを目的とした技術的発展形と捉えることができます。
ただし、PDF-FD療法そのものについては、EDに対する大規模・長期的な臨床データはありません。
そのため、現時点では理論的背景と既存研究を踏まえた期待段階の治療であり、過度な効果を断定することは適切ではありません。
5)期待される効果と現実的な理解
PDF-FD療法に期待されるのは、次のとおりです。
- 勃起の硬さや反応性の改善
- 血管性EDにおける基盤機能の底上げ
- 薬物療法の効果低下を補完する可能性
一方で、即効性やすべてのEDに有効な治療ではなく、効果の程度や実感までの期間には個人差がある可能性があることを理解する必要があります。
そのため、PDF-FD療法は、従来のED治療の「代替」ではなく、選択肢の一つとして位置づけ、医師の評価のもとで検討される治療といえるでしょう。
PDF-FD療法・PRP療法の安全性とリスク

1)自己血由来成分を用いる治療の安全性の考え方
PRP療法およびPDF-FD療法はいずれも、患者自身の血液を原料とする成分を用いる治療です。
そのため、一般的な薬剤治療と比べてアレルギー反応や免疫学的拒絶反応のリスクは低いと考えられています。
特にPDF-FD療法では、血漿由来因子を抽出・加工し、細胞成分を含まない製剤として使用するため、細胞移植に伴うリスクは想定されません。
この点は、再生医療と誤解されやすいPDF-FD療法を正しく理解するうえで重要なポイントです。
ただし、安全性が高いとされる一方で、「完全にリスクがない治療」ではないことも正確に理解する必要があります。
PDF-FD療法は臨床試験では重大な有害事象は報告されていませんが、長期データはまだ十分とは言えなのです【8】【9】。
2)注射治療に共通する副作用・リスク
PRP療法・PDF-FD療法はいずれも、陰茎海綿体への局所注入を伴う治療です。
そのため、注射治療に共通する以下のようなリスクが考えられます。
- 注射部位の痛みや違和感
- 一時的な腫れや内出血
- 軽度の炎症反応
これらの症状は多くの場合一過性で、日常生活に大きな支障をきたすことは少ないとされていますが、無菌操作や適切な手技が行われることが前提となります。
そのため、治療は必ず医療機関で、ED治療や当該手技に精通した医師の管理下で行うことが重要です。
3)長期的な安全性データに関する現状
PRP療法およびPDF-FD療法は、ED治療の分野では比較的新しいアプローチであり、長期的な安全性や持続効果については、まだ十分なデータが蓄積されているとはいえません。
特にPDF-FD療法については、PRP療法の知見を応用した治療ではあるものの、EDに特化した大規模臨床試験や長期追跡データは集積されていません。
このため、現時点では「安全性が確立された標準治療」と断定できません。
こうした背景から、PDF-FD療法やPRP療法は、
- 治療の目的
- 期待できる効果
- 不確実性や限界
を十分に理解した上で、医師と相談しながら慎重に検討すべき治療選択肢と位置づけられます。
PRP療法・PDF-FD療法に共通する課題

1)効果の個人差と即効性の限界
PRP療法およびPDF-FD療法はいずれも、自己血液由来因子の作用を通じて組織環境の改善を目指す治療であり、その効果には個人差が存在します。
EDの原因や重症度、年齢、基礎疾患(糖尿病・動脈硬化など)、生活習慣によって、治療反応は大きく異なります。
また、これらの治療は再生・修復過程を支えることを目的としたアプローチであるため、注入後すぐに勃起機能が回復する即効性治療ではありません。
効果を実感するまでに、数週間から数か月を要する可能性があり、短期間での改善を強く求める場合には、PDE5阻害薬など他の治療法との併用が検討されることもあります。
この点を理解せずに治療を受けると、期待と現実のギャップが生じやすいため、事前の十分な理解が不可欠です。
2)治療費が高額になりやすい点
PRP療法およびPDF-FD療法は、いずれも自由診療として提供されることが一般的で、健康保険の適用対象外となります。
そのため、治療費は全額自己負担となり、経済的な負担が大きくなる可能性があります。
治療を検討する際には、費用だけでなく、期待される効果や代替治療との比較を含めて、費用対効果の観点から慎重に判断することが重要です。
3)研究段階であるという現実
PRP療法は、整形外科や美容医療の分野では一定の臨床経験が蓄積されているものの、ED治療への応用については比較的新しい領域です。
これまでに小規模研究やメタ解析により有効性が示唆されていますが、長期的な効果や最適な治療プロトコルについては、さらなる検証が必要とされています。
PDF-FD療法についても、PRP療法の理論を応用した治療として期待されている一方で、EDに特化した大規模臨床試験や長期追跡データは十分とはいえないのが現状です。
現在も臨床研究が進められており、今後の研究成果によって、その位置づけがより明確になると考えられます。
したがって、PRP療法・PDF-FD療法はいずれも、現時点では「標準治療」と断定できる段階ではなく、研究段階の要素を含む治療選択肢として理解することが重要です。
PDF-FD療法がおすすめな方と慎重に検討すべきケース
1)PDF-FD療法がおすすめな方
PDF-FD療法は、勃起機能低下の背景に血流や組織環境の変化が関与していると考えられるケースで、選択肢の一つとして検討されることがあります。
具体的には、次のようなケースが挙げられます。
- 軽度から中等度のED
- 加齢や生活習慣の影響が疑われる血管性ED
- PDE5阻害薬の効果が以前より低下してきた方
- 薬物療法に依存せず、勃起機能の基盤改善を目指したい方
また、PDF-FD療法は即効性治療ではないため、長期的な視点で治療を考えられる方に向いているといえます。
2)PDF-FD療法が向かない可能性がある方
一方で、PDF-FD療法はすべてのEDに適した治療ではありません。
以下のような場合には、効果が十分に得られない、あるいは他の治療が優先される可能性があります。
- 重度の器質的ED(高度な血管障害や線維化が進行している場合)
- 前立腺全摘術後などで神経損傷が大きいケース
- 即効性を強く求めている方
- 明確な心理的要因が主因と考えられるED
これらの場合、薬物療法やカウンセリング、他の治療法の方が適していることもあり、PDF-FD療法単独での改善は期待しにくいと考えられます。
3)慎重な判断が必要な方・禁忌に近いケース
PDF-FD療法は自己血由来成分を用いる治療ですが、以下のようなケースでは慎重な判断、または治療を控える判断が必要となる場合があります。
- 重篤な血液疾患がある方
- 活動性の感染症がある方
- 悪性腫瘍の治療中、または活動性が疑われる場合
- 注射手技自体にリスクが高いと判断される基礎疾患がある方
また、抗凝固療法を受けている方や出血傾向のある方では、内出血などのリスクを考慮する必要があります。これらは絶対的禁忌と一概に断定できないケースも多いため、必ず医師による詳細な問診・評価が必要です。
治療の流れと受診時のポイント
1)初診・カウンセリングとED評価
PDF-FD療法を検討する際は、まず医師による診察とカウンセリングが行われます。
現在の症状や勃起機能の状態だけでなく、既往歴、服用中の薬剤、生活習慣、心理的要因などを含めて総合的に評価されます。
EDは原因が多岐にわたるため、血管性EDなのか、神経性・心因性が主なのかを見極めることが極めて重要です。カウンセリングや診察によって、PDF-FD療法が適切な選択肢となり得るか、あるいは他の治療を優先すべきかが判断されます。
2)治療前説明と同意

PDF-FD療法は標準治療ではなく、研究段階の要素を含む治療選択肢であるため、治療前には医師の十分な説明と患者さんのメリット・デメリットや料金などの理解が不可欠です。
- 期待される効果と限界
- 効果発現までに時間を要する可能性
- 個人差があること
- 想定されるリスクや副作用
- 費用や通院回数
などについて説明を受け、納得したうえで治療を選択することが重要です。
このプロセスは、治療満足度を高めるうえでも欠かせません。
3)採血・製剤準備から注入までの一般的な流れ

PDF-FD療法では、患者自身の血液をもとに作製された血漿由来因子の凍結乾燥製剤を使用します。一般的な流れとしては、次の通りです。
- 採血
- PDF-FD製剤の準備・作成(採血後約2週間)
- 陰茎海綿体への局所注入
注入は医師または看護師が行い、処置自体は比較的短時間で終了するケースが多いとされています。
処置後は、一定時間の安静や状態確認が行われることがあります。
4)治療後の注意点と経過観察
治療後は、注射部位の違和感や軽度の腫れ、内出血が一時的にみられることがありますが、多くは数日以内に自然に軽快します。
日常生活については、医師の指示に従い、当日の激しい運動やサウナ、飲酒を控えるなどの注意が必要となる場合があります。
PDF-FD療法は即効性治療ではないため、効果判定は一定期間の経過観察を前提とします。
必要に応じて、他の治療法との併用や、治療方針の見直しが行われることもあります。
EDに対するPDF-FD療法に関するよくある質問(FAQ)

Q1.PDF-FD療法はEDに本当に効果がありますか?
PDF-FD療法は、血漿由来因子(Plasma-Derived Factors)の作用を通じて、血流や組織環境の改善を目指す治療です。理論的には、特に血管性EDなどで一定の効果が期待される可能性があります。
ただし、すべての方に同様の効果が得られるわけではなく、EDの原因や重症度によって反応には個人差があります。
現時点では標準治療ではなく、研究段階の要素を含む治療選択肢である点を理解したうえで検討することが重要です。
なお、EDに対してPRP療法では改善を示す臨床試験がある一方、必ずしも効果があるとは言えない研究も存在します【8】【10】。
Q2.どのくらいで効果を実感できますか?
PDF-FD療法は即効性を目的とした治療ではありません。
治療後すぐに勃起機能が改善するというよりも、数週間から数か月かけて変化を感じる可能性がある治療とされています。
効果の実感時期や程度には個人差があり、一定期間の経過観察を行いながら評価されるのが一般的です。
Q3.効果はどのくらい持続しますか?
効果の持続期間については、個人差が大きく、現時点で明確な期間を断定することはできません。数か月以上の変化を感じる方がいる一方で、十分な効果を実感できないケースもあります。
長期的な持続効果については、今後の研究による検証が必要とされています。
Q4.PDF-FD療法はEDに対して何回くらい治療が必要ですか?
PDF-FD療法の治療回数は、EDの原因や重症度、年齢、生活習慣などによって異なりますが、一般的には2回〜数回(4回~5回)を目安として提案されるケースがあります。
PDF-FD療法は即効性を目的とした治療ではなく、血漿由来因子の作用を通じて血流や組織環境の改善を時間をかけて促す治療であるため、1回で十分な変化を感じる方もいれば、複数回の治療を経て徐々に変化を実感する方もいます。
そのため、明確に「何回必要」と一律に決められる治療ではありません。治療回数については、初回治療後の反応や経過を評価しながら、医師と相談のうえで決定されるのが一般的です。
Q5.痛みやダウンタイムはありますか?
治療は陰茎海綿体への局所注射を伴うため、注射時に軽度の痛みや違和感を感じることがあります。
また、治療後に一時的な腫れや内出血がみられることもありますが、多くは数日以内に自然に軽快します。
日常生活に大きな制限が生じるケースは少ないとされていますが、治療当日は激しい運動や飲酒を控えるよう指示されることがあります。
Q6.PDE5阻害薬(バイアグラなど)と併用できますか?
医師の判断のもとで、PDE5阻害薬と併用されるケースもあります。
PDF-FD療法は勃起機能の基盤改善を目指す治療であり、即効性のある薬物療法を補完する目的で用いられることがあります。
併用の可否やタイミングについては、必ず医師に相談してください。
Q7.PDF-FD療法の料金相場はどのくらいですか?
PDF-FD療法は自由診療であり、医療機関や治療内容によって異なりますが、1回あたりおおよそ7万円〜10万円程度が一般的な相場とされています。
費用には、下記などが含まれることが多く、複数回治療が提案される場合もあります。
- 診察・カウンセリング
- 採血・製剤準備
- 注入処置
- アフターフォロー
治療前に、総額費用や回数、追加費用の有無を必ず確認することが重要です。
Q8.PRP療法の料金相場はどのくらいですか?
PRP療法も自由診療であり、医療機関や治療内容によって費用は異なりますが、EDを目的としたPRP療法の場合、国内では1回あたりおおよそ5万円〜10万円前後で設定されているケースが多く見られます。
PRP療法では、次のプロセスが必要となり、使用するキットや手技、診察・フォロー体制の違いによって価格に差が生じます。
- 採血
- 遠心分離によるPRP作製
- 当日の注入処置
Q9.PDF-FD療法と幹細胞培養液(幹細胞培養上清液)の注射との違いは?
大きな違いは、由来(原料)・中身の性質・品質管理の考え方・エビデンスの状況です。
PDF-FD療法は、患者自身の血液から得られる血漿由来因子(Plasma-Derived Factors)を凍結乾燥した製剤を用いる治療です。
自己血由来であるため、一般にアレルギーや免疫学的拒絶のリスクは低いと考えられ、成分の設計思想は「血液由来の因子を安定化して局所に届ける」点にあります。
一方、幹細胞培養液(幹細胞培養上清液)は、自己由来ではなお幹細胞を培養した際の上澄みに含まれる、成長因子・サイトカイン・(製品や工程によっては)エクソソーム等を含む混合物を用いるアプローチです。
つまり、規格化された同一製剤による治療です。含有成分の種類が多い反面、製造工程・原材料・不純物リスク・規格化の程度が製品ごとに異なりやすいので、良い製品を選ぶことが大切です。
Q11.PDF-FD療法はレノーヴァなどの低出力体外衝撃波治療と併用できますか?
医師の判断のもとで併用されるケースはあります。
PDF-FD療法とレノーヴァ(低出力体外衝撃波治療)は、作用の考え方が異なるため、理論上は補完的な関係にあります。
レノーヴァは、低出力の衝撃波によって陰茎海綿体の血管内皮機能や血流環境の改善を促すことを目的とした治療です。一方、PDF-FD療法は、血漿由来因子(成長因子など)を局所に届け、組織環境の修復や維持を支えることを目的とする治療です。
そのため、レノーヴァで血管刺激・血流改善を図りPDF-FD療法で組織修復を支える
といった併用アプローチが検討されることがあります。
ただし、併用による効果や最適な順序・回数については、確立した標準プロトコルが存在するわけではありません。EDの原因や重症度、既存治療の反応などを踏まえ、医師が総合的に判断する必要があります。
まとめ|ED治療におけるPDF-FD療法の位置づけ
1)ED治療は「原因に応じた選択」が重要
EDは、血管性・神経性・心因性など複数の要因が関与する疾患であり、一つの治療法ですべてを解決できるものではありません。
PDE5阻害薬は即効性があり有効な治療ですが、根本的な改善を目的とした治療ではないという限界があります。
そのため、ED治療では「なぜ勃起機能が低下しているのか」という原因を評価し、薬物療法、生活習慣の改善、必要に応じて新たな治療選択肢を組み合わせて考えることが重要です。
2)PDF-FD療法は再生医療ではないが、新しい補完的選択肢
PDF-FD療法は、「Plasma-Derived Factors – Freeze-Dried(血漿由来因子の凍結乾燥)」を用いた治療であり、再生医療等安全性確保法上の再生医療には該当しません。
細胞を移植・再生する治療ではなく、成長因子や血漿由来因子の働きを利用した治療的アプローチです。
血管性EDなどにおいて、血流環境や組織環境への間接的な働きかけが期待される一方で、即効性や万能性を持つ治療ではなく、効果には個人差があることを理解する必要があります。
PRP療法の研究知見を背景にした発展的な選択肢ではありますが、現時点では研究段階の要素を含む治療であることも重要なポイントです。
3)納得した上で治療を選ぶことが最も重要
PDF-FD療法は、ED治療の「代替」ではなく、既存治療を補完する選択肢の一つとして位置づけるのが現実的です。
向いている方もいれば、他の治療が適しているケースもあり、適応の見極めが極めて重要となります。
そのため、治療を検討する際には、
- 期待できる効果と限界
- 費用や治療期間
- 他の治療法との違い
について十分な説明を受け、自身が納得したうえで選択することが大切です。
PDF-FD療法は、血漿由来因子を活用した新しい低侵襲な治療アプローチとして注目されています。
ただし、EDに対する長期的な有効性については今後の研究が期待されており、現時点では従来治療と併せて慎重に検討することが重要です。
<参照論文>
本記事は、下記の公開されている医学論文および臨床研究をもとに作成しています。
PMID: 11035380|DOI: 10.1038/sj.ijir.3900567
日本語要旨:EDの有病率や加齢との関係、心血管疾患との関連を概説した疫学研究。EDが全身の血管障害と深く関係することを示し、PRPやPDF-FDなど新たな治療の必要性を裏付ける基盤文献。
PMID: 17275456|DOI: 10.1016/j.amjmed.2006.06.010
日本語要旨:米国成人男性におけるEDの有病率は約18%と報告され、年齢、糖尿病、高血圧などが主要リスク因子であることを示した。ED治療の需要拡大と低侵襲治療への関心を説明する際に有用。
PMID: 29667180|DOI: 10.1111/bph.14205
日本語要旨:PDE5阻害薬の作用機序(NO-cGMP経路)と臨床応用を整理した総説。ED治療の第一選択である薬物療法の有効性と限界を示し、再生的アプローチとの比較の基盤となる。
PMID: 24049429|DOI: —
日本語要旨:PDE5阻害薬の適応、効果、安全性を包括的に解説。十分な効果が得られない患者も存在することから、PRPやPDF-FDなど新しい治療選択肢の検討が必要となる背景を示している。
PMID: 30926542|DOI: 10.1016/j.sxmr.2019.02.006
日本語要旨:EDに対するPRPや細胞治療の研究動向をまとめたレビュー。再生関連治療は有望視される一方、標準化や長期データの不足が課題とされ、PDF-FD療法の位置づけ理解にも役立つ。
PMID: 32962283|DOI: 10.3390/ijms21186904
日本語要旨:PRPを凍結乾燥することで成長因子の安定化と品質の標準化が期待されると報告。血漿由来因子を凍結乾燥したPDF-FD療法の科学的背景を説明する際の重要文献。
PMID: 37380754|DOI: 10.1007/s00167-023-07414-y
日本語要旨:凍結乾燥した血小板由来因子製剤の臨床使用で安全性と症状改善を報告。EDを対象とした研究ではないが、PDF-FDのような因子製剤の安全性を補強する参考文献。
PMID: 33906807|DOI: 10.1016/j.jsxm.2021.03.008
日本語要旨:軽度〜中等度ED患者を対象とした二重盲検RCTで、PRP注射により勃起機能の改善が示唆された。有害事象は少なく、再生関連治療の可能性を示す重要な臨床研究。
PMID: 38590115|DOI: 10.1093/sxmrev/qeae018
日本語要旨:PRPのRCTを統合解析し、EDに対する有効性と安全性は概ね支持されるが、研究間のばらつきが大きく標準化が課題と結論。PDF-FDなど新規治療の評価にも示唆を与える。
PMID: 37120727|DOI: 10.1097/JU.0000000000003481
日本語要旨:PRPとプラセボを比較したRCTで、安全性は確認されたが有効性には明確な差が認められなかった。治療効果の個人差とさらなる研究の必要性を示している。
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